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揚げ油で「航空の脱炭素」海外のSAF戦略は? 千葉・成田

ラッカ星人が探る!気候変動のいま④
  • 2022年11月17日

脱炭素を進めるために必要不可欠なのが、廃食油などからつくられるジェット燃料のSAFで、でもSAFは全然量が足りないってことはわかったんだナ。きのうは日本国内では国産SAFを製造するための動きも始まっているってことだったけど、海外の動きももっと教えてよ、佐々木記者!

SAFの“ガリバー”を直撃!

佐々木記者

きのう話したように、いまSAFを商用に生産しているのは、海外の数社だけ。なかでも世界最大手なのが、フィンランドの「ネステ」という会社だよ。世界で生産されているSAFのおよそ半分を生産していると言われているんだ。フィンランドにある製造プラントで、年間10万トンのSAFを製造していて、日本の航空会社も、ネステのSAFを使っているんだよ。

シンガポールにあるネステの燃料製造プラント入口
ラッカ星人

“SAFのガリバー”って感じなんだナ。でもいまの生産量では、航空業界全体の需要はまかなえないわけラッカ?

佐々木記者

そうだね、ネステはこの大きなSAF需要に応じようと、いまシンガポールで新たな世界最大のSAF製造プラントを建設中なんだ。来年初めにも稼働予定で、その能力は、いまのフィンランドのプラントの10倍。年間100万トンのSAFを製造できるんだって。実際にシンガポールに行って見てきたよ。

シンガポールのプラント(画像提供:Neste)
佐々木記者

敷地内には、廃食油などのSAFの原料をためておくタンクや、不純物を取り除く施設などがあって、大きなクレーンで建設の真っ最中だったよ。ネステは、ここだけでなく、オランダにも別のSAF製造プラントをつくる計画で、いま急ピッチで生産体制を拡大させているんだ。

ラッカ星人

すごいナ。原料の“争奪戦”が起きているけど、大丈夫ラッカ?

佐々木記者

もちろん、プラントばかりできても、いまのように廃食油などからしかSAFを作ることができないままだと、到底足りない。廃食油以外にも、生ゴミ木材からもSAFを製造できないか研究も進んでいるんだけど、SAFの総量を増やすために、今後さらなる技術革新が求められているんだよ。

海外の航空会社は

ラッカ星人

海外の航空会社はもう、SAFをたくさん使ってるいるのかナ?

佐々木記者

行ってきたシンガポールでは、シンガポール航空がことし7月から、燃料の一部にSAFを導入しているよ。シンガポールのチャンギ空港で、実際にSAFの入ったジェット燃料の給油の場面も見せてもらったんだけど、もしかしたら、日本の居酒屋で出た廃食油が原料の一部になっているSAFなのかもしれないなって思ったよ。

チャンギ空港で航空機にSAFが給油される様子
佐々木記者

このほか、アメリカのユナイテッド航空は、2016年から世界で初めてSAFの使用を始めていて、拠点としているロサンゼルス空港を出発する全ての便にSAFを導入しているよ。

ルフトハンザドイツ航空の予約サイト 黄色の部分がグリーン運賃
佐々木記者

また、ドイツのルフトハンザドイツ航空も既にSAFの導入を始めているよ。SAFは、従来のジェット燃料と比べて2~10倍のコストがかかることも課題になっているんだけど、ルフトハンザは、ことし8月から、航空券の購入者がフライトを予約する際、「グリーン運賃」を選択できるようにして、費用の一部を旅客に負担してしてもらおうという試みもやっているんだよ。SAFを既に導入している航空会社が、なかなか航空券の値上げに踏み切れない中、野心的な取り組みで、ルフトハンザの担当者は「SAFの導入を可視化して、利用者にも環境問題について考えてもらうのが大切」と、利用者の理解を求めていたよ。

海外ではSAF義務化も!

ラッカ星人

海外の航空会社は、日本よりも取り組みが進んでいるところもあるんだナ?

佐々木記者

「Flight Shame(=飛び恥)」という汚名の返上だけでなく、制度としてSAFを使用せざるを得ない、航空会社にとって切実な背景もあるんだよ。

✅SAFの取り組みが進んでいるヨーロッパでは、EU域内の空港で給油されるジェット燃料を、2030年までに6%2040年には37%2050年には85%まで引き上げる法案が可決されているんだ。これは、いわゆる“最低ライン”で、フランスではすでにSAF導入が義務化されているよ。
✅アメリカも、2030年にはSAFの割合を10%2050年には100%とする目標を掲げていて、SAF製造事業者への税制優遇措置も打ち出しているんだよ。

国をあげて、SAF導入を促しているんだね。

ラッカ星人

こうして海外編も聞いていると、もう世界は「空の脱炭素」に向けて動きだしているんだと思ったラッカ。

佐々木記者

僕は、今回の取材を通じて、「空の脱炭素」って遠い話に聞こえるけど、結構身近なことなんだと思ったよ。航空券を買おうとネットで調べると、どの便だとどのくらいの二酸化炭素の排出量があるのか、表示されるようになっているところもあるんだよ。
大切なのは、目的地まで行くのに、どんな方法やエネルギーを使って、それにいくら払うのか、ひとりひとりがちゃんと考えて、選んでいくことなんじゃないかと思うよ。

ラッカ星人

ありがとうナッツ!
あしたは、再び岡本記者に、千葉の動物園で進む脱炭素の動きについて聞くんだナ。お楽しみに!!

  • 佐々木風人

    千葉放送局成田支局 記者

    佐々木風人

    新聞社を経て、2018年入局。水際対策が緩和されて、いま航空機が戻りつつある成田空港。航空関係者がそろえて口にする次の課題は「SAFの導入」です。 

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