2020年10月06日 (火)感染症と人権尊重  【 三上 弥 】


こんにちは。
シニア・アナウンサーの三上弥(みかみ・わたる)です。

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最近は、秋の気配を感じます。
9月28日(月)の早朝には、
雪化粧した富士山が姿をあらわしました。

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気象台が「富士山の初冠雪」を発表するのは、
毎年、山梨県側の甲府地方気象台だけなので、
気象台による静岡県側の「公式発表」はないものの、
明らかに雪をいただいた霊峰です。


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令和2年度後半が始まった10月1日(木)は、
「中秋の名月」を観賞することができました。
当日、「ニュースしずおか845」の冒頭でも生中継で伝えています。
年度後半初日のありがたい自然現象です。

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こちらは、翌日・10月2日(金)に放送局の近くで撮った写真です。

「中秋の名月」は「満月」とは限らないということも
この機会に再確認しておくと役立ちます。
ことしは、10月2日が「満月」でした。
天文関連の書物や記事に時々登場するテーマです。

三上弥の「現場のことば」
第23回は、「感染症人権尊重」です。


 パンデミックから半年余り 

WHO=世界保健機関が、
新型コロナウイルスの感染拡大が
世界的な大流行=パンデミックになったという認識を示してから
半年余りがたちました。
感染する人は国内外ともに断続的に確認されていて、
収束とは言えない状況が続いています。

令和3年に延期となった東京オリンピック・パラリンピックの
新たな聖火リレーの日程が発表された一方、
感染の影響がどのような形で続くのか気になる人も少なくありません。


 感染症法 

新型コロナウイルスめぐるニュースでは、
感染症法」の「指定感染症」であることが随時触れられています。

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」が
省略しない名称で、平成10年に公布、平成11年に施行されました。

最初に「伝染病予防法」・「性病予防法」・「エイズ予防法」を統合して
施行され、のちに「結核予防法」も統合されています。
法律では、感染力などに基づいて分類がなされているのが特徴です。
感染症の名称から一部を列記すると ――
ペスト、エボラ出血熱、結核、コレラ、赤痢、A型肝炎、マラリア、日本脳炎、
麻しん、後天性免疫不全症候群、感染性胃腸炎、インフルエンザなど、
かつて蔓延(まんえん)したものもあれば、毎年のように気になるものもあり、
それぞれの分類は、条文を読めば一目瞭然です。

新型コロナウイルスはこの法律の「指定感染症」に分類されています。
このウイルスをめぐる動きは日々変化しているので、
最新の情報は「『新型コロナウイルス』特設サイト」をご覧ください。


 新型コロナウイルス感染拡大の影響で 

NHKニュースでは、
新型コロナウイルスに関するニュースを音声で伝えるとき、
新型コロナウイルスの影響で」や
新型コロナウイルス感染拡大の影響で」という表現をします。

字幕の場合は、字数に制限があるので「新型コロナ」とか「新型ウイルス」と
表記することもあるものの、音声表現の基本は「新型コロナウイルス」です。

コロナウイルスはほかにも存在するので、
ニュースでは、「コロナ」とだけ表記することや、
「コロナ」単体で発音することはほとんどありません。


 「コロナ『か』」……定着するか否か 

放送、ネットやSNSを含む電子媒体、活字メディアを含め、最近、
災難や難儀、不幸な出来事を意味する「禍(か・わざわい・まが)」を付けた
コロナ禍(か)」という表現に接する機会が増えてきました。

このほか、影響下、条件下、支配下というように、
「ほかの物事の影響を受ける所・条件」「~のもと」という意味での「下」を付けた「コロナ下」、
さらに「禍」の影響を受けていることを示した
コロナ禍下」という表現に出会ったこともあります。

意味だけで考えると、どれも間違いとは言えず、
文脈上正しければ使用可能な範疇(はんちゅう)に入るかと思います。
特に、活字メディアでは違和感が少ないでしょう。

一方、放送の音声表現面で考えた場合、
コロナか(禍・下)」「コロナかか(禍下)」が
定着するかどうかはまだ分かりません。

ころなか」「ころなかか」と音声で聞いたとき、
文字の表記や意味が瞬時に浮かぶかどうかという点が
まず気になりました。

「か」や「かか」の部分だけでなく、
コロナウイルスにもいろいろあるのは周知のとおりで、
今回の新型コロナウイルスを
「コロナ」と端的に表現してしまっていいのかという懸念もあります。

「現在進行形」の事象なので、
新型コロナウイルスをめぐることばが、
どのような形で日本語として定着していくのか、
将来にわたって鋭敏に見つめていきたい対象です。


 感染症をめぐる「人権尊重」の理念 

この職業に就いてちょうど2年を迎えたころ、
「NHKニュース おはよう日本」で、
「国立療養所多磨全生園(たま・ぜんしょうえん)」からの中継を担当したことがあります。
平成8年4月、「らい予防法」が廃止されたことを受けて、
東京・東村山市の「現場」から報告するというタイミングです。

かつて「らい(癩)」と呼ばれていた「ハンセン病」について、
「治療法が確立している」という医学的見地や、歴史、
人権尊重」の意義について伝えました。

この経験があったので、
感染症に関するニュースは昔もいまも気になります。


新型コロナウイルスをめぐる取材で
感染症法」を改めて精読・確認していくなかで、
「前文」に記されている「人権尊重」の記述が響きました。


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今回のウイルスをめぐっても、
差別・偏見・ひぼう中傷が各地で起きていることは、
各メディアで伝えられているとおりです。

取材過程で聴いたことばのなかでは、
「戦う相手は『人』ではなく『ウイルス』だという表現が
的確だと感じました。

新型コロナウイルスは治療法が確立していないので、
「ウイルス」に対する感染予防の取り組みは引き続き必要です。


一方、ウイルスに対して
「ヒトという生物」としての防衛本能が働くことはあっても、
過度に神経質になることなく、
「不安の矛先」を誤らないように考えて行動することが、
人間として大切なことだと思います。

こうした理念を伝えているのが、「感染症法」の「前文」です。

投稿者:三上 弥 | 投稿時間:15:30

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