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水際緩和も留学生入国できず 来日あきらめる学生も

  • 2022年02月25日

政府は、新型コロナの水際対策を3月から段階的に緩和することを表明しました。しかし、希望しても日本に入国できない留学生の数は、およそ15万人にのぼるとされ、学生たちの入国のメドは立っていません。春の卒業・入学シーズンを前に、日本への留学をあきらめる学生も出始めています。このままでは将来、日本に関心を持つ国際的な人材が少なくなってしまうという指摘が出ています。(千葉放送局成田支局 佐々木風人)

日本語学校の学生激減 ほぼ全員卒業

千葉県成田市にある成田日本語学校です。コロナ禍の2年間、新規の留学生の受け入れはほとんど止まったまま。およそ400人いた学生数は現在、40人にまで激減し、3月には、そのほぼ全員が卒業するといいます。

成田日本語学校 横田雄飛校長
「4月からまた学生が入ってこないとなると、クラスもできない。学生の学費をいただいて運営していますので、学生が入ってこなければ、学校としても運営はできないです」

水際緩和も留学生の入国メド立たず

2月17日、横田校長は、水際対策の緩和を表明する政府の会見を、テレビで見守りました。

成田日本語学校 横田雄飛校長
「とにかく早く入国のメドが立つようになってくれればと思います。順番を待っている子たちがたくさんいますので、そこが課題かなと思います」

3月から、1日あたりの入国の上限は、いまの3500人から5000人に引き上げられます。しかし、およそ15万人いる入国待ちの留学生がそれぞれいつ入国できるか、めどは立っていません。入国を希望する外国人の数は、留学生のほかにも技能実習生などを含めると40万人あまりにのぼります。1日の入国の上限が5000人に増やされても、入国を待っている外国人だけでも、全員入国するまでに単純計算で3か月近くかかります。さらに、入国するのは、外国人のほかに帰国してくる日本人もいるので、実際にはもっと時間がかかることになります。

日本への留学あきらめた学生も

横田校長は、マレーシアから留学を希望している学生に、入国できるまで入学を待ってもらえないか、オンラインで相談しました。

チャイ・ミン・ウェイさん(20)です。医療技術を学びたいと去年から留学する予定でしたが、入国の見通しが立っていません。

横田校長
 

日本に入国できるまで、待ってくれますか?

ミン・ウェイさん

私は先生とみなさんと会いたいですが、実は台湾の大学に申し込みました。いま結果を待っているところです。もう1年間も日本への入国を待っていますが、まだ入国できません。残念で疲れました。

ミン・ウェイさんは、日本への留学を諦めたといいます。

成田日本語学校 横田雄飛校長
「残念です。まだ自分の国にいるのに、あれだけ日本語勉強して準備を続けてくれているわけじゃないですか。なのに受け入れられないというのは、苦しいです」

このままでは日本の存在感 低下も

留学生の受け入れに詳しい留学生教育学会の会長で、大阪大学国際教育交流センターの近藤佐知彦教授は、このままでは将来、日本に関心を持つ国際的な人材が少なくなってしまうのではないかと指摘します。

大阪大学国際教育交流センター 近藤佐知彦教授
「いつ自分が入国できるのかといったスケジュールがはっきりしないと、せっかくの日本ファンを取りこぼしてしまう、取り逃がしてしまうということになるんではないかと思います。日本に来たいと思う学生、若い人が減っていきます。そうすると、日本の将来的な世界の中での存在感が下がっていくことになるんではないかと心配しています」

留学生が長く日本に入国できない状況について、神奈川大学国際日本学部のジェームズ・ウェルカー教授は、次のようにも指摘していました。

神奈川大学国際日本学部 ジェームズ・ウェルカー教授
「漫画やアニメを通して、日本を“cool japan”(=かっこいい日本)だと憧れてきた学生にしてみれば、日本の水際対策の印象が“cruel japan”(=残酷な日本)になってしまったのではないか」

取材後記

日本の水際対策は、G7の中でも最も厳しいと言われていて、オミクロン株の感染が世界的に拡大する中、一定の効果があったという見方があります。一方、市中感染が拡大する中で、もう水際で食い止める段階ではなくなっているという指摘があり、実際、海外ではワクチン接種や陰性証明を条件に外国人が入国できるようにする国や地域が相次いでいます。外国人留学生が日本に入国するめどが立たない状況がこのまま続けば、国際社会での日本の存在感が低下することにつながりかねないという見方もあります。今後の水際対策は、感染状況を見極めつつ、より柔軟な対応が求められると思います。

  • 佐々木風人

    千葉放送局成田支局

    佐々木風人

    新聞社を経て、2018年入局。新型コロナで便数が激減する成田空港ですが、いつか人々がもっと自由に海外と行き来できる日が来ると信じて“日本の空の玄関口”を取材しています。

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