2018年09月05日 (水)奥秩父縦走始末記・下【早坂 隆信】


5月の大型連休中、早坂はラジオ番組の中継リポートをするため、奥秩父を縦走した。
奥秩父縦走始末記・上

3泊4日の期間中、驚くべきことに番組に早坂への激励がたくさん寄せられた。
このブログを見たうえで、メッセージをくださった人さえいたのだ。
そのやさしさは山中でへこたれていた早坂にもじゅうぶんに伝わった。
この場を借りてお礼申し上げたい。ほんとうに有り難うございました。
そして、お礼が4ヶ月も遅れたことを深くお詫びします。すみませんでした。
しかし、こんな駄文を一生懸命読んだ上で番組にメッセージをくださるステキな方は、
この男の人間としての器の容量にもお気づきであるはずだ。
だから笑って許してくれるに違いない。
これが早坂の限界である。

さて、4日間の縦走はいよいよ3日目。
本当の縦走はここから始まった。

5月4日(金・祝) 快晴

笠取小屋 1800m付近

晴れて空気がひんやりとした気持ちのよい朝。
きのうもまずまず眠れた。

180905_hayasaka001.jpg
体感は10℃以下。寒いくらい。

朝の山小屋から中継をした後、
山の水を沸かして淹れたコーヒーを飲んで出発。

きょうは東京都の最高峰・雲取山まで行く4日間で最も長いルート。
サクサク歩けばまあ大丈夫。サクサク歩けば・・・

歩き始めの空。いい雲だ。

180905_hayasaka002.jpg ザックの背中は同行の山岳専門スタッフ。いい人だ

多摩川水干 1900m付近

笠取山の南斜面は東京と神奈川の境を流れる多摩川の水源地。
多摩川の始まりの場所(水干)に立ち寄る。

180905_hayasaka003.jpg180905_hayasaka004.jpg 多摩川の最初の一滴

笠取山(1953m)を過ぎ、
黒槐山(2024m)から唐松尾山(2109m)を越える。
体の重さはまだないが、右足のくるぶしが痛む。
一歩一歩が登山靴に当たって痛い。がまんして歩く。
カントリー風ソフトクッキーと、パイン型アメで
エネルギーを補給しながら進む。

180905_hayasaka005.jpg 歩いても、歩いても山道

山をひとつ越えるのに標高差200mほどのアップダウンがある。
歩き始めて2時間ほど。これがだんだんきつくなってきた。
唐松尾山から標高200mほど下って将監峠(1883m)付近の原っぱで休憩。
おにぎりを食べる。

将監峠から先は稜線を外れ、等高線に沿った平らな巻き道を行く。
アップダウンでペースの上がらない稜線と比べたら平坦な巻き道は高速道路みたいだ。
すいすい歩く。
ここでペースを上げすぎたのが、まずかった気がする。

飛龍山(2069m)の中腹を巻いて、
その先の三ツ山(1949m)付近から長い下りを経て狼平というところで休憩。

180905_hayasaka006.jpg 地衣類に覆われた広場。狼はいなかった

あとちょっと!出発しようと思ったら、右のひざが曲がらない。
ひざ周りの筋肉が力を使い果たしたようだ。
無理やり曲げれば曲がるんだけど、痛い。

平地だったら
これはもうダメだと思います
と言って家で寝ているレベル。
でも進むしかない。

当面、右足をつっかえ棒のようにして歩く。
意外とこれでも平らな道は進める。速度もさして変わらない。

どこまでも続く山並み。人里は遠い。

180905_hayasaka007.jpg 奥秩父、ずいぶん奥まで来てしまった

なんとか計画通り、雲取山直下までたどり着く。
ここからは標高300mを一気に上がる急坂、
登り坂でひざが曲がらないのはさすがにきつい。

思いっきりペースダウン。
「・・・もうムリですよ」
と呟いたところで何も起こらない。
山では結局のところ、歩くしかないのだ。

雲取山山頂 2017m

はうようにして、雲取山山頂に到着。
スマートフォンのバッテリー切れで写真撮れず。
明日も来るからいいや。
中継機材のテストをするも電波の状態がよくない。
翌日の中継に不安をのこしたまま、20分ほどかけて雲取山荘へ下る。
下りでヒザが曲がらないのは登りよりきつい。
ひざの痛みにかき消されて、くるぶしの痛みはとっくに感じなくなった。
それでも、歩くしかないのだ。

山荘に到着。
雲取山に登る登山者で賑わう大きな施設。
この日は連休中とあって100人以上が宿泊していた。
夕食のあと、売店でコーラを一本買った。

ぷしゅっ!
しゅわしゅわしゅわ
「キンキンに冷えてやがるっ・・・・・!」
圧倒的だ。

さわやかなるひとときを過ごし、
そのあと山小屋のおじさんに鎮痛消炎の塗り薬を貸してもらいヒザに塗る。
スースーして気持ちいい。これは効きそうだな!

少しでもヒザを回復させるため部屋で休む。
布団の上で、毛布にくるまる幸せ。

「コーラとふとんがあれば、もう何もいらないよ」

5月5日(土) 晴れ

雲取山荘 1850m付近

ついに最終日。雲はあるが青空。

180905_hayasaka008.jpg 雲取山荘、いいところです

ヒザの状態を確認する。

「こいつ・・・曲がるぞ!」

ご飯を食べて、寝て起きたらだいぶ回復していた。
栄養と休養がいかに大切かを学ぶ。
下界に下りたら、よく食べ、よく寝ることにしよう。

きのうひーひー言いながら降りてきた雲取山への道をサクサク登り返して
再び雲取山山頂に立つ。

雲取山 2017m

180905_hayasaka009.jpg 憔悴感のある筆者

歩いてきた山並み。
一番奥のうっすらとしたところより向こうから来たらしい。
これは、けっこうすごいぞ。

180905_hayasaka010.jpg だれか、褒めてくれないか

電波状態の良いところを探し、無事に最後の中継を終える。
連日の放送も終わりあとは帰るだけ。
でもきょうは標高1300mも下らなくてはならない。
ヒザ、大丈夫かな・・・

七ツ石山(1757m)を過ぎたあとはひたすら尾根筋を下る。
新緑の美しい山道。
やはり右ヒザが痛くなってきたので。
歩き方を「つっかえ棒スタイル」に戻す。

180905_hayasaka011.jpg さすがに森はおなかいっぱい。コンクリートが見たい

標高1300mを4時間ほど、下りに下ってようやく人家のあるところに出た。

180905_hayasaka012.jpg 屋根だ!なむなむ!

ここは東京・奥多摩。奥多摩湖のいちばん奥だ。
人里ばんざい!

路線バスで40分かけてJR奥多摩駅へ。
駅前はすでに大都会・東京の風情を漂わせる。
人間がいっぱいいる!JRが通ってる!
いちいち感動。

日帰り入浴施設で4日間の垢を落として、
電車を乗り継ぎ静岡に帰ったのであった。

こうして12年ぶりの山岳縦走は終わった。
へろへろになりはしたが、ともかく歩ききった。

残雪の針葉樹林、立ち枯れの木が並ぶ荒涼とした稜線、苔むしたふかふかの森、日差しを受けて輝く新緑の木々。登山者もまばらな山道。いたるところで湧き出るつめたい水。

歩き続ける中で、ほんとうの「奥」とは何かを見た気がする。

縦走は辛く楽しい。そして奥秩父はいい山域である。

(おわり)

投稿者:早坂 隆信 | 投稿時間:18:30

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