岩沼市が"ラーメン激戦区" その意外なワケとは

 仙台市の南に位置し、人口4万人余の岩沼市。
この都市が最近、“ラーメン激戦区”と呼ばれていることをご存じでしょうか。

「どうして岩沼でラーメンなんだろう」

“ラーメン好き”を公言する私。
気になって居ても立ってもいられず取材に出ました。
取材で判明した意外なワケとは。

(仙台放送局記者 内山太介)



【“ラーメン激戦区”に地元の人は…】

まずは、地元の人がどう受け止めているか聞いてみました。

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「岩沼じゃない友達も岩沼のラーメン食べに来たりしてるから、レベルは高い」

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「いろんな種類のラーメンがあって店が多い。地元民として大いに応援したい」

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「子どもがラーメン好きなのでいろんなところに連れていけるのでありがたい」

なるほど、地元としても地域にラーメン店が多いという認識はありそうです。


【市役所で分かった“激戦区”のワケ】

そこで市役所で話を聞いてみることにしました。

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岩沼市商工観光課 大友聖子さんと市のマスコットキャラクター「岩沼係長」

出迎えてくれたのは商工観光課の大友聖子さんと市のマスコットキャラクター「岩沼係長」。

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岩沼係長お気に入りの一杯

岩沼係長の手には「お気に入りの一杯」というラーメンどんぶりも。
どうして岩沼市は“ラーメン激戦区”なんですか?

岩沼市商工観光課の大友聖子さん
「岩沼では明治の頃から養豚が盛んに行われていました。そこで地域の食堂ではトンカツやホルモン料理を出すようになり、そのうち豚骨を使ったラーメンもメニューに加える店が出始めたそうですよ」

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岩沼市の昔の食肉処理場

岩沼市史によりますと、明治維新のころ、岩沼領主の家老を務めた伊東訥庵(とつあん)が「日本にも肉食を普及させて健康な国民をつくり、産業を振興させるのだ」と夢を抱き、豚の飼育を始めたのが岩沼の養豚の始まりということです。今は無くなりましたが、当時、岩沼市にあった食肉処理場は仙台市に次ぐにぎわいだったそうです。

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岩沼とんちゃん

食肉処理の過程で出た内臓や骨も大事に使おうと試行錯誤が続けられました。その結果、「岩沼とんちゃん」と呼ばれるホルモン料理や豚骨でスープをとるラーメンが広がったのではないかということです。

「激戦区」と呼ぶようになったのは、もう1つ理由があるそうです。

岩沼市商工観光課の大友聖子さん
「震災復興の工事関係者の方にたくさん来てもらったので、その人たちによくラーメンを食べてもらったことが考えられます。そうしたこともあって、市でも4年前からラーメン激戦区をアピールしています。今では岩沼で自分の力を試したいという人が増えてきたと感じています」

 確かに“ラーメン激戦区”と書かれたのぼりを市内のあちこちで見かけたような気が…。“激戦区”となった背景には、市のしたたかなPR戦略もあったようです。

 

【ラーメンマップを作成!店側は…】

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岩沼市によりますと、市内にはラーメンを出す店があるおよそ40あるということです。
そこで市役所は「ラーメン激戦区・岩沼」と題して、おととし、ラーメンマップを作成。ことし1月には内容を更新して第2弾を出しました。

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しょうゆや味噌、豚骨など、さまざまな味のラーメンを出す21の店舗が載っています。
およそ3万部を作成し、市役所や市内の公共施設、掲載されている飲食店などで無料で配布しています。

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“ラーメン激戦区”となった状況を店側はどう受け止めているのでしょうか。
5年前に出店した店舗を訪ねました。

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カモでだしをとったスープが特徴で、チャーシューのトッピングも人気です。
取材にお邪魔したこの日も学校帰りの高校生でいっぱいでした。

ライバルが増えて困っていませんか?

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菅野光太郎さん
「最近東京からもラーメン屋がどんどん来ているイメージがある。ほかのラーメン屋さんと切磋琢磨して岩沼市がさらに盛り上がるように頑張っていきたい」

競争相手にいい刺激をもらっているということでした。

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一方、こちらは観光名所「金蛇水神社」のカフェ。白蛇をモチーフにしたかわいいパンやラテなどカフェおなじみのメニューのなかに、ラーメンが1品だけありました。

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スープが澄んでいて、器だけでなく、麺やチャーシューなど全体的に白っぽい印象です。
神社ということで清浄な白をイメージしているということです。神社でおはらいした塩を少しかけて食べるそうです。

どうしてカフェでラーメンを出しているんですか?

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森屋誠さん
「ラーメン店が多いのでほかの店とは違った特色のラーメンを楽しんでほしくて考えました。ラーメンマップができてからは実際にラーメンを食べに来店するお客さんが増えていますよ」


【取材を終えて】

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岩沼市に取材に訪れたときもちょうどお昼時でしたが、ラーメン店の前に多くの人が列を作って並んでいたり、インタビューした市民の皆さんそれぞれにお気に入りの店があったりするなど、岩沼のラーメン熱の高さを感じました。

「山形市と新潟市がラーメン日本一で盛り上がっているようだが、ラーメンと言えば岩沼市と全国で知られるようにしっかりPRしていきたい」と意気込む岩沼市。

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マップ片手に私も実際に店に足を運び、岩沼のラーメンの奥深さを感じたいと思います。


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内山太介
1996年入局
一番好きなラーメンは新潟県の「長岡しょうが醤油ラーメン」
お腹が弱いのに背脂ラーメンの「背脂増盛」を食べて後悔したことも。