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夕焼けの富士山 コロナ禍の不安を慰めてくれた東京の景色

#わたしの東京
  • 2021年12月15日

真っ赤な夕日に照らされて浮かび上がる雄大なシルエット。広がるすそ野まで捉えたこの富士山の写真、じつは都内で撮られたものなんです。みなさんからの投稿写真で東京の魅力を再発見する「#わたしの東京」に寄せられた1枚です。投稿者いわく、「山頂に掛かる送電線はご愛きょう」とのことですが、こんなに立派な富士山を見ることができる場所ならぜひ行ってみたい、と送ってくださった方を訪ねました。

23区内でもこんなに見える 練馬からの富士山 

斉藤享子さん

この写真を送ってくださったのは東京・練馬区の大泉町にお住いの斉藤享子さんです。撮影ポイントだという「練馬区立 風の丘公園」で待ち合わせました。住宅街の一角にある小さな公園には木製の展望台があり、よく晴れた日には、南は神奈川の丹沢から西の埼玉・秩父まで一望できるそうです。しかし、この日はあいにくのくもり空、富士山の姿は見えません。かわりに、斉藤さんがこの公園から撮った晴れた日の写真を見せてくれました。本当に見事な眺望です。

望遠レンズでとらえた富士山

富士山は心の鏡

富士山の写真を撮るのが大好きだという斉藤さん。その理由は夕日の写真とともに寄せられたメッセージを見るとよくわかります。

【投稿時のメッセージより】
小学校を卒業するまでは、新潟で飯豊の山々を、そして、中高生の6年間は会津若松で磐梯山を仰ぎ見て育った私。東京に来てこの地で暮らし、家々の屋根越しに富士山が見えた時は感動しました。それが10年ほど前でしょうか、自宅近くの公園が整備され、富士山がすそ野までバッチリ見える場所ができました。年2回のダイヤモンド富士ももちろん堪能できます。

就職を機に、福島から上京した斉藤さん。結婚して練馬に住むようになるまで、東京から富士山が見えるとは思いもしなかったと言います。

屋根の間からほんとに頭だけだったんですけど、見えてたので、「わー、ここで富士山が見えるんだ」ってうれしかったです。「ここでも見える」「あそこでも見える」という場所を見つけたんですけど、それもいつしか、おうちが建ったり、マンションが建ったり見えなくなってしまって・・・。それからしばらくして、この場所を教えて頂いて。視界が開けているのでここの場所が大好きです。

練馬に暮らして40年、忙しい子育ての合間や仕事で疲れて帰ったときなど、いつも富士山の姿に元気づけられてきたという斉藤さん。コロナ禍の息詰まるような日々を乗り越えてこられたのも富士山のおかげでした。

コロナの時は職場と家の往復だったんですけど、「たまには、山がみたいな」と思って、仕事帰りに山をみて「はあ」って一呼吸ついて「じゃあ、お家に帰ろうかな」という日があったり、夕方、家事もひと段落つけて、「富士山に会いに行こうかな」とよく来てました。自分の心持ちで、(富士山が)大きく見えたり、今日はちょっと小さめかなと思ったり。そんなことは絶対にないんですけど、そういう風に見えることがあります。

斉藤さんにとって富士山は、自分の心を映す鏡のようなものなのかもしれません。

美しいものに感動しておもしろいものににっこりしたい 

この公園に富士山を見に来るとき、斉藤さんがほぼ欠かさずに携えてくるのがカメラです。中学生のとき、親に頼んで買ってもらって以来のつきあい。「美しいものに感動して、おもしろいものににっこりしたい」と、重たい望遠レンズも苦にせず持ち歩いています。

23区にありながら自然豊かな練馬。季節ごとに咲く花や鳥など、被写体には事欠かないと言います。たとえばこんな感じです。

題して「紅葉の信号木」。

緑、赤、黄色でまるで信号機のように並んでいて、紅葉の具合によってこんな風に変わるんだなって。ちょっとおもしろかったです。

続いての作品は「夕日のお団子」

こちらの写真は、「カラスは落花生の殻を割って食べるのか、割らないで食べるのか」を想像しながら撮ったのだと言います。斉藤さんの話を聞いて、自然や眺望がいいからよい写真が撮れるのではなく、日常の風景を楽しめているからこそ、いい写真になるのだなと思いました。

富士山と向かい合える大泉町が「わたしの東京」

四季折々の練馬の姿をカメラに収めてきた斉藤さん。数ある写真の中でも「わたしの東京」に最もふさわしいのは夕映えの富士山でした。

ここから見える富士山がとっても好きなのと、沈む夕日がどうしても好きなんです。同じ時間なんですけど、ゆっくり過ぎていくような気がして、そのしずんだ後も、グラデーションがとってもきれいなんですよ。一人になれる時間でもあって、色々なことを忘れられる時間でもあって、明日につなげていける時間かなって思います。

結局、夕方まで粘ったものの、この日、富士山の姿を見ることはできませんでした。でも取材を終えようとしたそのとき、富士山を覆い隠す雲のすき間から美しい光の束がこぼれてきました。斉藤さん、すかさずシャッターを切ります。

きょうは富士山が見えないですし、夕日そのものもどうかなって思うけど、なかなか見ることができない「天使のはしご」が素敵です。ちょっとワクワクします。

人生の3分の2をこの練馬区大泉町で過して、子供たちもここで育っていますので、もうふるさとですね。大好きな自然に囲まれた大泉町、富士山と向かい合えるここが「わたしの東京」です。

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