県内一のえのきたけの産地 加美町

冬の時期、鍋の時期に欠かせない食材と言えば「えのきたけ」。
宮城県の生産量は全国6位で、その中でほとんどを占めるのが加美町です。東北最大の工場にお邪魔し、製造工程をのぞいてきました。


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訪れたのはえのきたけの菌を植え付ける作業が行われている「培養センター」です。

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瓶に入れているのは「培地(ばいち)」と呼ばれる、畑でいう土に当たるもので、きのこの味や香りをよくするために、トウモロコシの芯を砕いたものや米ぬかを混ぜて入れています。

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そして、瓶の中に種菌を植え付け、
18日前後すると瓶の口が白い「菌糸」に覆われます。これで芽が出る前までの作業は完了です。

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培養センターでの作業が終わると、町内4か所にある栽培工場に瓶を移動してきのこを育てます。
工場は温度や湿度などの違いで工程ごとに部屋が分かれていて菌の繁殖が進むよう、湿度は98パーセントに設定されていました。
1分もたたないうちにカメラも曇ってしまいました。

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また室温を5度ほどと低く設定したこちらはえのきたけの成長を抑える「抑制」という作業を行う部屋です。1本1本の茎を太くし、高さをそろえています。

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栽培工場 我孫子弘美社長
「イメージはちょうど雪の下。風もなく光が少し当たってひんやりするイメージ」

温度や湿度以外、光や風など、細かい調整がえのきたけの生育のためには必要だということを学びました。

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工場に運び込まれて3週間程度でえのきたけは立派に成長します。特別に収穫体験をさせてもらいました。皆さんがえのきたけを収穫をする機会はあまりないと思いますが、コツは根元を持って前後に動かすと簡単にとれます。みずみずしく、ずっしりと重さも感じました。

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ところで加美町でいったいどうしてえのきたけ生産が盛んなのか。
えのき茸部会長の千葉昭俊さんによると、加美町では昭和30年代後半から冬の農閑期の収入源として栽培を始める人が多かったそうです。その後、町ぐるみで生産に取り組み、「きのこ王国構想」という動きも出始めました。
平成元年には当時、東北で唯一の「培養センター」が建設され、いまでは年間1200トン余りを生産する県内一の産地になりました。

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しかし、課題もありました。冬は鍋の具材としての需要が高まる一方で、夏は需要が激減し生産量を半分にしているのです。家族が生産者という加美町の近田沙也可さんに年間を通じて味わえるえのきたけ料理を教えていただきました。

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えのきたけを細かく刻んでひき肉に混ぜ込んだ「ハンバーグ」や「しゅうまい」豆腐の代わりにえのきを使った「マーボーえのき」、「えのきのオイルづけ」など、
鍋以外の用途はこんなにたくさんあります。

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近田沙也可さん
「ヘルシーだし、いろんな料理で年中えのきたけを味わってほしい」


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きのこに花言葉があることを皆さんご存じでしたか?えのきたけには「協力、共存共栄」という意味があるそうです。
生産者の方も、「加美町の町民みんなで力を合わせて生産に取り組み、共存共栄できるよう頑張りたい」と話してくれました。

【取材:佐々木成美】

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