NHK仙台放送局»東北Z»ここに技ありアーカイブス»第18回 キラリ夏 手仕事輝いて~福島県中通り~

「ここに技あり」アーカイブス

»「ここに技あり」のこれまでの放送一覧はコチラ

2009年 7月10日(金)

キラリ夏 手仕事輝いて~福島県中通り~

暮らしを支える手仕事を東北各地に訪ねる技の旅「ここに技あり」。 今回の舞台は福島県中通り。 中通りは阿武隈川沿いに開けた地域。 北部の伊達地方は古くから養蚕業が発達し、中央に位置する郡山は交通の要衝として栄えるなど、地域ごとに特色のある文化が育まれてきました。 初夏・伝統の手仕事に忙しい職人達を訪ねました。

#

旅をするのは、山形県出身で
父親が大工だったという
劇団WAHAHA本舗の佐藤正宏さん。

  • 技の旅人:佐藤正宏さん(劇団WAHAHA本舗)

1、昔ながらのお蚕飼育

佐藤さんが最初に訪ねたのは、青々とした桑畑が広がる伊達郡川俣町。

明治時代から養蚕をしている農家の高橋忠俊(たかはし・ただとし)さんのお宅では、お訪ねした6月上旬、今年最初の蚕の飼育が始まったばかりでした。養蚕の主な仕事は、餌となる桑の葉をやること。一度に20万の蚕を飼う高橋さんのお宅では、蚕がまゆになるまでにおよそ10トンの桑の葉を与えることになります。梅雨寒の日には、蚕室(さんしつ)と呼ばれる飼育小屋の温度管理にも気をつかいます。高橋さんは薪やもみがら、木炭を使う昔ながらの方法で暖房を行っています。この地方に昔から伝わる養蚕の技が、良質のまゆを生み出します。

# 桑の刈り取りに忙しい
養蚕農家の高橋忠俊さん

# クワを食べる蚕

2、農家の女性が伝える技「入金真綿(いりきんまわた)」

伊達市保原町は、まゆを手で引き伸ばして作る真綿の産地。特に横長の巾着のような形の袋真綿は、およそ400年前からこの地方だけで作られている独特の真綿で、大判小判に形が似ているとか財布代わりに使った等と言われ、「入金(いりきん)真綿」と呼ばれています。真綿作りは昔から農家の貴重な現金収入でした。「真綿がけ」と呼ばれるこの手仕事を担ってきたのは農家の女性達です。佐藤悦子(えつこ)さんは、子供の頃から母親の手伝いを始め、50年以上にわたって真綿を作ってきました。たらいに張ったお湯の中で、まゆに穴をあけて中身を取り出し、まゆ5個分を指に重ね、両手のこぶしで30センチ×15センチの大きさまで少しずつ広げていきます。道具は使わない、完全な手作業です。保原では、およそ100人の女性たちがこの技を受け継ぎ、真綿作りを伝えています。

# 独自の形をした入金真綿

# 真綿を作る佐藤悦子さん

3、夫婦で行う真綿加工の技

養蚕農家と真綿職人をつないでいるのが、まゆやその製品を扱う問屋、「蚕物屋(さんぶつや)」です。伊達市保原町にはかつて蚕物屋が軒を連ね、日本有数のまゆ取引の地でした。石川隆(いしかわ・たかし)さんは明治時代から続く蚕物屋の4代目。石川さんは農家が育てたまゆを集め、釜で煮て柔らかくしたものを真綿職人に配達し、出来上がった真綿を回収しています。また、お客さんからの注文に応じて、真綿100%の布団綿作りも行っています。布団綿作りは、妻のより子さんとの共同作業。真綿を一枚一枚両側から引っ張って伸ばし、積み重ねて作ります。1キロの布団綿を作るのに使う真綿はおよそ6百枚。一日一枚作るのがやっとだといいます。

伊達地方の職人達は、まゆをめぐる手仕事をつないで、人をやさしく包み込む暖かな道具を作っています。

# まゆを扱う蚕物屋の石川さん

# 夫婦二人で真綿を引き伸ばし
布団わたを作る

4、祖父から受け継ぐ手作り提灯の技

中通りの中央部・郡山市で佐藤さんが出会ったのは、提灯作りの技です。

熊田覚(くまだ・さとる)さんは、提灯職人だったおじいさんの仕事ぶりを見て育ち、25歳から本格的に提灯作りの修行を始めました。提灯は、木製の型に針金をらせん状にまきつけて原型を作ります。その後紙を貼り、一段一段たたんで出来上がりです。さらに家紋や文字の書き入れと、手の抜けない作業が続きます。熊田さんが修行を始めて2年目、おじいさんは亡くなってしまいました。その後の熊田さんを支えてくれたのは、おじいさんが書いてくれた手本の文字と、修理や処分で持ち込まれるおじいさんの提灯。その全てをアルバムにとじこんでいます。迷ったときはそのアルバムを開いて学んできました。「年数が経つほど、祖父の背中が遠くなる気がする」と語る熊田さん。お盆や祭りの季節を前に、大忙しの日々を迎えています。

# 熊田さんが手がける様々な提灯

# 提灯職人 熊田覚さん

上へ戻る

金曜 午後8:00から8:43まで 総合テレビ(東北ブロック放送)

厳しい風土の中で脈々と受け継がれてきた東北の「わざ」。 それは何代にも渡って積み重ねられてきた智恵と工夫の結晶。 手仕事で作られたモノには、使い手を思って込められた優しさがあふれ、庶民がたどってきた暮らしの歴史や風土が見えてくる。

民芸品を芸術として捉える「民芸運動」の創始者・柳宗悦は、東北を「手仕事の国」と表した。 少なくなったとはいえ、東北にはまだまだ手仕事の風景がある。 番組では、「手仕事の国」の今を訪ね、行く末を思いながら、優しさあふれる技の数々と出会う。

これまでの放送