ラジオ深夜便 番組からのおしらせ

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8月3日 吉本 ばなな 作 
「あったかくなんかない」
2019年12月23日放送のアンコール

小説家の「私」には、明かりについての複雑な思い出がある。小さな本屋の娘だった私には、小さいとき、たった一人の友達がいた。老舗の和菓子屋の息子の、まことくん。とても心の優しかったまことくんは、他のきょうだいと母親が違うという事情はあったが、和菓子屋の家でとてもかわいがられていた。 まことくんとは、お互いの家に行って本を読んだり、散歩をしたりして遊んでいた。夜は、私の家の2階の窓から、まことくんの家の大邸宅の明かりが見えた。それを見てなんとなく安心していた。しかし、私の家に遊びに来ていたまことくんが自分の家に帰るのを嫌がったある日の夜。まことくんの家の明かりがついていたのに、私はいつものように安心しなかった…

朗読:出田奈々アナウンサー


 

8月11日 角田 光代 作
「誕生日休暇」

本人の意思とは無関係に、物事が勝手に進んでしまうことがある。 まさにそんな形で誕生日休暇にハワイ島のさびしい街にやってきた主人公。 たまたま入ったホテルのバーで偶然出会った日本人男性から、自分の意思とは無関係に回り始めた「運命」に翻弄され、ここにいるのだという驚くべき経験を聞かされる。

朗読:藤井彩子アナウンサー


 

8月17日 太宰 治 作
「日の出前」
2019年10月21日放送のアンコール

画家の仙之助は妻と一男一女の4人家族。息子の勝治は親の希望する進路に進まず、好き勝手な生活をし、金の無心ばかりしていた。挙句、妹や女中からも金を取り上げ、父の絵も売り払ってしまう。 家族が困り果てていたある日、父と息子が“散歩”で井の頭公園へ。二人でボートに乗り込むが、帰ってきたのは仙之助だけ。翌朝、勝治は死体で発見される。

朗読:吾妻 謙アナウンサー


 

8月24日  恒川 光太郎 作
「古入道きたりて」

岩魚釣りのために長門(ながと)渓谷(けいこく)を訪れていた杉本は、突然の雷雨の中、山中にポツンと建つ一軒の家を見つけ、その家に住む老婆の好意で一晩泊めてもらうことになった。日も暮れかかるころ、杉本は老婆から「満月の夜には古入道が現れる」と聞かされる。お化けや幻の類だが無害。灯りをつけていたり隣に誰かがいたりすると見えない、という。 「はて、古入道とは?」真夜中にそっと起きだして窓の外を眺めた杉本の目に映ったのは…。

朗読:後藤 康之アナウンサー


 

8月31日  伊藤 桂一 作
「大川端早駈け始末」

江戸深川の瓦版屋のせがれ長吉は、幼馴染の仲間たちとともに、富岡八幡宮から浅草寺まで、大川沿いを往復する早駈け(いまで言うマラソン)大会を企画する。仲間の一人で、未だに所帯が持てない飛脚の源次に賞金をとらせてやろう、合わせて家業の瓦版の大宣伝にも、という狙いだった。界隈の商家の協力をとりつけ、10両という高額の賞金が決まったが、これを目あてに、飛脚、駕籠かき、岡っ引きをはじめ、江戸の足自慢達が続々と参加を希望。なかには70歳の柔術家や、負けたら腹を切るという浪人者まで表れる始末。さて、この競争の顛末は…。

朗読:杉原 満アナウンサー