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若者に選挙は身近?千葉県内で投票率アップの取り組み

  • 2022年07月08日
千葉市こども・若者市役所 作成

18歳選挙権が導入された2016年以降、国政選挙の10代、20代の投票率は、毎回、全体の投票率よりも低い結果となっています。千葉県内では、今月10日に投票が行われる参議院選挙に向けて、若い世代の投票率を上げようとさまざまな取り組みが行われています。NHK千葉放送局の記者やカメラマンが取材しました。

(NHK千葉放送局記者 渡辺佑捺/武田智成/福田和郎
/カメラマン 高橋大輔)

選挙に行きたくなるポスターは?

ラッカ星人

最初に取材に行ったのは高橋カメラマン。千葉市の大学に行ったんだよね。ユニークなポスターがたくさんあったね。

高橋カメラマン

みなさんはどのポスターを見たら投票に行こうと思いますか?わたしは・・・

投開票日が近づき、投票を呼びかけるチラシや車などを見聞きする機会も増えてきました。
6月、千葉市にある淑徳大学の学生たちが、若い人たちの投票率アップに向けて、どう投票を呼びかけることが効果的なのかについて、6種類のポスターを作成して調査しました。

学生が作成した投票啓発ポスター案 (画像提供:矢尾板俊平教授)

6種類のデザインの内容は、以下の通りです。
・投票すると商品券がもらえるもの(上段左)
・投票にいかないと罰則があるもの(上段中)
・働く世代が高齢者を支える少子高齢化を表現したもの(上段右)
・投票するとプリペイドカードなどがもらえるもの(下段左)
・投票するとテーマパークの割り引きが受けられるもの(下段中)
・世界各国の20代の投票率を比較したもの(下段右)

このポスターをおよそ260人の学生に見せて選んでもらうと、割り引きやプリペイドカードなど「経済的な動機づけがある内容のポスターを選んだ学生が多い」という結果になりました。

ポスターを作成した学生たち

調査を行った大学生の1人はこう話します。
「選挙は誰に投票していいのか正解がわからないので難しいイメージです。目に見えるインセンティブや罰則は行動につながると思います。はっきりとお金とか物にした方が、みんな選挙に行くようになるのではないかと思いました」

「あまり自分に関係があると思えない」とか「政治に興味がない」と話す若者に、どうアプローチをしていくべきなのでしょうか。

今回の調査を学生と行った淑徳大学の矢尾板俊平教授は、「アンケート結果からは金銭的なインセンティブが強いと率直に思う一方で、若い人たちが投票にいこうとするきっかけを作り出すヒントは『共感』ではないか」と話します。

淑徳大学 矢尾板俊平教授

矢尾板教授「若い人には自分の価値という軸があって、そこから共感するかとか、自分がそれに対してどう関わるかで判断をしているというのがわかりました。選挙の争点全部に関心をもつ必要はありませんが、自分の軸に関わることをしっかりみて、少しでも自分がそれに関与するために投票に行く、ということを考えてもらうといいと思います」

議論の内容を発表する大学生

その後も数人の大学生に話を聞きましたが、「投票をする際には他の人の未来も意識することが大事だと感じます」という言葉が印象に残りました。本人は技能実習生などの外国人労働者問題に関心を寄せていて、矢尾板教授が話したように、自分とは異なる人に共感の範囲を広げていました。

自分のことだけを考えても、なかなかどの候補や政党に投票すべきなのか決めるのは難しい…、そんな時は投票を通じて、自分が気にかかっていることはどんなことかを考え、共感の範囲を少し広げてみるとよいかもしれません。

SNSで若者に投票呼びかけ

ラッカ星人

次は渡辺記者。千葉市の学生たちが取り組んでいるSNSを使った呼びかけを取材したんだよね。

渡辺記者

斬新な発想に私たちも圧倒されました。

こども・若者市役所に参加している学生たち

若い世代に参議院選挙の投票に行ってもらおうと千葉市内の学生たちがSNSを使って投票を呼びかけるプロジェクトを進めています。内容は、投票したあとの自分の姿などを写した写真をSNSに投稿してもらい、その写真でモザイクアートを作ろうというものです。

モザイクアート原画(淑徳大学矢尾板俊平教授提供)

6月25日、千葉市美浜区の神田外語大学に高校生や大学生およそ20人が集まりました。この学生たちは千葉市が企画している「こども・若者市役所」のメンバーです。若者に千葉市の課題の解決策について考えてもらおうと6年前から活動しており、市内の高校生や大学生など、あわせておよそ60人が参加しています。

この日は、プロジェクト名をどうするのかや、モザイクアートのデザイン案、協力してくれた人に送る「39(サンキュー)メッセージ」の内容、ハッシュタグなどをグループに分かれて考えました。付箋にアイデアを書いて意見を出し合ったり、スマホを使って調べたりして、どのように発信をすれば多くの人の目にとまり、協力してもらえるのか考えました。

議論した内容を発表

「みんなで、っていう言葉を入れたいな」。「英語を使ったらいいんじゃない」。話し合いを進めた結果、プロジェクト名は「みんなでつくる千葉~Election Art Project~」に決まりました。投票をすることで千葉の未来を作っていくという意味を込めました。

また、このプロジェクトを発信していく方法も考えます。「知事やチーバくんにSNSで紹介してもらえば、たくさんの人に知ってもらえると思う」。「ハッシュタグには、選挙でよく使われている”#投票へ行こう”を使いたい」。SNSに普段から触れているからこその意見が次々と出ました。

参加する高校生

このプロジェクトを通じて若者が選挙を身近に感じて投票へ行ってもらえたらうれしいです。

プロジェクトは7月12日まで、SNSを通じて若者たちに参加を呼びかけます。参加したアカウントには、学生たちが考えた「39メッセージ」が届きます。

高校生が選挙事務の研修

ラッカ星人

武田記者が取材したのは、千葉市の取り組みだったよね。

武田記者

高校生が選挙事務の手伝いをしているなんて知らへんかったわ。

選挙事務の研修

千葉市は若い人たちに選挙を身近に感じてもらおうと、参議院選挙の投票所の事務を高校生に手伝ってもらう予定で、参加する高校生の事前の研修が行われました。

研修は7月2日に行われ、投票日の当日に事務を手伝う市内の高校1年生から3年生まであわせて60人が参加しました。

投票所を模したスペースが設けられた会議室で、生徒たちは有権者から整理券を受け取ったり、交付機から投票用紙を発券したりしていました。

投票用紙を配る研修

投票用紙は選挙区と比例代表の2枚があり、このうち選挙区の投票用紙を渡すときは「選挙区です。候補者名をお書きください」と声をかけながら手渡す練習などを行っていました。

高校3年の生徒

18歳になってはじめて選挙権を得たので、こうした仕事を知って選挙に興味を持つことができました。投票が簡単にできることがわかれば、投票率も上がると思います。

千葉市選挙管理委員会事務局
中野廣正 次長

選挙の裏側の仕事に携わることで興味をもってもらい、選挙に関心を持ってもらえることを期待したいです。ぜひ投票に行ってもらいたい。

高校で参議院選挙をテーマに授業

ラッカ星人

最後に福田記者が取材したのは船橋市にある高校の授業。みんな選挙について楽しそうに調べていたね。

福田記者

この学校の生徒たちはラッカ星人がツイッターに投稿している投票日までのカウントダウンにも参加してくれたんだよ。

選挙について高校生が調査

県立船橋北高校では、6月中旬から3年生の現代社会で、参議院選挙をテーマにした授業が始まりました。各クラス4つのグループに分かれて、それぞれが「選挙にいくらかかるのか」とか「消費税について各党の政策を比較」、「なぜ議員はおじさん・おばさんが多いのか?」など研究テーマを設定します。そして、2週間かけてインターネットで情報を集めたり、各政党のチラシを見たりして調べた内容をまとめます。

生徒200人へのアンケート結果

7月4日、これまでの学習の成果の発表会が行われました。「若者は投票に行くのか?」について調査したグループは、3年生の200人を対象に「18歳になったら選挙に行くか」について聞き取りでアンケートを行いました。その結果、「投票に行く」と回答した生徒は3割で「若者の意見が必要だと思う」とか「社会経験のために行く」といった意見が多かったということです。一方で「行かない」と答えたのは7割で、「自分の1票では政治は変わらないと思う」とか「政治家についてよく知らない」という意見が多かったということです。

調査結果の発表会

最後にグループは「みなさんがもっと政治について考えなければ、よりよい未来は作れないとわかってほしいと思いました。行かないと答えた人が多かったけど、選挙に行くと政治に興味を持つきっかけになるから、ぜひ投票に行って下さい」と呼びかけました。

生活の中で関わる法律について調査

また、別のクラスでは「身近にある政治は何だろう?」をテーマにしたグループがありました。このグループでは、1日の生活の中でどのような法律が関わってくるのかを調べました。例えば、朝の洗顔には「水道法」、自転車で登校する際には「道路交通法」、学校は「教育基本法」や「学校教育法」、アルバイトは「最低賃金法」などです。このグループでは「ふだん意識していないだけで生活にはたくさんの法律が隠れていることがわかった。法律を作るのは国会議員、国会議員を選ぶのは私たち、だから選挙に行こう!」と結論づけました。

授業を担当する
條冬樹教諭

政治や選挙について素朴な疑問を友達と話し合うことで、同じ世代が何を考えているのかがわかって、いい刺激になると思います。生活の延長線上に政治があることに気づいてもらい、自分たちの問題として少しでも選挙に関心を持ってもらいたいと思います。

参議院選挙は7月10日。これから投票に行くという人はぜひ、千葉放送局の記者たちが候補者を取材した記事なども参考にしてね!

  • 渡辺佑捺

    千葉放送局 記者

    渡辺佑捺

    2021年入局。選挙は、彩り豊かな選挙ポスターの掲示板を見るのが面白い。

  • 武田智成

    千葉放送局 記者

    武田智成

    2018年入局。選挙は、議員を中心に地元の政財界、地域の縮図を知ることができるのが面白い。

  • 福田和郎

    千葉放送局 記者

    福田和郎

    2006年入局。選挙は、さまざまな場面で見られる人の表情が面白い。

  • 高橋大輔

    千葉放送局 カメラマン

    高橋大輔

    2006年入局。選挙は、真面目な会話のきっかけになるのが面白い。

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