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日本製鉄 排水口からシアン検出 原因は?影響は? 千葉 君津

  • 2022年08月25日
再発防止策などを求める指示文書を熊谷知事が会社側に手渡し(25日)

千葉県にある日本製鉄の製鉄所での、基準を超える有害物質の検出。千葉県と君津市、木更津市、富津市は25日、会社側に対し、抜本的な対策などを策定して9月末までに報告するよう指示しました。
何が起きていたのか、さらなる影響はないのか、担当の岡本記者が解説します。

(千葉放送局記者 岡本基良)

ラッカ星人

きょう、熊谷知事が製鉄所の所長と面会したんだよね?

岡本記者

そうなんだ。日本製鉄の製鉄所で、基準を超える毒物が検出されていたにもかかわらず、県に報告がなかった問題で、県などが25日、会社側に対し、抜本的な対策の策定と報告を指示したんだ。

「日本製鉄 東日本製鉄所 君津地区」では、過去3年余りの間、排水口から基準を超える毒物のシアンがたびたび検出されていたのに、県に報告していなかったことなどが明らかになっています。
この問題を受けて、千葉県の熊谷知事は25日、君津市と木更津市、富津市の市長とともに製鉄所の谷潤一所長と面会しました。

熊谷知事(手前)

熊谷知事「県民の不安を招き、事業者への信頼が損なわれる事態が続いており、たいへん遺憾だ。企業として果たすべき社会的責任を十分に認識してほしい」

そして、日本製鉄が県や3つの市と結んだ協定で、基準を超えた有害物質を検出した場合に報告を定めた規定に違反したとして、熊谷知事は、再発防止のための抜本的な対策を策定し、来月末までに報告することなどを指示する文書を手渡しました。

谷所長

谷潤一所長「近隣住民や関係者の皆さまに多大なるご迷惑とご心配をおかけしたことを重く受け止めています。徹底して原因究明に努め、再発防止に全力を尽くします」

ラッカ星人

検出された「シアン」ってどんな有害物質なの?

岡本記者

「シアン」は人が摂取すると過呼吸や頭痛、めまいなどをなどを引き起こし、大量になると命に危険がある物質だよ。千葉県の水質基準は「1リットルあたり0.1ミリグラム未満」で、検出できる最少の数値が「1リットルあたり0.1ミリグラム」だから、検出されること自体が基準を超えたことになるんだ。
そして、製鉄所の排水口からは、最大で0.98ミリグラムが検出されていたことが分かったんだ。でも、7月3日以降に製鉄所や県が行った水質検査では、いずれも検出されていないので、現在は改善したと思われるよ。

ラッカ星人

「シアン」はどうして流れ出したの?

岡本記者

会社側によると、最近検出された3か所の排水口のうち、1か所については原因が分かっているよ。製鉄所で処理された水を排水する際に、「シアン」の濃度が薄いとされる上澄みをポンプで汲み取っていたんだけど、ポンプが下の方に落ちてしまって「シアン」の濃度が濃い水が排水されてしまったんだ。でも、ほかの2か所の排水口については、まだ原因を調べているところなんだ。

ラッカ星人

そういえば、現場付近では、6月に川が赤く染まって魚が大量に死んだことがあったよね。これとは関係あるの?

岡本記者

このときの原因物質は別のもののようなんだ。この時は、製鉄所のタンクから漏れた水が川に流れ出たのが原因で、この漏れた水に含まれていた「チオシアン酸アンモニウム」という「シアン」とは別の物質が、水を赤く染めたり、魚のえらに詰まってしまったりしたとみられているよ。ただ、この問題をきっかけに、製鉄所にある17か所の排水口すべてで水質検査をしたところ、3か所の排水口から「シアン」が検出されたということなんだ。

ラッカ星人

もっと前にも「シアン」が検出されていたのに、報告してなかったという話もあるね?

岡本記者

そうなんだ。製鉄所では、法律で義務づけられている水質検査や、自主的に行っていた検査で、今年4月までの3年間余にあわせて39回、「シアン」が検出されていたのに県や市に報告していなかったんだ。中には、いったん検出されたあと、改めて再検査を行って検出されなかった結果だけを記録していたケースもあったんだよ。

ラッカ星人

この時に「シアン」が検出されたのには、また別の原因があったの?

岡本記者

高炉で鉄を作る過程で使う水には「シアン」が含まれていて、本来は内部で循環して外には出ないようになってるんだけど、そこに雨水が入り込んだり、設備のトラブルがあったりして一部が排水されてしまったとみられているよ。製鉄所ではすでに対策を取っているとしているんだ。

ラッカ星人

今後はもう影響は広がらないの?

岡本記者

製鉄所では、排水口の水質検査を続けているほか、過去の水質検査の記録を改めて点検したり、再び基準を超える数値が検出された場合、速やかに県に報告できるように業務のあり方を改善したとしているよ。
工場からの排水に含まれた有害物質が地域に大きな影響を及ぼすことは、公害の歴史の中で繰り返されてきたよね。事業者がデータを隠蔽したり、問題を小さく見せたりしたことが、取り返しのつかない事態を引き起こしてきたんだ。その教訓から得たことは何だったのか、事業者は再認識して、正確なデータを速やかに公表していくことを徹底すべきだと思うよ。

  • 岡本基良

    千葉放送局 記者

    岡本基良

    2009年入局。初任地・北九州で大気汚染や海洋汚染、環境省担当記者として水俣病を取材してきました。最近では公害は大きく減りましたが、当時の教訓を受け継ぐことの大切さを感じています。

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