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通学路、安全ですか? できることからソフト対策 千葉・市原

  • 2023年03月29日

「道幅が狭い上、スピードを出す車がいて、事故が起きないか心配です」。千葉県の視聴者からNHKに寄せられたご意見です。どんな現場なのか取材しました。

(千葉放送局記者 渡辺佑捺)

通学路のここが危ない

投稿を寄せて頂いたのは市原市に住む会社員の土門甲造さんです。自宅近くの通学路が危ないと考えています。

土門甲造さん(52)

その通学路は住宅街を通る幅5メートルほどの直線道路です。ガードレールはなく、車道と歩道を分ける白線が引かれているだけです。わずか60メートルの区間ですが、スピードを出す車が多いといいます。

土門さんが危ないと指摘する通学路
ガードレールはない

原因は道路構造にも

原因は道路の構造にもあるといいます。通学路の先には信号のある交差点があり、幹線道路につながっています。ドライバーの中には、この交差点で信号待ちをするのを避けるため、青信号のうちに通り抜けようと、アクセルを踏み込むケースが目立つというのです。

通学路に入ると信号が見える

また、途中にある十字路からは車がよく出てきます。中には、一時停止が守られていないこともあるといいます。

お子さんが通学してる時間ではないんですけれども、ここの交差点で過去にも事故がありました。通学の時間にも、接触が起きなければいいなというのをいつも心配しています。

“危険”把握も 白線塗り直しのみ

この通学路は、八街市の事故を受けた一斉点検でも、対策が必要な区間として報告されています。

市原市の対策は・・・

しかし、その後講じられたのは消えかかっていた白線を塗り直しただけで、ガードレールの設置などは道路の幅が狭いことなどから見送られています。 

市原市教育総務課 石川教男課長

ガードレールがあれば安全は高まるのですが、全ての道路で実現できるわけではありません。道幅が狭いなど構造上、設置できない場所もあり、ハード対策には限界があります。

“安全は集合体” できることを!

抜本的な解決が難しい中、土門さんが地域の人たちと取り組んでいるのが見守り活動です。できることから始めようと、毎朝出勤前に通学路に立っています。

子どもたちを見守るだけでなく、ドライバーにも協力を求めています。スピードを抑えてもらおうと、車を先導するように誘導しています。

土門さんはこの取り組みを8年前から続けているといいます。最初は小学生だった自分の子どもを見守るために始めたのがきっかけでしたが、いまは、地域の子どもたちのために続けているといいます。

見守りは地域で

この学校では土門さんの他にも、およそ30人が見守り活動に参加しています。通学路にある20か所を手分けして、毎朝、登校を見守っています。
岩島孝さん(81)もその1人です。14年前から活動を続けています。

岩島孝さん

岩島さんは、毎朝通学路に立つだけでなく、そのほかの区間でも危険がないか、通学路全域を歩いて回り、点検するなどしています。気付いたことは小学校に伝え、仲間のボランティアの見守り活動に役立ててもらっているといいます。

岩島さんがまとめた報告書
内容は学校と共有している
岩島さん

学校の職員だけでは分からない「ヒヤリハット」の発見を心がけています。わたしたちが気づいて、子どもたちが事故にあわないように活動していきたいです。

市原市立五所小学校 清水孝成校長

学校も地域のひとたちのこうした見守り活動に感謝しているといいます。

【清水校長】
雨でも雪の日でも毎日欠かさず、子どもたちの命を守っていただいているので、「ありがとう」という簡単な言葉でおさまりきれない感謝の気持ちでいっぱいです。現場はガードレールのない細い道で、車の量が多いところも結構ありますので、大人が真剣になってくれてありがたいです。

土門さんは、通学路の安全はハード対策だけでなくソフト対策も大切だと感じています。
その上で、ドライバーにも安全運転を心がけて欲しいと訴えています。

信号機やガードレールを整備することも当然、大切なんですが、小さなことでもいいのでひとりひとりができることをやる。その集合体が安全を高めることになると思っています。ドライバーもその集合体の一員です。ハンドルを握る時は、ぜひ思いやりのある運転を心がけて欲しいです。

取材後記

今回訪ねた通学路は学校に通う過半数以上の児童が利用しています。実際に歩いてみると車との距離が近くてひやっとする場面がありましたが、土門さんたちのように地域の見守りがあることで安全性が高まり、通学できていることを感じました。これまでさまざまな現場を取材してきましたが、道路の構造、予算などが壁となりハード対策が十分に講じられないという声も聞かれました。こうした穴を埋めてくれるのは地元の方々のみまもりやドライバーの安全運転といったソフト対策だと思います。子どもたちが安心して通学出来る安全な通学路をみんなの手で作り上げられる社会にしていきたいと感じました。

○NHKでは通学路に関する情報提供を受け付けています。詳しくはこちらをクリックして下さい。
特設サイト「その通学路、安全ですか?」

 

  • 渡辺佑捺

    千葉放送局

    渡辺佑捺

    2021年入局。普段は警察・司法を担当。通学路の安全対策について継続して取材を続けている。

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