2019年09月09日 (月)紋切り型を避ける  【 三上 弥  】


こんにちは。
シニア・アナウンサーの三上弥(みかみ・わたる)です。

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真夏日が続き残暑が厳しいものの、
雲は徐々に秋らしくなってきました。
過ごしやすい季節までもう少しです。

日本国内では、これから来年(令和2年)にかけて
国際的に重要なスポーツの大会が続きます。

9月20日には、
ラグビーワールドカップ日本大会が開幕します。
東京スタジアムで行われる日本-ロシア戦からです。
静岡県の会場でも、9月28日以降、合わせて4試合が行われます。

東京オリンピック・パラリンピックまでは1年を切りました。

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三上弥の「現場のことば」

第12回は、「紋切り型を避けるです。 

紋切り型(もんきりがた)」というのは、

決まり切った型型どおりで新鮮味のないことをいいます。
家紋などの紋を切り抜く型は一定の形をしていますから、
紋切り型の意味は、イメージとしても分かりやすい部類です。 


  「定型表現」…… 言い換えはないか   

オリンピック・パラリンピックやワールドカップといった
大規模なスポーツの大会では、
各メディアで、夢の大舞台といった表現が多用されます。

たくさんの競技がある中で、
興奮しながら何でもかんでも「大舞台」と表現されると、
聞いているほうは飽きてくるのです。 

大舞台」といわなくても、
「大切な試合」とか「ここ1番の勝負」、
「外せない一戦」というように、ほかの言い回しはいくつも浮かんできます。
決まりきった表現をしないというのは、
分かりやすい表現を考える際の大前提
です。 

なお、「大舞台」のNHKの放送における読み方は、
▼晴れの舞台・活躍の場の意味では「①オオブタイ ②ダイブタイ」、
▼歌舞伎など古典芸能の場合は「オオブタイ」のみとなっています。 

 

  擬態語の使用も慎重に   

ラグビーワールドカップ日本大会の開催都市を歩いていると、
ポスターなどの掲示物で公式マスコットを見ることがあります。

2体で「レンジー」という名のユニットです。
英語では「Ren-G」と書きます。
全体が白くみえるほうが「レン」。赤い毛が特徴なのが「ジー」。
「レン」が親、「ジー」が子という設定です。
レンジ―」は何の動物なのかと思っていたら、
ある日、想像上の聖獣「獅子」であることを知りました。

この「レンジー」の毛の質感を表現するとき、どのように言えばいいでしょうか。
「ふさふさ」、「ふわふわ」、「もっさり」のほか、
「もふもふ」という表現をする人もいるでしょう。
「もふもふ」は、市民権を得ているとはいいがたいものの、
最近、各メディアで使われることもあるので、定着するかどうか様子見の表現です。 

擬態語の場合、いくつかの表現を使うようにすると、
会話でも活字でも、新鮮で、分かりやすいコメントになります。 

気温が「ぐんぐん」上がる、たまごの黄身が「とろり」としている、
氷の上で「つるっと」滑ったというような手垢のついた表現にも注意が必要です。 

擬態語をまったく使わないのは非現実的なので、

▼擬態語を使わずに具体的に表現できないか、
▼擬態語を使う時には同じ表現ばかりになっていないか、

その都度確認することが欠かせません。 

 

  よいことばも使用頻度に配慮する  

きずな」ということばがあります。 

きずな」はもともと動物をつないでおく綱のことです。
「きづな」と表記することもあるのは、
この本来の「綱」の意味に忠実だともいえます。

転じて、いまでは多くの人が、
人間どうしの絶つことのできないつながりや、
離れがたい結びつきを示すことを知っています。
いくつかある漢字表記のうち、
「絆」という字はかなり浸透していると言っていいでしょう。

とても大切なことを示しているので、
好む人も多いことばの1つです。 

規模の大きな災害や事故、困難な事態が発生すると、
きずな」ということばの使用頻度が上がります。
困っている状況を
お互い助け合うことで乗り切ろうという思いが高まるからです。

ただし、放送メディアでも、活字メディアでも、
「『きずな』を大切に」といった表現を短期間に何度も伝えると、
本来の意味とは別に、ことばの繰り返しによる「飽き」が生じます。

 
よい印象のことばを使う時も、

▼ほかの言い回しがないか、
▼タイミングや頻度はどうかといったことに配慮しながら伝えると、
本来の意味がよりよく伝わります。

こうした視点も、
紋切り型を避ける上では重要です。  

 

 

 紋切り型を避けて分かりやすい表現を 

紋切り型を避ける意識は、
報道機関で働く者の多くが、若いうちに研修や仕事の現場で学びます。 

一方、紋切り型の表現は、
式典のあいさつ、祝辞、日常会話などでまだまだ存在するのが実情です。
紋切り型を避けて、分かりやすい表現がいっそう広がることを願っています。

投稿者:三上 弥 | 投稿時間:18:00

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