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幕張豊砂駅の駅名を市民ら“取り付け” 込められた思いは

  • 2022年12月26日

千葉市の幕張新都心地区で建設が進む、JR京葉線の新駅「幕張豊砂駅」。来年3月18日の開業も公表され、工事もいよいよ最終盤を迎えています。こうしたなか、駅舎に掲げられる「駅名」の文字を、利用者や市民の手で取り付けてもらおうというイベントが行われました。参加費用は1人3万円でしたが、23組の枠があっという間に完売となる人気ぶりでした。皆さん、どんな思いで参加したのでしょうか。

(千葉放送局記者 大岡靖幸)

25年ぶりの新駅「幕張豊砂」

JR東日本千葉支社として25年ぶりの新駅となる、JR京葉線の「幕張豊砂駅」(ちなみに、25年前は武蔵野線・東松戸駅)。大型ショッピングモールの目の前に立地する利便性に加え、下り線ホームは地上、上り線ホームは2階にあるという、鉄道ファンの心をくすぐる不思議な構造も相まって、開業前から注目が集まっています。ダイヤ改正にあわせて来年3月18日の始発からの開業も決まり、いよいよ工事も最終盤を迎えています。

人気!「駅名取り付け」体験

この新駅誕生を盛り上げようと今月17日、「駅名アルファベット取付体験」というイベントが行われました。キャッチフレーズは「みんなで幕張豊砂駅をつくろう!」。駅名を英語で表記した「Makuharitoyosuna Station」の計23文字を、鉄道の利用者や市民らの手で取り付けてもらおうというものです。参加費用は1人3万円、もしくはふるさと納税で10万円の寄付というものでしたが、すぐに売り切れ、人気の高さがうかがえました。

当日、集まったのは23組の計34人。鉄道ファンの大人ばかりかと思っていましたが、親子連れも多く見られました。

いよいよ文字の取り付けです。看板にはあらかじめ漢字の「幕張豊砂駅」の駅名が取り付けられていて、アルファベットの文字は、その下に取り付けます。

文字はステンレス製で、大きさは6センチから9センチ。裏側からボルトが突き出していて、これを取り付け位置の穴に差し込み、裏側からナットで固定します。

取り付けの最後に、看板の裏側に参加者の氏名を書き込んで終了です。駅舎に設置後は見えなくなりますが、駅の看板がある限り名前も残り続けることになります。参加者たちは決められた順番通りに文字を取り付け、1時間あまりで完成しました。

参加者の思いは…

皆さん、どんな思いでこのイベントに参加したのでしょうか。

愛知県在住の会社員男性
「千葉市出身で以前、幕張豊砂駅の近くに住んでいて、駅が更地の頃から見てきました。地元出身として、鉄道ファンとして絶対に参加しなければと」。

千葉市在住の女子高校3年生
「京葉線沿線に住んでいて、普段から使っています。自分が乗る線路の新駅なんてもうないと思ったので、参加しました」。

孫と来ていた浦安市在住の70代男性
「孫が鉄道好きなので、特別な体験をさせてあげたくて」。

夫婦で来ていた埼玉県在住の男性
「鉄道が好きで、なかなか出来る体験ではないのでぜひ参加したいと思って」。


「私は鉄道ファンではないけど、いい記念になりました」。

住んでいる場所にかかわらず、「めったに体験できない、貴重な機会に惹かれた」といった理由が大きかったようです。

どんな鉄道ファンなのかについても聞いてみました。多かったのは、鉄道に乗ることが好きないわゆる「乗り鉄」と、模型が好きな「模型鉄」の人たち。列車の撮影が好きな「撮り鉄」の人もいました。鉄道会社の制服が好きな「制服鉄」という女性もいて、幅広い鉄道ファンが集まっていました。一方で、特に鉄道ファンではないが、近くに住んでいて記念になるから、という人も少数ながらいました。

開業後、どんな駅になってほしいか、期待の声も聞きました。

「活気があり、人と人が交わるコミュニケーションの起点になってほしい」
「安全で使いやすい駅になってもらいたい」
「幕張新都心の窓口として発展してほしい」

特徴あふれる駅舎も見学

この日は参加者限定で新駅の見学会も行われました。ことし9月の時点ではまだ「工事現場」という感じでしたが、この日は主要な工事もほぼ終わっていて、最後の仕上げの段階となっていました。太陽光を取り入れる印象的な半透明の天幕(膜屋根)や、県産の木材を効果的に使ったモダンな内装など、駅の特徴がよく分かり、参加者は盛んに写真や動画を撮影していました。

最後に、完成した駅名の看板を駅舎に取り付けて完成です。

看板を背景に参加者全員で記念写真。皆さん、いい笑顔でした。

このイベントの企画を担当したJR東日本千葉支社・京葉ベイサイドラインプロジェクト事務局の吉田康平さんは、「新駅の開業を盛り上げるイベントとして開催しました。一生の思い出に残るイベントになったと思うので、また開業した後に来てもらって、ここに取り付けしたことを何度も思い出してもらえたら」と話していました。

取材後記

「参加費用がちょっと高いのでは」というのが最初の印象でしたが、取材した参加者はみな「3万円なら高くない」と言っていました。確かに、こうしたイベントは、2020年3月開業の「高輪ゲートウェイ駅」でも行われておらず極めて珍しいうえ、開業前の新駅の見学や、取り付けたものと同じ文字の試作品をお土産としてもらえることなど、特典も充実しています。
何より、参加者が「あの駅名の文字を取り付けたのは私」と、一生“自慢”できるなら決して高くはなかったんだなと、今は思います。モノを買うのではなく、体験などの「コト」消費がさまざまな分野で進んでいますが、その象徴のようなイベントだったと思いました。

  • 大岡靖幸

    千葉放送局 記者

    大岡靖幸

    遊軍や千葉市政、経済などを担当。京葉線で通勤していることもあり、幕張豊砂駅に注目しています。駅の開業後は幕張新都心の西側の利便性が飛躍的に高まります。新都心が今後、どう発展していくかも楽しみです。

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