羽生結弦さんてれまさ出演! やっぺぇも興奮!? 岩野吉樹アナが振り返る

<9614通の声!『てれまさ』にしかできないことは―?>

その知らせが私のもとに届いたのは3月半ばでした。

「羽生結弦さんが番組に出てくれるかもしれない!」

過去、金メダリストと番組でご一緒したことはありません。
さぁ、どうする岩野!正直、うろたえました。

何から準備したらいいか全くわかりませんでしたが、「どんなことをお話しいただきたいか」
私と岩間キャスター、藤原キャスターを中心に考え始めました。
でも、相手は世界的なスター。全国的にメディアに多く出ている。
ここでしか聞けないお話って何…?
考えれば考えるほど、よくわからなくなっていきました。

3月下旬には担当者会議を2回開き、「番組全体に出てもらいたい」「視聴者からも質問を募集」ということや、出演1週間前に質問募集を始めることを決めました。

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(質問募集時のHPバナー ※受付は終了しています)

そして迎えた4月7日。告知を始めると…。なんと当日の番組終了までに数百件。翌日には1500件、さらに1日経つと3000件…と、私が予想した数十倍のペースで質問が集まりました。
叫びました。

「な、なんじゃこりゃぁ!!!!」

結局、締め切りまでに、9614通というものすごい数の質問やメッセージが。
まさに老若男女問わず。宮城県外からはもちろん、海外からも相当数の声が届きました。
慣れない日本語で必死につづってくれたんだろうなと思しきものもありました。

私の知る限り、NHK仙台では過去最大の反応です。
反響の大きさに喜ぶとともにプレッシャーも…。
「これは、下手なことをしたら炎上するかも…」という不安も心の中に生まれました。
そうした反応と期待の大きさを目の当たりにした私たちは、次の会議でこう決めました。

「いただいた思いをそのまま羽生さんに届けたい。質問を中心軸に据えて、番組全体を構成する」「全国放送ではできない、この番組でしか見られない羽生さんの姿を届ける」

『ゆづっぺぇ』のアイデアも「ここでしか見られない羽生さんを」という思いから生まれました。

<宮城発!全国のみなさんに届ける!!>

また、その集まった質問を通して、宮城県外でも多くの方がこの番組を楽しみにしてくださっていることがわかりました。そのため、NHKプラスやSNSでの告知もいつも以上に大事にしようという気持ちが、スタッフ全員に自然と生まれていきました。
放送前日、気が付いたら編集担当スタッフがある動画を作ってくれていました。


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(放送前日に投稿した番組ツイート)

全国からNHKプラスの見逃し配信で番組を見られること、番組としても楽しみにしていることを「てれまさ」公式ツイッターアカウントで動画を添えてツイート。ファンの皆さんがたくさん反応してくれました。うれしさとともに、プレッシャーも高まるばかりです。

私たちは、前日、当日と入念にリハーサルを重ねました。どこに座っていただくか。表情や姿を余すことなくカメラで追えるか。その姿は“映えるか”。一挙一動、逃すことのないよう、動きやカメラのサイズ、ライトの具合など。細かく確認していきました。そのたびに熱量が増し、気が付いたら、羽生さんの登場する場所に、今まで見たことないライトが立てられていました。

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すべてのスタッフが「いまできる最高のものを」と、日を追うごとに、いえ1分1秒の時間を追うごとに、気持ちが高まっていったのです。

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(キャスター2人の手元には整理した質問項目がびっしり)

私と岩間さんはというと、寄せられた質問を生かしてどうしたら実際に羽生さんとのトークを組み立てられるか、ずっとシミュレーションを重ねていました。
皆さんからいただいた質問は本当に「いま聞きたい」というものが多く、1問でも多く尋ねたい。どうしたらそれがかなえられるか。この1年の羽生さん関連の記事もできるだけ見て頭を整理しました。羽生さんが発信している動画も視聴しました。競技のTV中継ではありえないカメラ配置、氷を削る音さえも作品の1つかと思うほどの表現、そしてご自分のつらい映像も使った動画も(見ていて自然と涙が溢れました)。「羽生さんの本気は、やはりスケートの中に表れている」。そう確信しました。
結果、この1年のスケート(アイスショー・投稿動画)の質問を最初の軸に据えることにしました。


<「一番大事にしたいことはなんですか?」>

さあ、覚悟は決まった。あとは気持ちよくお迎えしよう。
そう思って迎えた当日の本番直前、スタジオに到着された羽生さんにご挨拶したとき、羽生さんからこんな声をかけてくださいました。

「岩野さん、きょうの番組で一番大事にしたいことってなんですか?」

ゲストの側からそんな質問をされたのは初めてでした。一瞬、間があって、私は答えました。

「2つあります。1つは1問でも多く皆さんからの質問にお応えいただきたいこと。
もう1つは、羽生さんご自身が『楽しかった』と思える番組であること。それだけです」

そう答えると、「すべてわかったよ」と言うかのように、羽生さんは微笑みました。そして、
「よろしくお願いしまーす」の声と共に控室に向かいました。すべてのスタッフに深々と一礼をされて。

<まるで “真剣なラリー”>

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本番中は、夢のような時間でした。頭が「ぶるーん」と音を立てているかのように回転していたことは覚えているのですが、その時の情景は、今もところどころの静止画でしか浮かびません。
ただ、途中から、1人の人間として羽生さんの姿、お話に引き込まれていったことは覚えています。

いつの間にか、「寄せられた質問を1問でも多くぶつけたい」私たちと、「1問でも多く答えさせて」という羽生さんによる、真剣なラリーが展開しているような感覚も覚えています。
「下手をしたら炎上するかも…」という恐怖は、いつの間にか消えていました。
もっと話していたい。生放送中であるという意識も薄れていたような気がします。

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(番組配信は終了しています)

そのほか、放送前から終了後にかけては、すでに多くの動画にまとめられているとおりです。
放送直後の正直な感想は、「疲れた…。でも、最高だった!!!」

演技だけでなくその人柄で世界中の人を魅了する羽生さん。
その魅力を直に浴びられて幸せでした。

今回の番組が成り立ったのは、たくさんの質問を寄せてくださった皆さんと、私たちの思いに100%以上の協力で応じてくださった羽生さんのおかげです。本当にありがとうございました。
またのお越しを、スタッフ一同、やっぺぇも、お待ちしております!

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番組や記事をご覧になったみなさんへ

 

※羽生結弦さん生出演プレーバック記事 前編はこちら、中編はこちら、後編はこちらから。