ページの本文へ

  1. 首都圏ナビ
  2. ちばWEB特集
  3. ウクライナから避難の高校生“将来は戻って祖国の再建を”

ウクライナから避難の高校生“将来は戻って祖国の再建を”

  • 2022年08月01日

ロシアによるウクライナの軍事侵攻が始まってから、7月末で5か月となりました。成田空港には、避難してきたウクライナの人たちが家族や支援者と再会を果たしています。避難者の数は現在、1600人を超えています(7月27日現在 1619人)。 
母と2人で都内に避難してきた高校生を取材しました。

(千葉放送局成田支局 佐々木風人)

日本語をいちから学ぶ高校生

ミラーナ・アズィマさん

日本語の日常会話を学ぶ高校2年生、ミラーナ・アズィマさん(16)です。
ことし5月、外国籍の生徒を多く受け入れている都立高校への入学が特別に認められ、日本語をいちから学んでいます。

ミラーナさん

日本で学べるようになり、周りの人々や、東京都、学校の人たちにとても感謝しています。

ミラーナさんと母のマリナさん

ミラーナさんが日本に避難してきたのはことし4月。母と2人で住んでいた首都・キーウから
友人のつてを頼って逃れてきました。
今は東京都の支援を受けて都営住宅で暮らしています。

避難当初、ミラーナさんは塞ぎ込んでいたといいます。

キーウの学校で(ミラーナさん提供)

キーウの学校に通っていたミラーナさんは成績が優秀だったことから、飛び級で大学への進学が認められ、9月からは生物物理学を専攻する予定でした

数学の授業で(ミラーナさん提供)

しかし、ロシアの侵攻で断念せざるを得なくなりました。

ミラーナさん

放射能を研究する学者になるのが夢だったのに何を目指していいのかわからなくなりました。むなしさを感じました。

さらに追い打ちをかけたのが、激化するロシア軍の攻撃でした。
ホテルの地下に逃げ込み、およそ1か月。次第に口数が少なくなっていったといいます。

ホテルの地下に避難していたときの写真(ミラーナさん提供)
母のマリナさん

元気で頑張り屋だった娘が侵攻以来、顔が青ざめ、食欲もなくなり、気を失うこともありました。人生に絶望したようで、親としてとても心配でした。

後ろめたさと、新たな目標

都立高校で学び始めておよそ2か月。
簡単な日本語は理解できるようになり、得意な数学や物理などは通常のクラスで授業を受けています。クラスメートからは英語でサポートを受けています。

卒業後は日本の大学に進学し研究者を目指したいと考えていますが、祖国を離れたことに後ろめたさを感じているといいます。

ミラーナさん

侵攻のニュースを見るたびに、とても嫌な気持ちになり、悲しくなります。自分たちだけ逃げてきたという申し訳ない気持ちです。

祖国を離れ日本で学びを再開させたミラーナさん。複雑な思いを抱えながらも前に進もうとしています。

ミラーナさん「日本で勉強できることに感謝しいまは一生懸命勉強したい。将来はウクライナに戻って祖国の再建を手伝いたい。それが私の新しい目標です

取材後記

4月の来日以降、ミラーナさんと母親のマリナさんは、住まいや教育の確保など、生活するためのさまざまな環境を、支援者の力を借りながら少しずつ整えてきました。5月には都営住宅への入居が決まり、高校への入学もかなったミラーナさんは「いまは毎日が楽しい。家に帰るともうくたくた」と笑って見せます。
しかし、2人にとって言葉の壁は相当大きいですし、キーウで人気の美容師だったマリナさんは、日本の免許がないために美容師としては働けない状態が続いています。そしてなにより、先行きの見えないロシア軍の侵攻に、ウクライナに残る家族や親戚と会えず心配する日々が続いています。
「もう元の生活が戻ることはない。この日本で大学に進学し、学び続けることが今の私にできること」。父親や親戚をウクライナへに残してきたという複雑な思いを抱えたまま、ミラーナさんは一歩を踏み出そうとしています。
侵攻が始まってから5か月が経ちましたが、ミラーナさん親子にとって解決した話などなく、毎日がひとつひとつの課題を懸命に乗り越えようとしている途中なのだと改めて感じます。

  • 佐々木風人

    千葉放送局成田支局

    佐々木風人

    新聞社を経て、2018年入局。成田空港にはいまもウクライナから避難してきた人が到着しています。ウクライナ侵攻が始まって5か月が経ちましたが、終わったことはなにもないと改めて感じています。

ページトップに戻る