先月、千葉県市川市の教会で初のヒップホップライブが開催されました。この教会の牧師、下道恵(したみち・けい)さん。牧師&ラッパーの二刀流で活動しています。自称“落ちこぼれ牧師”? ラップは相棒?その想いを聞きました。(千葉放送局・木下愛季子)
私も取材でライブに参加しましたが…教会でラップ! 新鮮な光景でした。
「教会をライブハウスに変えたい」それが私の夢だったんです!
下道さんが牧師を志したのは30歳。尊敬する牧師の父の影響でした。しかし、牧師になるために入学した神学校では、校則を破り先生と口論になるなど問題ばかりで…学校を2年で退学に。牧師になったあとも、先輩牧師との人間関係のトラブルで孤立してしまいます。
一生懸命にやってもみんなと同じことができない。親はつらかったと思う。それを考えるともっとつらいですね。「僕は落ちこぼれ牧師だな…」と自信をなくしていた時期もありました。
そんな下道さんにとってラップはどんな存在だったのですか?
相棒みたいな存在です!「つらい」とか「悔しい」とか、そういうフラストレーションを歌詞にすると、気持ちが前を向くんです。そうやって苦しい時期を乗り越えてきました。ラップに救われてきましたね。
下道さんのラップに力をもらったひとも。おととしから教会に通う架(かける)さんです。他人に相談しにくい悩みを抱えていたとき、下道さんの歌詞に励まされたといいます。
“大丈夫だ“という歌詞があって。そのとき、ビリビリっときました。「いま悩みがあったとしても、最終的に大丈夫になるから焦らなくていいよ」―そう背中を押された気がして自分はひとりじゃないって思いました。
今、牧師&ラッパーとして伝えたいメッセージはありますか?
頑張ることはもちろん大事です。ただ、頑張りすぎて疲れて傷ついてしまうならそれはしなくてもいい。「ありのまま、そのままのあなたが尊い」そう何度も伝えていきたいです。
下道さんは来年、ヤングケアラーや障害があるラッパーを中心としたライブイベントの開催を検討しています。他人に打ち明けにくい悩みがあるひとにこそ参加してほしいそうです。
*取材後記*
「僕ね。いろいろ苦労があったけど、それで良かったと思ってる」と下道さん。なぜ?と伺うと「その経験があったから、ひとの痛みが分かるようになったんだ」そう笑う姿が印象的でした。
“つらい経験も、いまの自分の糧に” 下道さんに大切なことを教えてもらいました。
これからも多くのひとにエールを届けてください!
下道恵さんのラップを聞きたいかたはこちら(NHK外のサイトにジャンプします)