イチオシ!"生"で味わう亘理のアセロラ

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真っ赤に輝く旬の果物…さくらんぼ?いえ、亘理町産のアセロラです。
アセロラは傷みやすいため市場に流通することはあまりなく、ほとんどが加工用にまわります。しかし亘理町は全国で数少ない産地。生のまま味わえると聞いて取材に伺いました!

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生産しているのは伊藤正雄さんとあけみさん。笑顔が素敵なご夫婦です。
アセロラは1年で何度も収穫でき、年に3回実がなる亘理町では今が最初の最盛期でした。

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初めてアセロラを生でいただくと「甘酸っぱい!」
伊藤さんによると、ビタミンCはレモンの30倍以上も含まれていて、1粒から2粒で1日に必要なビタミンCがとれるそうです。味わいは「レモンよりも酸味がおだやかで、さわやかな香りがする」果物でした。

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中南米原産のアセロラは夏は涼しく冬は暖かい気候で育ち、日本では沖縄や鹿児島で作られています。伊藤さんは“夏は浜風が吹き冬は雪が少ない”亘理町の気候がおいしいアセロラを育んでいるといいます。
町で農家を続けてきた伊藤さんがアセロラと出会ったのは28年前。ブラジルを訪れた親戚が苗を持ち帰り、育て始めたのがきっかけでした。次第に仲間も増え、町内の農家3軒で6トンほどを出荷するようになりました。

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そんな中11年前に東日本大震災が発生。アセロラの農業用ハウスに津波が押し寄せ、ほとんどの木が枯れてしまったのです。しかしその3か月後、伊藤さんが目にしたのは、津波をかぶった木から咲いた“花”。アセロラは生きていました。
「生き返ったと同じなんですよ、元に戻ると思わせてくれるような、我々の復興の先導役でした。」優しい表情で話す伊藤さんがとても印象的でした。

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ほかの農家は津波で栽培をやめたことで、町でアセロラを生産する人は伊藤さんだけになりましたが、3年かけて復旧し出荷量は震災前の3分の2にまで回復しました。
亘理町の市場には、その貴重なアセロラを買い求めようと町外からお客さんが訪れています。東京都内の高級食材を扱うスーパーでも販売されていて、その珍しさからすぐに完売してしまうほどです。

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伊藤さんは「亘理にはりんご・いちご・アセロラと3つの赤い果物があると思っているから、町の活性化の1つになるようやっていきたい。体が動けるうちは続けていきたいです」と話していました。
アセロラに惹かれた伊藤さん、亘理の気候、津波をかぶっても生きたアセロラ…。さまざまな奇跡が重なって今があるのだと実感しました。これからも栄養たっぷりの赤い宝石が伊藤さんの手で守られ続けますように。
伊藤正雄さん、あけみさん、取材にご協力いただいたみなさん、ありがとうございました!

【取材:岩間 瞳】