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雲の謎に迫る 注目の雲研究者・荒木健太郎さん

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防災減災
茨城ニュースいば6
茨城
2017年4月20日

短時間で立ちこめる、雲。局地的な大雨や竜巻、そして大雪などさまざまな災害を引き起こします。しかし、その特性や発達する過程などには、いまだ多くの謎が残されています。その解明に挑み、いま注目を集めているのが、雲研究者の荒木健太郎さん。荒木さんとともに、雲研究の最新事情に迫ります。

■SNSを使った「関東雪結晶プロジェクト」が話題に

左から、向笠康二郎 気象キャスター、森花子アナウンサー、荒木健太郎さん

(森花子アナウンサー)
スタジオには、いま注目の雲研究者・荒木健太郎さんにお越しいただきました。
荒木さんは、気象庁気象研究所の研究官ということですが、ふだんどういうことをされているのでしょうか?

(荒木健太郎さん)
特に災害をもたらすような雲の仕組みを調べるということをやっていまして、雲の観測や数値シミュレーションなどを通して、雲の研究を進めています。

(森アナウンサー)
荒木さんがこの冬におこなった取り組みが、テレビや雑誌などで話題になったんですよね。

その名前が「#関東雪結晶」です。雲ではなく、雪なんですね。

(荒木さん)
関東で降る雪のことを調べているんですけれども、雲から降ってくる現象である雪のことを調べるためのプロジェクトです。

(森アナウンサー)
冒頭に「#」がついているということは…

(荒木さん)
こちらはハッシュタグです。「#関東雪結晶」というハッシュタグを使って、TwitterなどのSNSを通して、関東甲信にお住まいのみなさんから、雪が降ったときに雪の結晶の画像を集めるということをおこなったプロジェクトです。

(森アナウンサー)
このプロジェクトは、関東地方の大雪の実態を解明するためにおこなわれたそうなんですが、関東地方の雪の原因は分かっているのですか?

(荒木さん)
関東で雪が降るときは、多くは「南岸低気圧」と呼ばれる本州の南海上を通過する低気圧にともなって雪が降るということが知られていますが、雪を降らせる雲については、まだ多くの謎が残されているのが現状です。

(向笠康二郎 気象キャスター)
雪の予報は難しいんですよね。私も天気予報で「南岸低気圧」という言葉はよく使うのですが、なかなか当たらないというか、なかなか予想通りにいかないというのが、関東の雪なんですよね。

(森アナウンサー)
そうした謎の多い関東地方の南岸低気圧などによる雪に迫ろうと、荒木さんがこの関東雪結晶プロジェクトを立ち上げました。

■市民の協力で集まった「雪結晶のビッグデータ」

茨城県つくば市の気象研究所。
4月19日、荒木さんは関東雪結晶の取り組みについて発表しました。

関東で雪が降るたびに、一般市民から雪の結晶を撮影して投稿するよう呼びかけてきました。集まった画像は1万枚を超えました。

荒木さん
「雪を降らせる雲がどういう“ヤツ”なのか分かってない。雪の結晶の観測結果を使って、天気予報の現状技術を検証、改良していく」

これまで、研究者個人が1地点で集めていた雪の結晶。
今回、広い範囲で撮影された画像が集まったことで、雪雲の研究が進んだと荒木さんはいいます。

荒木さん
「今回、市民のみなさんの協力で非常に多くの雪の結晶のデータが集まった。私はこのデータを『雪結晶のビッグデータ』と呼んでいます」

■南岸低気圧による大雪、興味深い事実が判明

特に荒木さんが注目したのは、2016年11月に関東地方に降った季節外れの大雪の日です。

この大雪は南岸低気圧の影響によるものでした。

この日に撮影された雪結晶の画像は5200枚。
そこから興味深い事実が分かりました。

撮影:Makiko Mochida

この日の朝に撮影された結晶には、樹枝状のものが数多く見られました。
上空の気温がマイナス10度から20度の間で成長するもので、これまで南岸低気圧ではほとんど観測されませんでした。南岸低気圧では、もっと寒いマイナス20度以下の雲で結晶が成長するとみられていた中、新たな事実が示されたのです。

荒木さん
「これまで考えられてきた雲の特性とは異なるような雲だったということができると思います」

観測事例が少なく、実態が分かっていない南岸低気圧。
荒木さんは、雪結晶の調査を続けることが、将来関東地方の大雪の予報精度を高めることにつながると考えています。

荒木さん
「南岸低気圧といってもいろいろな種類があって、成長の段階によっても雲の状況が変わってくると思いますけども、それが初めて観測された。首都圏の雪を理解していく上で、重要な一歩になったと考えています」

■市民参加型の「シチズンサイエンス」の取り組み

(向笠 気象キャスター)
南岸低気圧による雪といっても、いろんなパターンがあるということが分かったのでしょうか?

(荒木さん)
2016年11月24日に関東で降った雪のあとにも、何回か南岸低気圧による雪があったのですけれども、いま解析を進めているところで、また新しいことが分かりつつあるという状況です。
雪というのは「天から送られた手紙である」といわれることがあるのですが、雪の結晶の形を読み解いて雲の実態を調べることを進めて観測事例を蓄積していくことで、最終的に関東の雪の予報精度を向上するということにつなげていきたいです。

(森アナウンサー)
今回のようにSNSで市民に呼びかけて画像を提供してもらう取り組みは、いままでもおこなわれてきたのでしょうか?

(荒木さん)
日本ではこういったことはおこなわれていません。このような市民参加型の取り組みは、市民科学、「シチズンサイエンス」と呼ばれています。

■視聴者のみなさんからいただいた雲の写真を解説

(森アナウンサー)
いまお話にありました「シチズンサイエンス」を視聴者のみなさんにも体験してもらおうということで、今回は事前に雲の写真をお寄せいただきました。その中から荒木さんに3枚の写真を選んでいただきました。

まず1枚目の写真は、日立市の“小梅”さんからいただいたこちらの写真です。

『2013年に撮影したものです。その日はひどい台風だったので、夕方になりようやく去って行ったと思ったら、こんなすてきな情景を残していってくれた。まるで油絵のようだった』

この写真からどのようなことが分かるのでしょうか?

(荒木さん)
この2013年9月の台風のときの空なんですが、私もつくば市で同じ雲を見ていました。赤く染まっている雲や、明るく染まっている雲は、朝や夕方に雲が上空に広がっていて、太陽があるところに雲がないような状態で、このようにきれいに空が焼けることがあるんですね。

(向笠 気象キャスター)
雲の底に太陽が当たっているということですか?

(荒木さん)
その通りです。

(森アナウンサー)
続いては、桜川市の“茨城のおじちゃん”さんからいただいた写真です。

『去年(2016年)の9月に撮影した、かさ雲です』

(荒木さん)
この笠雲は、山に沿った形でできていることが分かると思いますが、大気下層、地上付近が非常に湿っている状況で、山を越える流れがこのような雲をつくっているんです。
ですからこういうときには、天気が変化する可能性があると考えて、向笠さんの天気予報をぜひチェックしてもらえるといいかなと思います。

(向笠 気象キャスター)
雲ができやすい状態になっているということですね。

(森アナウンサー)
最後は、高萩市の“とも”さんからいただいた写真です。

『去年(2016年)の9月、会社帰りに高萩海岸から西の空に向けて撮りました』

こちらは入道雲ですね。

(荒木さん)
いわゆる積乱雲と呼ばれる雲です。これを見ると、雲の上空の方が横に広がっているのが分かると思います。これは積乱雲が非常に発達していて、限界まで発達していることをあらわしています。行き場をなくした雲が、これ以上上に行けなくなって、横に広がっているんですね。
こういうときにはリアルタイムのレーダーで、雨雲の位置をチェックして、自分がいる場所に来ているかどうかを見て、天気の変化に注意していただければと思います。

(向笠 気象キャスター)
きれいな写真ですけれども、危険を知らせてくれる雲ということですね。

(荒木さん)
この雲の下は大雨になっているということです。

■局地的な大雨など災害を引き起こす積乱雲の解明

(森アナウンサー)
いまお話にも有りましたが、局地的な大雨など災害の大きな原因になっている積乱雲、この解明が荒木さんのいま取り組んでいるもうひとつの大きなテーマです。
積乱雲は夏だけかと感じていたのですが、実はもう発生しているんですね。

(荒木さん)
年間を通して冬でも積乱雲は発生するのですが、やはり大雨をもたらす積乱雲という意味では、これからの時期は特に気をつけていきたいと思います。

(森アナウンサー)
そうした積乱雲に迫る荒木さんの最新の研究を取材しました。

■積乱雲の謎解明は屋上にある最新鋭の測定機器で

積乱雲の謎の解明は、気象研究所の屋上で行われていました。
設置されていたのは、最新鋭のある測定機器です。

地上マイクロ波放射計。その目的は、地上から1キロ以内の水蒸気の変化を把握することです。

荒木さん
「どの高さにどのぐらいの水蒸気があって、どのぐらいの気温なのかっていう分布が分かるようになります」

積乱雲の元となる水蒸気の状況を知ることが、大きなカギだといいます。

■夏の積乱雲のデータを解析すると新たな事実が

実はこれまでの技術では、地上近くの水蒸気の分布を調べるのが困難でした。

短時間で急速に発達する積乱雲。

レーダーでは雨雲は把握できますが、それより前の水蒸気の状態を捉えることはできません。

荒木さんは、最新鋭の測定機器を使って地上近くの水蒸気がどのように積乱雲に発達するのか、調べてきました。

すると、夏の積乱雲のデータから、新たな事実が分かってきました。

観測事例を平均すると、降水量のピークを迎えたのは午後5時台。
その2~3時間前から地上近くの水蒸気量が増加し、大気の状態が不安定になっていました。水蒸気の分布と積乱雲の発達を結びつける重要な手がかりとなったのです。

荒木さん
「いままでどこの高さで水蒸気が増えるのかを実際に観測した例が非常に少なく、よく分かっていなかったんです。非常に大きな一歩になったと考えています」

局地的な大雨や竜巻をもたらす積乱雲。
今後さらに研究を進めれば、いち早い予測につなげられると荒木さんは考えています。

荒木さん
「来るのが分かればゲリラ(豪雨)ではないので、実際にそういったゲリラ的に発生する大雨で被害に遭う方も少なくなるのではないかと考えています」

■将来的にはいち早く高精度な防災情報の提供を

(森アナウンサー)
ゲリラ的に発生する雲をいち早く私たちに知らせてくれる、そういう研究がいままさに進んでいるということですね。
荒木さんに、積乱雲とはどういうものかというのを説明していただくために、イラストを描いていただきました。

(荒木さん)
こちらが積乱雲の様子を示しているイラストです。
この赤い色で描いたおばけのようなものが、水蒸気です。水蒸気が雲の元になっているんですね。
雲がだんだん成長していくと、中に上昇流ができて雲の粒が成長して、雨になって落ちてくると下降流ができます。

(森アナウンサー)
今回はどのようなことが分かったのでしょうか?

(荒木さん)
水蒸気がどのぐらいの高さにどのぐらいの量いるのか、それがなかなか分かっていなかったんですね。
いままでは1日2回、朝と夜の9時に、つくば市で上空の大気の状態を調べるための観測をしているのですが、1日2回なので観測頻度が少ないと。先ほどの機械を使って観測をすると、数十秒から数分間隔で、水蒸気がどこにどれぐらいの量いるのかが分かるようになり、実態解明を進めています。
まずは実態解明をして、将来的にいち早く高精度な防災情報を提供できるように、こうした研究を続けています。

(森アナウンサー)
向笠さんのような気象予報士の方々は、こういう研究をどのように見ていらっしゃいましたか?

(向笠 気象キャスター)
こういった研究結果を使わせていただいて、お伝えしているので、本当にありがとうございますというか、もっと発展していってほしいなと思っていますね。

■雲といい距離感で付き合っていくことが重要

(森アナウンサー)
荒木さん、最後に視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。

(荒木さん)
雲というのは、ほとんど毎日空を見上げるといるような身近な存在なんですね。ただ、ときに災害をもたらすような雲もあります。
そういう意味で、雲とうまく付き合っていくということが重要だと思います。
そのためには雲のことを知って、その上でいい距離感で付き合っていく。危なそうな雲を見たら、レーダーをチェックして、こちらに向かっていないかどうか確かめるなど、雲と一緒にうまくやっていくいろいろな方法があります。
ですから、ぜひ雲と仲良くなって、すてきな“雲ライフ”を送ってほしいなと思います。

(森アナウンサー)
これまでは空がきれいなときしか見上げていなかったのですが、これからは「この雲は何なんだろう」と考えながら見るようにしたいなと思いました。
今回は、雲研究者の荒木健太郎さんをお迎えして、雲研究の最新事情をお伝えしました。

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