「てれまさ」羽生結弦さん生出演プレーバック<中編>

4月14日、仙台市出身でフィギュアスケーターの羽生結弦さんが「てれまさ」に生出演しました。
羽生さんの名場面、フィギュアスケーターとしての現在や今後に迫ったロングインタビューを3回シリーズで振り返ります。2回目は、みなさんからの質問を集めたインタビューのうち、プロ転向後の変化、ふるさとや被災地とのかかわり、大技の4回転半ジャンプの挑戦などについてお伝えします。


<プロ転向後の生活、変化>

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Q、プロになって9か月、今の気持ちを教えてください。また一番変わったことは何でしょうか?

羽生さん
こうやってスタジオに出させていただいたりとか、あとは動画で何を作ろうかとか、また余計にスケートのことを考える時間が増えたな、というのは思っていますね。
それプラスアルファで、競技時代よりも、もっともっとたくさん演技をする時間が増えたので、もっと体力つけなきゃ、と思って練習をがんばっています。

Q、競技時代よりもスケートのことを考えている時間が増えた?

羽生さん
競技時代だったら、この試合が例えば1か月後にあったら、じゃあこれくらいのペースで、ちょっとリラックスして気持ちを養ってからスケートの練習に挑もう、みたいなことをやれていたんですけど、今はその余裕もなく、次はこの演技の練習しなきゃ、次はこの演技をやらなきゃ、これを振り付けしなきゃ、といろいろ考えながら忙しい毎日を過ごしています。

Q、大会という決まった期日がない分、やれる分だけどんどん前に?

羽生さん
そうですね。あとは、競技の時代は、ざっくり言うと2つ、ショートプログラムとフリープログラムというものにフォーカスを当てて練習ができるんですけど、どんどんアイスショーをこなしていくことで、いろんな演目を練習しなきゃいけないので、そういう意味でも本当大変ですね。

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Q、プロ転向直後、不安でいっぱいだったかと思いますが、いまその気持ちに変化はありますか?という質問もいただいています。

羽生さん
気持ちの変化としては、よりいっそう自分の演技というものに責任感みたいなものを感じるようになりました。自分が滑ることによって、ちゃんと何かを届けられているのかな、とか、何かを感じていただけるような責任のある演技ができているかな、ということを自分に問うようにしています。

Q、今までは審査をされる競技としてのスケートから、自分が魅せる、お客さんを楽しませるスケートになったわけじゃないですか。「観客席を見た時の景色はどうですか」との質問をいただきました。

羽生さん
変わりはしましたね。やっぱり今まではどちらかというとジャッジ(審判)の方に表現していくというのが強かったんですけど、よりいっそう多くの方々から、フィギュアスケート独特の360度ずっと見られる、どこから見てもきれいだ、かっこいいんだ、と思ってもらえるようにということはすごく意識するようになりました。

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Q、アイスショー、プログラムをご自身で演出していますが、作る時にどういうふうに曲を選んでいますか?

羽生さん
これはちょっとシンガーさんみたいになっちゃうかもしれないんですけど、自分の中でいろんなテーマがあって、それがちゃんと起承転結がなされているかどうか。また、みなさんが見ている時に、どうしても僕がひとりで滑るときは、緊張したりとか応援したりとか息が詰まったりとか、そういうことがあるんですけど、なるべくみなさんがちゃんと息ができる場所があったりとか、集中できる場所があったりとか、そういうメリハリをちょっと考えて決めていますね。

Q、確かに、ずっと見ていたら呼吸を忘れることもありますけど、息をできる場所を作る時間も考えていると?

羽生さん
そうですね。フィギュアスケートという枠からちょっと変わるかもしれないんですけど、自分がライブを見ている時に、「こういうほうがいいよな」とか、「自分のライブだったらここで盛り上がっていけるな」とか、そういうことを考えながら作っていますね。

 

<「だんだん強くなる」東日本大震災とのかかわり>

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Q、羽生さんは震災12年のことし3月、被災地でのショーを行いました。「12年がたったことしの3月11日、あの場所で演じた今だからこそ感じる思いはありますか」という質問もありました。

羽生さん
僕自身、いろんな葛藤もありましたし、本当にこの場所で滑っていいのだろうか、と。自分が滑ることによって、スケートって娯楽ではあるので、自分が震災を経験したときに滑っていていいのかな、とか、(震災当時に思った)そういう気持ちをまた思い返しながら、みなさんにこれを届けていいのかな、本当にその責任があるのかな、ということを自問自答しながら滑らせていただきました。ただ、実感としては、みなさんに演技を届けていろんな思いをみなさんから自分自身も受け取っていました。また、そういう方々がいろんな活動をされているとか、そういうことを見聞きすると、やっぱりやってよかったのかな、という気持ちにはなっていますね。

Q、幾度となく宮城や震災復興への思いも語ってこられましたけれども、被災地への訪問をされてきて、競技生活に一段落ついて、自分で時間を使えるようになり、震災や被災地・東北との関わりや思いは変わらないのでしょうか?

羽生さん
変わらないというか、むしろだんだん強くなっていっていますね。僕自身が震災に遭ったときは、まだ10代で、自分がいろんなニュースだとかに触れていくたびに、どんどん震災ということの知識が増えていくからこそ、よりどういうふうに接したらいいのかわからなくなってしまうことがよくありました。ただ、自分がもっとこうしたらいいのかな、という深みはどんどん増えいっていると思いますし、わかっている今だからこそ、よりいっそういろんな活動をしていきたいな、という思いは強くなっています。

 

<4回転半ジャンプの挑戦は>

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Q、「4回転半ジャンプの練習はいまどうなっていますか?できていますか?」という質問もいただいています。

羽生さん
やれて、2週間に1回とかそんな感じですかね。けがのリスクがすごく大きくて、実際に北京オリンピックでも4回転半の練習をしている時にねんざをしてしまって、すごく苦しかった気持ちもあって。ただ、ずっとずっとプロになってから感じているように、自分が滑れなくなってしまうことが一番ファンの方々にとって一番つらいことだと思うので、なるべく足をけがしないように、ただ、その中で限界に挑戦し続けられるように、というバランスをいろいろ取りながら頑張っています。

Q、もし、われわれがいつか見られるとしたら、ショーの中で、ということになりますかね?

羽生さん
それか、ユーチューブで配信したりとか、そういった機会もまた考えたいなと思っていますね。

Q、それを聞いてちょっと安心しました。練習中に「あ、飛べた」と、誰もカメラを撮っていないのが一番怖いなと。

<セルフプロデュース 動画配信のこだわり>

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Q、動画の配信は1人でしているということで、「動画制作で苦労されていることはありますか?」との質問もありました。

羽生さん
自分が持っているプログラムの数、演目の数は、数がすごく限られていて、何回も何回も見ていただいているプログラムがあるからこそ、本当にこのプログラムでいいのかな、とか、逆に新しく自分で振り付けもするんですけど、これがちゃんとどういうふうに届くのかな、とか、いいプログラムになっているのかな、とか、すごく「大丈夫かな」と自信ない状態でやっていますかね(笑)

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Q、動画を拝見しましたが、私生活を載せるのではなく、やっぱりスケートにこだわる、というところは羽生さんの思いがこもっているところですか?

羽生さん
そうですね。やっぱり僕にとって、この動画のチャンネルは、自分が演技を見せる新しい場所、という感覚で捉えているので、なるべく演技は続けたいですね。

Q、テレビでは観客席の上にカメラを設置していることが多いので、上からの映像が多くなりますが、リンクの上に小型カメラを置いて滑っていますよね。あのアイデアは羽生さんご自身のものですか?

羽生さん
僕自身が実際にそれを見たら楽しいだろうなと最初に思ったんです。あとは自分だからこそ好きな所に置けたりとか、自分のチャンネルだからこそ見られる角度みたいなものを提供できたら、また羽生結弦のフィギュアスケートのおもしろさが出るかなと思ってやっていますね。

Q、実際に動画を見ると、音楽のリズムに氷の削る音が入っているなどして、これすごいな、テレビができないのは悔しいな、と思いながら見ています。
特に私が見ていて印象的だったのは、「サザンカ」(SEKAI NO OWARI)の音楽に乗せてこれまでの過去の映像と一緒に作っている映像がありますよね。ご自身の映像を使うことに葛藤は?

羽生さん
特に、事故があった時(※2014年11月、国際大会での本番直前の練習で他の出場選手と激突して頭や足をけがした)の映像も使っていて。ファンの方々にとってもあまり見返すこともない映像だったと思うんですけど、そういったことも全部乗り越えるんだ、こういうこともあったけどここまで来られたし、今がこれはこれで幸せじゃないか、みたいなところを含めて、映像もプログラムの一部として使いたいなと考えていましたね。

Q、ちなみにあの動画はどれくらい時間をかけて制作されたんですか?

羽生さん
あれは、30時間くらいで。

Q、30時間!!1日以上ですか・・・。

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※後編では、インタビューの続きとサプライズ満載のエンディングをお伝えします。
 後編はこちら、前編はこちら、岩野アナの番組の裏話はこちらから。


プロ転向後に勉強中のダンス披露