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まちの新たな特産品 漁獲量急増の〇〇

海の変化 地域で乗り越える 千葉・いすみ
  • 2024年01月09日

8月から千葉局に仲間入りしました、柏市出身の田村有葵子です。小さな頃は家族でよく海釣りに行き、ハゼやあなごと遊んでいました。
久しぶりの海にワクワクしていたところ、近年千葉県では見慣れない魚の漁獲量が急増しているという情報が。特にいすみ市では、その魚を地域の特産にしようという動きがあるというのです。
海と地域の変化を探ろうと、いすみ市を訪ねました。(千葉放送局・田村有葵子)

 

外房でとれる新たな海の幸!

太平洋に面したいすみ市、大原漁港。
昔からはえなわ漁が盛んで、イセエビは全国屈指の漁獲量を誇ります。

いすみ市 大原漁港

沖合に日本最大級の岩礁があり、水揚げされる魚種が豊富なことでも知られます。

漁港にはたくさんの種類の魚が

はえなわ漁でとる新たな海の幸というのが…こちら!

 

初めまして!

"トラフグ"です!
千葉県の最新の漁獲高は10年前の3倍以上。特に大原漁港は県内一の水揚げを誇ります。
その質は高く評価され、下関へも出荷されています。

 

トラフグがなぜ外房の近海で?

取材の日も大漁でした
田村キャスター

これまでは主に西日本で水揚げされていたというトラフグ。なぜ外房の近海で漁獲量が増えているのでしょうか?
千葉県の漁業資源について研究する千葉県水産総合研究センターの尾崎さんに伺います。


尾崎真澄
室長

千葉県の沿岸の水温が高い状態が続いていて、トラフグが生息しやすい状況が続いているのかなというふうに考えています。また、県が平成27年から取り組んでいるトラフグの稚魚の放流や海流の変化が影響している可能性があります。

田村キャスター

そうなのですね。今後も安定した水揚げが予想されますか?

尾崎真澄
室長

天然魚のとれ具合は、海の中のトラフグの量と水温や海流などの状況により変化していくので予想は難しいです。千葉県沿岸は黒潮と親潮の両方の影響を受ける地域だと考えています。この中で、これまでもいろいろな魚がとれたりとれなくなったりする歴史を繰り返してきました。千葉県の業者は「今いる魚をどれだけ長く利用できるか」を考えていくべきだし、それを我々研究センターでも支えていきたいと思っています。

 

海の変化 地域で乗り越える

このトラフグで町おこしができないかと動く人たちがいます。
市の職員、山口高幸(やまぐち・たかゆき)さんはかねてから、食材に恵まれたいすみ市を「美食の街」にしようと取り組んでいます。トラフグはその切り札となるのではないかと考え、6年前、フグ処理師の講習会を市内に誘致しました。

令和元年8月 いすみ市 「フグ処理師」受験準備講習会
いすみ
市役所
水産商工観光課
山口高幸さん

私の父も祖父も漁師、漁業を営んでいます。
そのお手伝いをさせていただく中で、今までいなかった魚が見えてきたり、いたはずの魚が減ってきてしまったり温暖化はなんとなく感じていましたが、ここ大原でトラフグがとれ始めたときは、それは驚きました。地域で持続可能な”強い漁業”をつくっていくために、漁師、仲買い、それを出す店、消費者、それぞれを魚を通してつなぐっていうのが自分の役目なんじゃないかなと思っています。まずは、産地であるこのいすみ市で消費者まで届けるため、フグ処理師の講習会を開けないかとフグ連盟の方に相談し、市内で年に1回開催することができるようになりました。

市の鮮魚・活魚・卸問屋で働く岩瀬将矢(いわせ・まさや)さんは、いすみ市で開かれた講習会を受け、去年(2023年)フグ処理師の免許を取得。トラフグの新商品も開発しました。

フグ処理の練習をする岩瀬さん
フグ処理師の資格を取得した
岩瀬将矢さん

海の変化は怖いことですけど、先を見て新しいことをどんどんやっていかないと。自分も資格をとってトラフグを推していこうという形になっています。漁師さん、とってくれる人がいて、いすみ市をよくしようと頑張ってくれている、背中を押してくれる人がいて。みんな地域で支えあっているのだと思います。

岩瀬さんが作ったフグ皿 ふるさと納税返礼品を目指す

市内でフグが食べられるお店は、この6年で3倍に増加したといいます。
岩瀬さんの”フグの師匠”、いすみ内で旅館を営む加藤宗一郎さんにトラフグのお鍋を作っていただきました!

プリプリうま味がジュワ~!トラフグのお鍋

昆布だしでいただくトラフグのお鍋。フグの身をポン酢にちょっとつけて口に運びます。味は濃厚なのですが自然に柔らかく広がり、後からほわ~と、何とも言えない甘みを感じ、味わい深いです。

房総の豊かな海の、確かな潜在力を感じました。

岩瀬さんの”フグ師匠”
加藤宗一郎さん

これから産地としてどんどん広まっていってほしいですし、まだ他にもいすみ市にはおいしい食材があるので、トラフグをきっかけにたくさんの人に来ていただいて、おいしい料理と自然の魅力を感じていただければと思います。地元の人にもまだ行き届いてないと思うのですけど、これから先やっぱり自慢の食材の1つとなる、間違いなくなる、そういう食材だと思います。

「ひるまえほっと」での放送内容は2/9(金)までご覧いただけます。

いすみ市 大原漁港にあがったトラフグ

 

取材後記

学生時代の釣り好きな友人から「千葉県でトラフグが釣れる」と聞いたときはとても驚きました。今回取材で実際にいすみ市の皆さんにお話をお伺いし印象的だったのは、切磋琢磨し地域をより良くしていこうと前向きに取り組む姿です。海の変化はトラフグだけではなく、様々な魚種に表れています。不安を感じながらも、地域を思いそれぞれの立場で出来ることを尽くし協力されている皆さんの姿に今回お伝えすることができて本当に良かったと感じました。
食材と人に恵まれたいすみ市。最後にご紹介した加藤さんは、「トラフグをきっかけに」してほしいと話していたのも印象的でした。放送ではご紹介できなかったのですがこんな珍しいフグ料理もご提供いただきました!

フグラーメン!

トラフグはやはり高級魚。ですが、ショウサイフグやサバフグなど、比較的リーズナブルな価格のフグもおいしいことを知ってほしい。このいすみ市にはおいしい食材がたくさんあることを、トラフグをきっかけに多くの人に知ってほしいと出してくださいました。
透き通ったスープは見た目と相反し濃厚。ですがさっぱりといただけて、「だしがおいしい」フグにぴったりの逸品でした。ごちそうさまでした!(いただくには予約が必要です)

トラフグの旬は1月~2月ごろ。地域は高齢化や漁師の減少など様々な課題も抱える中、フグの旬を迎えます。トラフグが地域活性を後押ししてくれる存在となり、もっと盛り上がっていくといいなと感じました。
お忙しい中ご協力いただいたたくさんの方のおかげでお伝えすることができました。山口さん、岩瀬さん、加藤さんをはじめ、あたたかく迎えてくださったいすみ市の皆さん、本当にありがとうございました!

  • 田村有葵子

    千葉局 キャスター

    田村有葵子

    柏市出身
    いつかアナゴとフグを釣ってみたいです!

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