列車をあしらった“かぶり物“”の、この男性。決して怪しい者ではございません。
地元で旅館を営む掛須保之さんです。「いすみ鉄道応援団」を立ち上げて地域を盛り上げています。
掛須さんが いすみ鉄道の国吉駅で立ち売りしているのは、駅弁「たこめし」。
地元のいすみ市沖で獲れたマダコをふんだんに使い、お米は 甘みがある「いすみ米」、付け合わせは、なめろうを焼いた「さんが焼き」です。
ショウガとだし醤油(じょうゆ)が香ります。
掛須さんは土日と祝日は立ち売りをしていて、この駅弁を目当てに いすみ鉄道に乗りに来る人もいるそうです。
いすみ市と大多喜町の約27kmを結ぶ第3セクターのいすみ鉄道。沿線の過疎化が進み、年間乗客数はこの10年で約4割も減りました。“地域の足”を守ろうと取り組んだのは、観光客に来てもらうこと。
なかでも、旧国鉄時代の車両を2両購入し、連結させて観光列車として走らせました。
すると、県外からのお客さんが鉄道を利用。掛須さんも、観光案内所の開設やイベントを企画してきました。
掛須さんは、「いま過疎化しているいすみ地域に観光客がたくさん来てくれる。おもてなしのひとつだと思っている」と話します。「鉄道があるから房総半島の真ん中に地元が地図に残っていて、なくなると忘れ去られる。いすみ鉄道が必要だと思って活動している。」
観光列車と地域の人たちの盛り上げで、鉄道利用者の減少にあらがってきたのです。
しかし、いま、新たな課題があります。
観光列車の1両、キハ28という車両を、老朽化によりことし11月27日で定期運行から引退させることになったのです。昭和39年に製造され、現役で走行する最後の車両として、観光客を呼ぶ大きな柱でした。
運行を続けるための検査や修理には、いすみ鉄道の年間の運賃収入を超える費用が必要です。いすみ鉄道ではこのキハ28の保存を検討していますが、そのための施設整備に約1000万円かかるといいます。
いすみ鉄道株式会社の古竹孝一社長です。「資金をどうやって集めるか、いま考えている。古いものを大切にして、この地域が何とかやっていくスタンスが鉄道でも見せられることがあったらいい。」
いすみ鉄道応援団の掛須さんは、鉄道存続のため、利用者を増やす手立てをこれからも考えていきたいといいます。「鉄道があるかないかでこの地域の価値が変わる。地域全体が一緒になって盛り上げていくしかない。」
各地でローカル線の今後が焦点になっていますが、地域の足としてだけでなく地域に人を呼び込む役割として、鉄道をどのようなかたちで残していけるのか、千葉県内でも模索が続いています。