子育て支援のポイント「環境作り」と「寄り添うこと」
1.15。ことし6月に公表された宮城県の出生率です。
3年連続で過去最低を更新していて、全国でも東京に次いで2番目に低い数字になっています。原因はさまざまありますが、こうした状況の中、出産を希望する人たちのために安心して子どもを育てる環境をつくるため、各自治体ではさまざまな取り組みを始めています。
キーワードは「環境作りと」と「寄り添うこと」です。
【自宅にも来てくれる助産師】
仙台市は、10月1日から新たな子育て支援策をスタートさせました。
出産後の育児に不安を抱える人などを対象に、これまで助産院などで相談を受け付けるサービスに加えて、助産師が自宅にも訪問して有料でケアを行う取り組みです。
利用を始めた仙台市の20代の母親です。出身は山形県で、夫の仕事の都合で、夫と子どもとともに3人で仙台市で暮らしています。このため、周囲に相談できる人が少ないといいます。
母親 「コロナ禍なので、全然ママ友ができないし第一子ということもあって分からないこともあるので、突然寂しくなったり心細くなったりします」 |
【相談だけでなく、「休息も」】
この日女性は、2時間にわたって助産師に子育ての悩みの相談やマッサージなどをしてくれるサービスを助産院で受け、7か月の子どもの離乳食について相談しました。
母親 「量は多いと思いますか?」 |
助産師 「育児書とかには何グラムって書いてあるけれど、あれは目安なので食べられそうだったら食べてもいいですよ」 |
助産師からのアドバイスに、母親はほっとした表情に。
母親はインターネットで調べることもあるそうですが、情報の正確性などに戸惑うこともあるといいます。
助産師は寄り添いながら悩みを解消していきます。
助産師 早坂ひかりさん 「ほとんどの母親が、自分の子どもが順調に育っているのかと不安を持っている。気持ちを聞いてあげてゆったり話が自由にできるように関わっています。気軽に育児のサポートを受けられる、この訪問型の産後ケアが助産師を身近に感じられることにつながればうれしい」 |
この取り組みは宮城県助産師会の委託で行われ、2つのサービスがあります。
ひとつは、2時間の「相談型」。料金は2000円です。
(※市民税非課税世帯と生活保護世帯は1000円)
もう一つが、寝不足や疲れに悩む母親がまとまった休息をとれるように4時間にわたって助産師が子どもの世話をする「リフレッシュ型」。料金は3800円です。
(※市民税非課税世帯と生活保護世帯は1900円)
1日に2つのサービスを併用することはできず、利用回数は7回が上限です。
仙台市子供家庭保健課 庄子希恵課長 「お子さんを産むにあたっては、もちろん産後のことだけではなくて、お金も含めたいろいろなサポートが必要だと思います。少なくとも仙台市では、子どもを産んだあとは安心してサポートが受けられる、まずはそこのところを充実させていこうと考えています。どうしようもなくなる前に、ちょっとつらくなった時にぜひ相談していただきたい」 |
仙台市が、この秋からスタートさせる取り組みとして、新生児を対象に3万円相当のカタログギフトの贈呈があります。育児用品や食品などの地場産品のほか、子育て家庭に役立つサービスが利用できる予定で準備を進めています。
【“ベビーファースト宣言”利府町は?】
一方、人口が約3万6000人の利府町。
子育て世代が子どもを産み育てたくなる社会の実現をめざし、日本青年会議所が2021年から提唱する「ベビーファースト運動」に宮城県内の市町村で初めて参画を宣言しました。
町では、保育士や栄養士などが常駐し、親子で無料で遊べる広場が6か所あります。利用する保護者からも好評です。
母親 「ここで同じような年ごろの子どもを持つ親と出会えるので、交流の場ができてありがたい」 |
町ではさまざまな支援策を打ち出しています。
子育てに必要なベビーベッド、ベビーバス、ベビーシートの無償貸出や小学校と中学校の新1年生全員に学校で使う運動着を無料支給。
また、誕生を祝うため、おむつなどの育児支援品か、体重や誕生日などが記載された世界でひとつだけの絵本を贈呈、今年度は新生児1人につき3万円の支給を行うなど幅広い支援となっています。
利府町によりますと、去年の町の出生率は前の年に比べて上昇し、推定値で1.33。
県全体の1.15を上回っています。町では今後も支援を強化したいとしています。
利府町 熊谷大町長 「子育てを負担に思うことがないよう、環境をしっかり整備し、サービスが充実するよう取り組んでいる。町として、子どもたちの笑顔があふれる環境づくりを推進していく。子どもが育てやすいということは未来がうまくまわっていくことの証左だと思う。今後は給食費無償化を始め、それぞれの子ども・親御さんのライフステージ合わせた支援を段階的に充実させた形で取り組みたい」 |
今回取材したなかで印象的だったのは「自分のなかで不安だったり悩んでいたりしたことを聞いてもらっただけで気持ちが楽になった」という親たちのことばです。
子どもを育てるうえで、経済的な支援や環境の整備は、もちろん大事ですが、コロナ禍で交流の場が減ってきた今、改めて“寄り添う”ことの大切さを感じました。
仙台放送局記者・井手上洋子
ネットワーク報道部局、首都圏局などでデジタル中心に記事を発信。
2022年8月から市政担当