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千葉 大網白里 どうする“稲わら” 大雨で街じゅうに流れ込み… 処分は?

  • 2023年10月06日

9月8日、記録的な大雨に見舞われた千葉県。この大雨による被害のひとつが、町じゅうに流れ出た大量の“稲わら”です。取材を進めると、実は同じような事例は過去にも全国各地で起きていることがわかりました。そして、被災した現場では想像以上のやっかいものになってしまっていました。地域で何が起きているのか、被害の大きかった大網白里市で取材しました。

(千葉放送局記者・浅井優奈)

押し寄せた大量の“稲わら”

9月8日の記録的な大雨で、千葉県の大網白里市では、市内を流れる小中川や金谷川の水位が上がり、住宅などで浸水被害が相次ぎました。このとき、田んぼから流れ出て街じゅうに押し寄せたのが、大量の“稲わら”です。

道路脇の柵に引っかかった稲わら

大網白里市は田んぼが広がるまちです。今回、ちょうど稲刈りが終わった時期に大雨が来てしまったため、被害が拡大しました。特に被害の大きかったJR大網駅付近では、住宅の敷地内にも水とともに大量の稲わらが流れ込んだといいます。

稲わらは住宅にも大量に押し寄せた(住民撮影)

大雨から2日後、水が引いた市内では、多くの住民たちが稲わらの片付けに追われていました。

駐車場にたまった稲わらを片付ける住民(大網白里市内)

“排水”を妨げた?

押し寄せた稲わらによる影響は、片付け以外にもありました。“排水”の問題です。JR大網駅の周辺で、床上浸水の被害を受けた男性が地区の排水設備を案内してくれました。

設備には、大量の稲わらがたまっていました。

稲わらをかき分けてようやく排水溝が見えた

この地区では、内水氾濫によって1メートル以上の浸水被害があり、大雨翌日の9日になっても水が引かない状況が続きました。地区では、雨のときにしっかり排水されるよう、住民が定期的に排水溝などの掃除をしているということですが、男性は「このように外から稲わらが流れてきてしまうとどうしようもない」と話していました。

市の担当者によると、実際に詰まったのか、もしくは集まってきただけなのか、稲わらが排水設備に与えた具体的な影響は分からないものの、排水を妨げる要因のひとつになった可能性があるといいます。

畑の大豆は実らず 残ったのは稲わら

住宅街のほかに被害が深刻なのが、農地です。大網白里市の瑞穂地区にある営農組合の大豆畑も雨で冠水し、流れてきた大量の稲わらが一面に堆積しました。

稲わらで埋め尽くされた瑞穂地区の大豆畑(大雨の直後に農家が撮影)

被災からまもなく1か月となる10月5日。農家6人が集まり、冠水に伴って流れ込んだ大量の稲わらの片付け作業を行っていました。たまってしまった稲わらは、放置しておくと作物に悪い影響を与えるおそれがあるといいます。農家の人たちは稲わらをかき集め、トラックに積んで運び出していました。

 

瑞穂営農組合によりますと、この地区ではおよそ11ヘクタールの畑が冠水し、育てていた大豆が全滅して実がつかない状態になってしまったといいます。今期の収穫は見込めないということで、予定していた農作業も中止し、稲わらの除去作業を優先して行っています。

冠水の被害で実が膨らまなくなった大豆
農家 片岡一男さん

稲わらの量がとにかく多くて大変です。大豆もみんなで一生懸命育ててきたのでがっかりしています。来年のためでもあるし、誰かがやらないといけないので、まずはこの稲わらを処分するのが第一目標です。

実は4年前も被害が...対策は?

この稲わらによる被害は、4年前の10月に千葉県を襲った大雨でも起きていたといいます。また、全国各地の農村地域で同じような被害が繰り返されていました。

これだけの影響があるなかで、対策はないのでしょうか?

県の担当者は「稲刈り後、稲わらは早めに田んぼにすき込むよう呼びかけている」としています。今回も呼びかけていたということですが、稲刈りを終えてからすき込むまでの間に大雨が降ってしまいました。

稲わらの処理をめぐっては、かつては「野焼き」、つまり燃やして処分する方法が一般的に行われてきました。しかし近年は、周囲の人や交通、環境などへの影響から野焼きはしないよう注意喚起されています。そのため、農家のすき込み作業が先か、雨が降るのが先かにかかってしまっているというのです。

県の担当者

稲刈りが終わったら即座にすき込むことくらいしか対策がないのが実情です。ただ、農家の人たちも他に優先すべき作業がたくさんあるので、この時期に雨が降ってしまうとどうしようもないです。

トラック20台分以上に

大網白里市では、災害ゴミとして稲わらを回収しました。市によりますとその量は、これまでに処分したものだけでも、10トン分を運べるトラック20台分以上にも上るということです。
 

大網白里市の稲わら仮置き場(写真提供 大網白里市)

9月27日、千葉県の熊谷知事は、松村防災担当大臣に「緊急要望」を行いました。この中には、「稲わらの処理への支援について」という項目が含まれています。県内各地で膨大な稲わらが散乱・堆積し、生活環境や営農再開への影響が生じているとして、撤去や運搬、処理について支援を求めています。これに対し大臣は、「要望はしっかりと持ち帰り、関係機関で連携しながら支援に取り組んでいく」と述べました。

要望書を手渡した熊谷知事(左)と松村防災担当大臣(右)

大雨からまもなく1か月が経ちますが、稲わらの片付け作業はいまだに終わりが見えない状況が続いています。

取材後記

大雨のあと、最初に大網白里市を取材で訪れた際に、住民たちの困りごとでよく聞かれたのがこの稲わらでした。実際に堆積している稲わらは湿っていて重く、虫もたくさん引き寄せます。処分するにも乾かす必要があり、その大変さを感じました。対策についてはなかなか答えが見つからない状況が続いているなかで、再び大雨が降ったときなど今後の被害を最小限にするためにも、取材を続けていきたいと思います。

  • 浅井優奈

    NHK千葉放送局 記者

    浅井優奈

    2018年入局。函館・札幌での勤務を経て、ことし夏から千葉局へ。 遊軍担当として地域の話題を取材しています。

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