イチオシ!"仙台で300年 伝統の堤人形"

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鮮やかな着物を着た女性に、縁起物の「鯉の滝登り」。
これらは、仙台市青葉区堤町で生まれた「堤人形」です。
300年の歴史があり、県の伝統的工芸品にも指定されています。

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取材で訪れた11月は、来年の干支、うさぎの人形が制作の最盛期を迎えていました。
力強い波に乗るうさぎが表すのは「繁栄」と「飛躍」。
この日も、毎年干支の人形を買いに来るという人が訪れていました。
「家に置くようになってからいいことが続いている気がする」と笑顔で購入していく姿が印象的でした。

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堤人形を作っているのは4代目店主、佐藤明彦さん。

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堤人形の製作工程を見せていただきました。
まずは人形の形をつくる「型抜き」。型は石膏で佐藤さんが手作りしたもので、大きいものだと10キロほどの重さがあります。鯛のうろこや、ねこの鼻穴、細部まではっきりとかたどられます。

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そして、粘土を焼き上げたものに絵付けしていきます。
佐藤さんが真っ白な猫に描いたのは「桜」の模様。迷いなく次々と模様を仕上げていく様子はまさに職人技です。

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300年の歴史がある堤人形はどのようにして誕生したのか。堤町を訪ねました。
かつては焼き物の町と言われ、昔使われていた「登り窯」が今も残っていました。
江戸時代、仙台城下の一番北に住んでいたのが、敵からの警備を担う足軽武士。周辺では良質な粘土がとれたこともあり、内職として焼き物をさかんにつくっていました。

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水がめや、みそなどを保管するつぼ。

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それに冷えたご飯をあたためるためにご飯を入れてお湯を切れるよう、そこに小さな穴が開いているつぼです。生活の知恵が詰まったものばかりで、当時、焼き物は生活に欠かせないものでした。

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焼き物は足軽武士の家計の助けにもなり、冬になると土が凍って作業ができなくなるため、代わりに人形の絵付けを行ったそうです。それが「堤人形」の誕生です。
子供のおもちゃとしてだけでなく、歌舞伎などをなかなか見に行けない人も、代わりに堤人形でその舞台の華やかさを想像したりもしたそうです。

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しかし、時代の流れとともに作り手は減少しています。今、堤人形を作っている人は佐藤さんを含めて2軒だけです。佐藤さんは堤人形を多くの人に注目してもらおうと作ったのが、きらきらとした装飾が施された人形や、まるで現代アートのような人形。若者を意識したデザインです。

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佐藤さんのユニークな発想に惹かれた、仙台市のそば店には「だるま型のつまようじ入れ」が置かれています。新たなデザインに新たな形、堤人形に新たな風を吹き込んでいます。

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「目を引くデザインの人形が、堤人形を知るきっかけになってくれたら」と佐藤さん。
新たな魅力を生みながら、伝統を守り続けようとしています。

【取材:佐々木成美キャスター】

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