ページの本文へ

  1. 首都圏ナビ
  2. ちばWEB特集
  3. 京葉線・幕張豊砂駅“不思議な構造”の謎に迫る

京葉線・幕張豊砂駅“不思議な構造”の謎に迫る

  • 2022年09月21日

JR京葉線の新駅「幕張豊砂駅」の工事が進んでいます。開業予定は来年春。千葉市美浜区の大型商業施設のすぐ前にあり、完成すれば利便性が大幅に高まると期待を集めています。この駅の工事中の様子が先日、報道関係者に公開されました。そこで目にしたのは、上下線のホームが同じ高さになく、段違いに配置されるという不思議な構造。その謎をひもとくと、京葉線の“幻の姿”に行き当たるのです。

(千葉放送局記者 大岡靖幸)

幕張豊砂駅って?

「幕張豊砂駅」は来年春に開業するJR京葉線の新駅です。西隣の「新習志野駅」と、東隣の「海浜幕張駅」からの距離はそれぞれ1.7キロ。2つの駅のちょうど中間地点にあたります。駅の目の前にあるのは千葉市・幕張新都心地区の大型商業施設「イオンモール幕張新都心」。この商業施設は最寄りの海浜幕張駅からは少し距離があり、利用者の多くは車やバスなどを使っていますが、新駅が開業すれば利便性は格段に向上すると期待されています。

駅名は公募で決定

「幕張豊砂」という駅名は去年、公募で選ばれました。応募総数1万4715件で、社内で検討した結果、13番目に多かったこの駅名が選ばれました。「幕張」という地名に、駅の南側の地域名「豊砂」を加えることで、利用客へのわかりやすさや地域への愛着を意識したということです。

特徴①白く輝く大屋根

画像提供:JR東日本

この幕張豊砂駅の工事の様子がこのほど報道関係者に公開されました。外見でまず目を引くのは、白く輝く駅舎の大きな屋根です。実際の工事現場はたくさんの足場で囲われていて、地上から屋根の全景を見ることはできませんでしたが、完成予想図では駅の改札の上部が山の形に盛り上がった姿がよく分かります。
屋根はガラス繊維を樹脂でコーティングした布状の膜を骨格に張り付けたもので、太陽光を通すことができます。「膜屋根」と呼ばれ、吹き抜けを通して太陽光を取り込むことでコンコース内が明るく開放的な空間になるということです。

特徴②上下線で段差がある構造

幕張豊砂駅下り線ホーム

駅のもうひとつの特徴は、上下線が同じ高さではなく、段違いに配置されていることです。
東京から千葉・蘇我駅方面に向かう「下り線」は地上部分を走っており、ホームも同じ地上部分に設置されています。
駅のコンコースからは短い階段を7段上がるだけで下り線ホームに入ることが出来ます。

幕張豊砂駅上り線ホーム

一方、千葉・蘇我駅方面から東京駅に向かう「上り線」は高架上を通っているため、ホームも駅の2階部分にあります。コンコースからは長めの階段やエスカレーター、エレベーターを使ってホームに上がることになります。

幕張豊砂駅の断面図(画像提供:JR東日本)


このように上下線が同じ高さではなく、段違いに配置されているのは、JR東日本管内では埼玉県久喜市にある宇都宮線「東鷲宮駅」がありますが、極めて珍しいということです。

下り線だけが地上に降りる謎

幕張豊砂駅付近の下り線

幕張豊砂駅が不思議な構造となった直接の原因は、駅につながる線路の状況にあります。JR京葉線の新習志野駅と海浜幕張駅の間の下り線は、新習志野駅を過ぎると次第に下り始め、やがて地上に降りていきます。そして幕張豊砂駅を通り過ぎると今度は上がり始め、海浜幕張駅の手前で上り線と同じ高さに戻ります。

幕張豊砂駅手前の上り線

一方、上り線はこの間、ずっと高架のままで地上に降りることはありません。
幕張豊砂駅の構造は、この駅につながる線路の状況をそのまま生かしたものなのです。

なぜ線路に高低差ができた?

ではなぜ、幕張豊砂駅につながる線路はそんな構造になったのでしょうか。
そのカギは「貨物」にあります。京葉線はもともと、貨物用路線として計画され、昭和50年に一部区間で開業しました。東京湾沿岸に立地する工場や会社の貨物需要を見込んでのことでした。そして、この貨物線を通る貨車の入れ替えなどを行う操車場=貨物ヤードが、幕張豊砂駅の南北の土地に計画されていました。京葉線の線路からこの貨物ヤードに貨物列車を分岐して引き込む際、スムーズに交差できるよう、上り線と下り線の高さを変えて作られたということです。
しかし、貨物需要の減少で、京葉線は昭和61年、旅客線化されました。貨物ヤードは工事が始まることもなく幻に終わります。周辺の土地はいま、北側が旅客線用の車両基地になり、南側には大型商業施設が建ち、ヤードへの引き込みのために作られた上下線の段差だけがそのまま残りました。
幕張豊砂駅の不思議な構造は、京葉線がかつて貨物路線だったことを今に伝えているのです。

幕張豊砂駅の今後は?

来年春の開業に向けて期待が高まる幕張豊砂駅。JR東日本によりますと、ことしいっぱいは内装や外装、それに電気関係の工事が行われ、年明け以降は駅の従業員や関係者の訓練などが行われる予定だということです。
また、開業の1年後、再来年の春には駅の前にJR東日本系列のホテルもオープンする予定となっています。駅に隣接する大型商業施設の南側には広い駐車場や空き地もあり、駅の開業をきっかけにますますの発展が期待されていますが、開業した新駅を訪れたら、その不思議な構造を確かめ、京葉線の“幻の姿”に思いをはせてみるのも楽しいかもしれません。

取材後記

「工事は9割完成」とのうたい文句に誘われて取材に行きましたが、見た目にはまだまだ工事現場といった状況で、新しい駅の誕生という華やかさは見られませんでした。しかし、だからこそ「不思議な構造」がむき出しになっていて、興味を持ちました。利便性の高さに注目が集まる「幕張豊砂駅」ですが、京葉線の歴史に触れることができるという面からも面白い駅だと感じました。

  • 大岡靖幸

     千葉放送局 記者

    大岡靖幸

    1998年入局。学生時代は東京から青春18きっぷを使って郷里の兵庫県に帰省していました。定番の大垣行き夜行列車のほか、朝から普通列車を乗り継いで帰ったこともありました。 

ページトップに戻る