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「高い」北総線、値下げしました。

  • 2022年10月03日

「日本一高い」と言われ、他社と比べてもその高額な運賃がたびたび指摘されてきた北総鉄道の北総線。今月、1979年の開業以来初めてとなる、自主的な値下げを行いました。あれもこれも値上げのご時世で、値下げって何故?

(東葛支局記者 間瀬有麻奈)

日本一高い!?北総線の運賃

千葉県印西市の印旛日本医大駅から東京・葛飾区にある京成高砂駅の間のおよそ32キロで営業している北総鉄道の北総線。「千葉ニュータウン」がある印西市、白井市、船橋市のほか人口の多い松戸市など、千葉県内6つの市に駅があります。1日の平均輸送人員は新型コロナ前の2019年には10万6900人あまりにのぼっていて、通勤や通学の利用者が多くなっています。
一方、その運賃はというと……。

初乗り普通運賃…210円(きっぷの場合)
1駅間の運賃…最大310円(同)
通学定期…最大8万3330円(印旛日本医大~京成高砂など 6か月)
通勤定期…最大19万3220円(同)

JRや大手私鉄と比べても、同じ距離で2倍から3倍、高くなっていました。
「日本一高い」とか、「財布落としても定期はなくすな」などと、その運賃の高さが利用者や沿線自治体からも指摘され、値下げを求める声があがっていました。

なぜこんなに高い?

北総線は1979年に開業し、順次区間を延ばしていましたが、建設費用がかかったことや、開業後「千葉ニュータウン」の開発が当初の計画どおり進まなかったことなどから利用者が伸び悩み、1999年には447億円という多額の累積損失を抱えました。

その後、沿線では印西市を中心に企業誘致や大規模商業施設の出店が進み、若い世代が移り住むなどして人口が増えます。2010年には、成田空港につながる成田スカイアクセス線も開業。こうした中で利用者が増加し、累積損失は昨年度には14億円まで減少、今年度中には解消する見込みとなり、値下げに踏み切ったのです。

北総鉄道によると、沿線自治体の補助による値下げを除き、会社が自主的に運賃を下げるのは1979年の開業以来初めてだということです。

通学定期「64.7%オフ」!

値下げ率は全体で15.4%。きっぷの場合、初乗り運賃は20円値下げして190円となり、区間内では最大で100円の値下げ。通勤定期も平均で13.8%の値下げとなりました。

そして今回、最も大きく値下げされたのが、通学定期です。平均で64.7%もの大幅な値下げです。例えば、利用者の多い印西市の印西牧の原駅と東京・葛飾区の京成高砂駅の間では、6か月間の通学定期が、これまでより5万4000円安い2万6950円となりました。この値下げで、同じ距離のJRや他の大手私鉄と比べ、同じか、より低い水準となりました。

子育て世帯への配慮のほか、若い世代の入居促進につながるようにと、家計への負担の大きい通学定期の運賃を大幅に下げたということです。

ついに値下げ、その瞬間

10月1日の未明、営業を終えた新鎌ヶ谷駅。値下げのために駅員らが作業を進めます。

午前1時ごろ、改札前にある運賃表が、新しいものに替えられました。駅員らが値下げ前の運賃表を音をたてながらめくっていくと、値下げ後の運賃表が現れました。

入社して28年になる助役の男性も、「自分も子どもの頃から高いと思っていて、お客さんの気持ちも分かっているつもりでした。安くなるのは初めてのことなので、感無量といいますか、そういう思いがありますね」と話していました。

この日は、北総線のすべての駅で運賃表の張り替え作業が行われ、券売機を新しい値段にしてシステムを切り替え、始発までの時間、夜通しで作業が行われました。

沿線の学校は「期待大」

今回の値下げに大きな期待を寄せているのが、沿線の学校です。

松戸市にある私立学校の「光英VERITAS中学校・高等学校」は、北総線の秋山駅と北国分駅からそれぞれ徒歩およそ10分の場所に立地しています。中学・高校合わせて640人あまりいる生徒のおよそ6割が北総線を利用していて、千葉県内だけでなく都内から通う生徒もいます。

今回の値下げについて、生徒たちからも喜びの声が聞かれました。

高校2年生の
女子生徒

「1駅だけの利用でも高いと感じていました。定期代が1万から2万円ほど安くなるのでとてもありがたいです」

高校2年生の
男子生徒

「通いやすくなるので、すごくいいと思います。交通費が浮くのは魅力的です」

学校は昭和58年の開校以来、女子校でしたが、去年から男女共学化するなどして改革を進め、生徒の獲得に取り組んできました。そうしたなかでの北総線の値下げは、さらなる“追い風”になると考えています。学校の説明会では欠かさず通学定期の値下げをアピールし、若い世代の人口が多い沿線の印西市や白井市などを重点地域として生徒募集の活動を強化しているということです。

川並芳純 校長

「学校説明会でアンケートを取ると、リクエストとして『北総線が高いのでなんとかなりませんか』とコメントする方が必ずいましたが、一切そういうコメントがなくなりました。今回の値下げは沿線ですごい勢いで知れ渡っていて、沿線の地域が注目されているんじゃないかなと思います。学区がない私立学校にとってアクセスの向上は何よりもありがたいです。値下げのメリットを生かして生徒の募集に取り組んでいきたい」

知事も「まちづくりに取り組む」

千葉県の熊谷知事も、北総線の値下げを歓迎しています。

熊谷知事

「これだけ物価が高騰していく中で、値下げは沿線にとって非常に明るいニュースだと思っています。北総鉄道をはじめ、経営改善に努力されてきた、もしくは地域として支えてきた多くの方々の努力の積み重ねの結果だと思っています。これからも企業誘致やまちづくりを沿線の市と一緒になって取り組んで、実現していきたい」

取材後記

今回の北総線の値下げは多くの人が待ちわびていたものでした。値下げの当日、駅では朝から定期の購入や払い戻しをしようと多くの人が列を作る様子が見られました。値下げによって利用者が増えるのか、地域の活性化につながっていくのか、北総線と沿線の今後について取材を続けたいと思います。

  • 間瀬有麻奈

    千葉放送局 記者

    間瀬有麻奈

    現在に至るまで鉄道での通学・通勤は未経験。取材を通して鉄道の魅力を感じました。

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