新型コロナウイルスの感染の急拡大で、千葉県内の自宅療養者は、第5波のピーク時の3倍以上にあたる3万6000人にのぼっています。
自宅で過ごす際にどんなことに気をつけるべきか、どんなものをあらかじめ用意しておいたら良かったかなど、私たちは県内に住む▼家庭内感染を防ぐことができた女性、▼家庭内感染を防げなかった女性、▼妊娠後期の女性、の3人の自宅療養経験者に話を聞きました。
こちらの40代の女性は、ことし1月中旬に感染が確認されました。
「最初は何も症状はなくて、ただ熱が上がっていったっていう感じで、それ以外は特に、のども痛いという記憶はなくて、鼻水とかそういう症状も全くありませんでした。ただ熱はバーッて上がってきたので、ちょっと不安になって病院に連絡をしました」
陽性が確認されてから2日後の夜から、のどが痛くて寝つけなくなり、鼻水の症状も出てきたといいます。
女性は、夫と子ども2人の4人暮らしで、当時、女性以外の3人は陰性だったため、部屋をわけて生活することにしました。
しかし、4歳の次男はまだ幼いため、同じ部屋で生活せざるを得なかったといいます。
「下の子がまだ年少さんでもあり、夫は在宅で仕事があったので、私と下の子で過ごすというふうにしないと生活が成り立ちませんでした。私と下の子、それに夫と小学生の上の子で、それぞれ別の部屋で過ごすことにしました」
子どもと一緒に過ごすことになったため、女性は子どもにうつさないように、以下のような対策を取ったそうです。
▼常に不織布のマスクを着用
▼こまめな手洗いを心がける
▼次男に触れる際は使い捨ての手袋をして、その上からさらに消毒
▼トイレや浴室は使うたびにアルコール消毒
必要な買い物は、近くに住む女性の母親に代行してもらったり、食事も作ってもらって接触しないように置いておいてもらい、あとから取りにいっていたと言います。
結果的に家族に感染を広げず療養期間を終えることができたということですが、家庭内で感染を広げない対策に非常に苦労したと振り返りました。
「不安を持ったまま過ごしましたが、なんとか自宅療養の期間を終えられてよかったです」
感染経路については、心当たりがないと話します。
「周りに感染したという人はいませんでした。私が感染したのと同じぐらいの時期に、小学校とか幼稚園が休園になったので、もしかしたら無症状の方がいらっしゃったのかもしれないです。でも、感染経路は本当にわかりません」
【準備しておいてよかったもの】
▼消毒液、使い捨て手袋、手洗い石けん、不織布マスク、塩素系漂白剤(洗濯用と食器用)、歯磨き粉(陰性の家族と分けて使う用)
【あったらよかったもの】
▼スポーツドリンク、ゼリー、あめ(のどが痛くて眠れないときになめるもの)
一方、自宅療養中、感染対策に気をつけたものの、結局、家族全員が感染してしまったという女性にも話を聞きました。
こちらの40代の女性も、1月中旬に感染が確認されました。
「熱が39度くらいまであがったのが3日間あり、のど全体に針が刺さったようなものすごい痛みが続きました。熱が下がってものどの痛みは1週間ぐらい続いて、ようやく治まってきたなと思ったくらいに今度は、たんが絡むようなせきが出ました。私はかなり辛かったです。熱は4、5日目ぐらいまでは上がったり下がったりで、朝になると37度くらいに下がって、また夜にあがってっていう感じでした。その後1週間ぐらいして、やっとのども楽になり、体は楽になりました」
同じ家に住んでいるのは女性と娘3人で、部屋やトイレなどスペースを分けて感染を広げないよう気をつけていましたが、最終的に全員が感染してしまいました。
「私が陽性反応が出た次の日、心配なので娘3人にPCR検査を受けさせました。そのときは3人とも陰性でした。しかしその3日後ぐらいに、料理を作って運んでくれたり、私が食べ終わった食器を片付けてくれていた次女にのどの痛みが出て、その後熱が出たので改めてPCR検査を受け、陽性になってしまいました。その翌日に今度は長女がのどが痛くなって熱も出て、PCR検査うけて陽性。その2日後に、今度三女がのどの痛みと熱で陽性と言うことで、結局、全員に移ってしまいました」
なぜ、全員に移ってしまったのか。女性は今となってふりかえると思い当たることがいくつかあるといいます。
食事
「私が部屋の外に出ないようにはしていましたが、やはりふだん私が台所を使ってるものですから、感染が分かる前に、冷蔵庫や調理器具とかにウイルスがついたままだったのではないかと思います。アルコール消毒してねと娘には言っていましたけど、やはり完全に除菌することはできてなかったのかなと、今になって思います」
「部屋の前に料理を置いてもらい、食事が終わったら私が食器を外に出して次女に洗ってもらっていましたが、洗いながらウイルスに触ってしまっていたのかなとも考えました。アルコール除菌のスプレーをかけたりはしていましたが・・・。やはり感染者は紙皿とか割り箸とか何か捨てられるもの、容器を使ったほうがいいと思います」
トイレや風呂など水回り
「私が部屋から出ないことと、トイレと洗面台に関しては1階と2階に分けて、なるべく分けて使うこと、お風呂は私が最後に入って、きれいに掃除して出るようにしていました。しかしやはり普段から、1階と2階のトイレ、どちらでも入れるようにしてたので、分けて使おうねと言っても、私が使ってる方のトイレに娘がうっかり入ったりしてしまいました」
「洗面台の歯磨きの保管場所をすぐ別に分けたほうがよかったなとか、そういうのもやっぱり気がつかなかったりするんですよね。感染後何日かたって、歯ブラシを同じ場所に置いていたなと気付きましたが遅いというか、熱で頭ももうろうとしてたのでいろんな所を気づけなかったというのがあります」
陰性だった家族の過ごし方
「普段から、娘3人も私もそれぞれ別々の部屋があり、私が感染したときには私だけ隔離はしていましたが、娘3人は一緒にリビングで食事をしたりしていたので、娘の1人が陽性になったときには、3人なっちゃうなと感じました。感染していない家族も、一緒に食べないほうがいい、家族に1人感染者がいたら別々の部屋で食事をとるというのも必要かなと思いました」
そのうえで、家庭内で誰かが感染したことを想定して、日常的に話し合って準備しておくべきだったと話しました。
「日頃から除菌する習慣をつけておくとか、誰かがコロナになった場合はどう隔離して、どう水回りをわけるかとか、常に家族で話しをして頭に入れておかないと、とっさになった時に意外と、今までと同じ習慣になってしまうと思いました。頭ではわかっていても、結局行動がこれまでと同じようになってしまっていましたから」
【準備しておいてよかったもの】
▼日もちするような乾麺などの食料のストック、消毒液
【あったらよかったもの】
▼紙皿や割り箸など食事で使ったあとに捨てられるもの
こちらの県内に住む34歳の女性は、現在、妊娠31週で、2月2日に新型コロナへの感染が確認され、自宅で療養していました。
女性は発熱やせきがあり、かかりつけの「稲毛バースクリニック」が、毎日、オンラインでつないで、助産師が女性の体調を聞き取ったり、専用の機器を使っておなかの赤ちゃんの状態をチェックしています。
「赤ちゃん結構元気そうです」
「ありがとうございます」
使われている機器は、県から貸し出されているもので、専用の機器を女性のおなかに装着すると、▽胎児の心拍数や▽子宮の収縮状況が遠隔でモニタリングできます。
この機器は、去年8月に新型コロナに感染した妊婦の受け入れ先が見つからず、赤ちゃんが亡くなったことから県が導入したもので、医療機関を通じて感染が確認された妊婦に貸し出されています。
女性は、この機器と、クリニックのオンラインでの健康観察で自宅療養でも安心ができたと話します。
「仕事中もマスクをつけて、外食もせずに感染対策には気をつけていたのですが、感染してしまいました。熱が上がったときに赤ちゃんの状態が分からずとても不安でしたが、その後、機器が届いて赤ちゃんの心拍の音が聞けて、少し安心しました」
ただ妊娠中に感染すると、特に注意が必要になることもあります。
クリニックによりますと、中には状態が悪化して、直接診療をしなければならなくなったケースもあったということです。
医師「何日か前電話頂いたときは一番つらかった?」
妊婦「そうですね。つわりで大体1日4回くらい吐いていました」
つわりがひどいこちらの妊婦は、コロナの症状は落ち着いていますが、通常診療とは別の建物で診療を受けることになりました。医師も防護服を着て対応しています。
体重が8キロ減って脱水状態となっていたため点滴が行われました。
このほか、自宅療養中に母親や胎児の命に関わることもある妊娠高血圧症候群になった妊婦もいたということで、クリニックは、直接の診療が難しい中でコロナ以外の症状にも注意する必要があるとしています。
土井院長
「地域の中核となる病院も頑張っているので、クリニックでも診るべき患者の見極めをしながら対応しています。しっかり乗り切って、患者と赤ちゃんを守っていきたいと思っています」
坂本譲記者
現在新規感染者の数は高い水準で推移していて、誰がいつどこで感染してもおかしくない状況となっています。また、今回は主に家族と同居している当事者を取材しましたが、一人暮らしや高齢者世帯など、自宅療養でもさまざまなパターンが考えられます。あれを準備しておけばよかった…などと後悔しないよう、もし自分が自宅療養者になったときを想定して、我々もしっかりと備えておく必要があると感じました。
櫻井慎太郎記者
感染拡大によって、妊婦や小さい赤ちゃんなど弱い立場の人たちにしわ寄せが来ている現状があります。妊婦は、直接の検診が受けられず、体調が悪化しても受け入れ可能な医療機関は限られます。また、小さい子どもがいるなど妊婦の感染対策には限界があると言います。妊婦や小さい赤ちゃんの置かれた現状を知り、改めて感染対策を徹底していかなければと思わされました。