宮城が日本初!でも「バスをJRが自動で」って何?解説します

JR気仙沼線では、「BRT」と呼ばれるバスを使った輸送を行っていて、一部の区間では、12月5日から全国で初めて自動運転が始まります。
自動運転を行う背景や課題について、取材した小舟祐輔記者が解説します。

 

【①自動運転する「BRT」って?】

<Q>
自動運転を始めるということですが、そもそも「BRT」とは何ですか?

<小舟記者>
「Bus=バス」の「B」、「Rapid=速い」の「R」、それに「Transit=輸送」の「T」と、それぞれの頭文字をとったことばで、「バス高速輸送システム」とも言われています。
今回のBRTの運行区間では、かつて鉄道が走っていましたが、東日本大震災の津波で、壊滅的な被害を受けました。もう一度、鉄道を走らせるためには、お金も時間も必要なため、少しでも早く地域の足を復活させようと、BRTでの運行となりました。線路があった場所に専用の道路を作るなどして、震災のよくとし、2012年から運行を始めています。

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【②なぜ自動運転に?】

<Q>
そのBRTで、どうして自動運転をすることになったのでしょうか?

<小舟記者>
バスの運転手のなり手が、これから減ってしまうのではないかという危機感が背景にあります。
日本では「少子高齢化」が急速に進んでいて、働く人の数も減っていくことが懸念されています。運転手のなり手が減れば、必要な運行もできなくなってしまいます。
このためJR東日本は、4年前の2018年度から、自動運転の実験を行ってきました。その結果、事故を防ぐ「安全」と、計画どおり運行できる「安定」の両方を確認できたため、12月5日から運行を始めることにしたんです。ただ、いまの段階では、あくまで運転手が主体で、自動運転のシステムは補助的な役割を果たすため、完全な自動運転とはならず、当面は運転手が乗って運行します。

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【③自動運転はどこ走る?】

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<Q>
自動運転のBRTに乗ってみたいのですが、どこを運行するのでしょうか?

<小舟記者>
今回、自動運転となるコースは、気仙沼線でBRTが運行している区間のうち、柳津駅と(やないづ)と陸前横山駅(りくざんよこやま)の間のひと駅分で、およそ4.8キロあります。
この区間はBRTしか走らない専用道で、自動運転のために、道路に特殊な磁石が埋め込まれています。バスが磁力を感知することで、磁石をなぞるようにしてバスが自動で走ります。
ただ、運転手は乗ったままですし、自動運転になるからといって乗り換えも必要ないので、普通に乗っていたら気づかないかもしれません。

 

【④今後の課題は?】

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<Q>
BRTの自動運転は日本で初めてということですが、どんな課題がありますか?

<小舟記者>
一番は利用者の確保です。通勤や通学で使う人は多いとは言えませんし、自動運転になる区間の、ひとつ南側の区間では、鉄道が、2021年度は2億円あまりの赤字でした。1日あたりの利用者も206人と、民営化した1987年度の6分の1に落ち込んでいます。
BRTは、沿岸部の住民にとっては欠かせない地域の足ですが、維持には一定の利益が必要です。日常的な利用に加えて「日本初」という要素を生かして観光客を呼び込むなど、住民と自治体、そしてJRが連携して、利用者の確保に取り組む必要があります。

 


kobune_221130.jpg仙台放送局記者
小舟祐輔

2021年入局 主に宮城県政・仙台市政を担当
学生時代は空港バスでアルバイトをし、荷物の積み卸しを経験
「日本初」のBRT自動運転に試乗して、バス好きの務めを果たした