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学ぶ意味感じる5冊 梶よう子ほか 中江有里のブックレビュー

  • 2022年9月5日

今回のテーマは「学ぶ」。
大人になって社会に出てから学ぶこともあるし、子どもから学ぶこともあります。
学ぶことで身近な人や物事に対する理解が深まったり、新たな世界に飛び出していける。そんな5冊を紹介します。

【番組で紹介した本】

『ルポ 誰が国語力を殺すのか』
著者:石井光太
出版社:文藝春秋

Yuri’s Point
近年教育業界を中心に議論が沸き起こっている「読解力の低下」。情報があふれる現代で、常にその取捨選択に迫られている子どもたちは、物事にじっくりと取り組むことができずに、その結果読解力の低下を招いているのでは、と著者は推測する。本書は国語の総合的な力「考える力」「感じる力」「想像する力」「表す力」が果たす役割とその重要性、ネット、不登校、ゲームなど、子どもたちを取り巻く社会の問題から、国語力再生への道筋など、様々な実例を紹介している。言葉に向き合うことは、社会と人と向き合うことでもある、と感じた一冊。

『いい日だった、と眠れるように 私のための私のごはん』
著者:今井真実
出版社:左右社

Yuri’s Point
料理ができるというのは、魚がさばけたり、上手に揚げ物ができることではなく、自分のお腹や気持ちに合わせて、ごはんの支度ができることでは、と語る著者。
毎日料理をしていると、その繰り返しに飽きたり、息切れすることもある。食べさせる相手のらめではなく、自分で何かを作り、自分で食べて「おいしい」と思える食事を作るためには、自分の気持ちをよく観察することが大事なのだと気づかされる。シンプルなレシピと日常を切り取ったエッセイで構成された、何か作りたくなる一冊。

『わたしの心のレンズ 現場の記憶を紡ぐ』
著者:大石芳野
出版社:集英社インターナショナル

Yuri’s Point
半世紀近く国内外で活動してきた写真家による各地の生活を見てきた思いが詰まった一冊。戦地となったベトナム、カンボジア、アウシュヴィッツ、日本では広島、長崎での被爆体験者からその経験を聞き取り、現在を写真でとらえます。原爆が投下されたのは80年近く前ではあるけれど、その被害に苦しむ人がいる限り、あの戦争は過去ではないのだと思う。コロナ禍で移動することができず、撮ることも叶わなかった写真家は、思案するために立ち止まった。考えて、聞いて、撮った貴重な記録。

『空を駆ける』
著者:梶よう子
出版社:集英社

主人公は名作児童文学「小公子」を日本で初めて翻訳した明治の文学者、若松賤子(しずこ)。戊辰戦争で故郷を追われ、孤独な少女時代を過ごしたが、明治8年に転機が訪れる。アメリカ人宣教師が創立した女学校に入学。女性の自立と子どもの幸福こそが国の未来を照らすと信じ、命を燃やしていく。激動の明治を懸命に生き抜いた女性の物語。

Yuri’s Point
「物語の持つ力」
小公子は、逆境に置かれてもくじけずわが子へ愛を注ぐ母と、それを受けて健やかに成長する子の姿を描いた物語。翻訳者の若松賤子は、親の愛情を受けずに育ち、真逆とも言えるような人生だったが、その分教育に恵まれた。女性が勉強したり職業を持つこともままならない時代の先駆者であり、それを還元しようと女性や子どものための物語を書いた。激しく時代が移り変わる中でもゆらがない、彼女のような人がいたから女性が当たり前に学び、働く今の時代があるように思う。

『音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む ープリチュワからカピチュウ、おっけーぐるぐるまでー』
著者:川原繁人
出版社:朝日出版社

人はどうやって声を出しているの?赤ちゃんはどうやって言葉を身に着けるの?
子育て真っ最中の音声学者が解き明かす、最も身近で不思議な音と言葉の世界。

Yuri’s Point
「子どもは音の解像度が高い」
音声学というと難しく感じるが、私たちにとってはとても身近な音と言葉の話。
大人からみると、変なこと言ってるな、とか間違っているなと思いがちな子どもたちの言葉も、実は法則があり、子どもたちなりの論理がある。むしろ大人よりよっぽど鋭い。普段言葉について理解しているつもりが、実は全く理解していなかったということに気づかされる本。

 

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【案内人】
☆女優・作家・歌手 中江有里さん

1973年大阪生まれ。1989年芸能界デビュー。
数多くのTVドラマ、映画に出演。02年「納豆ウドン」で第23回「NHK大阪ラジオドラマ脚本懸賞」で最高賞受賞。NHK-BS『週刊ブックレビュー』で長年司会を務めた。NHK朝の連続テレビ小説『走らんか!』ヒロイン、映画『学校』、『風の歌が聴きたい』などに出演。
近著に『万葉と沙羅』(文藝春秋)、『残りものには、過去がある』(新潮文庫)、『水の月』(潮出版社)など。
文化庁文化審議会委員。2019年より歌手活動再開。

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