白熱する正捕手争い ~プロ野球・楽天 ベテラン炭谷に挑む太田・安田の若手捕手たち~
(1軍で繰り広げられる正捕手争い)
10年ぶりのパ・リーグ制覇、日本一を目指すプロ野球・楽天イーグルス。
キャンプからポジション争いが白熱しているのが、守備の要=正捕手のポジションだ。
昨シーズン、楽天の捕手陣は移籍2年目のベテラン・炭谷選手が98試合出場とチーム最多。
しかし、今年はキャンプから、若手たちが万全の状態で熱烈アピールを続ける。
チームの心臓部ともいえる正捕手争いに、今回はフォーカスする。
正捕手争い①太田光選手(5年目)
(太田選手)
正捕手候補の一人が、大卒5年目の太田光(ひかる)選手。
昨シーズンは左肩脱臼の手術の影響で開幕に出遅れた中、
“今年こそは”とキャンプからアピールする。
太田選手の武器はなんといっても強肩を活かした守備力。
プロ2年目には、盗塁阻止率リーグ1位(2020年 .333)を誇った。
去年は怪我で出遅れた影響でランキングには入らなかったものの、
おととしもリーグ3位(2021年 .379)と、大きな信頼を得てきた。
太田選手自身も、
「全試合出場を目指す。しっかりチームを引っ張る活躍もみせたい」と意気込む。
一方で長年の課題となっているのが「打撃面」。
プロ入り後の4年間、打率2割前後が続いてきた。
苦しむ打撃の改善を目指し、
ことしは「タイミングの取り方」を大きく変えようとしている。
(打撃練習をする太田選手)
太田選手は、狙いについて、
「今はポイントを引き付け、体の近くで打つことを意識している。
昨季はパ・リーグの投手に多い“速い球”に対応しようとバットの振り出しが早くなり、
ボールを見る時間、つまりバットをコントロールする余裕がなくて空振りが増えた。
振り出しを遅くして、より身体の近くまでボールを呼び込むことで芯で捉える確率を高めたい」と語った。
(太田選手のフォーム 左:昨季 右:今季のキャンプ ※身体の動き出しを合わせて比較※)
キャンプ中の打撃練習でも、
自らの打撃をスマートフォンで撮影して確認したり、
コーチと頻繁に言葉を交わしたりしながら、試行錯誤を重ねていた。
(スマートフォンでフォームを確認する太田選手)
「しっかり捉えられた時は、今までよりも分厚い打球がいっている。
ずっと打率2割8分は目標にしているので、今年こそそれをクリアできるようにやっていきたい」
波の少ない打撃で、正捕手へと突き進む。
正捕手争い② 安田 悠馬選手(2年目)
もう一人、悔しさを胸に今季に挑むのが、
プロ2年目の22歳、安田悠馬選手だ。
(安田選手)
このキャンプでは節分のイベントも盛り上げ、ムードメーカーとしての役割も担った。
(鬼役にふんした安田選手)
去年ドラフト2位のルーキーとして、球団の新人初となる開幕戦での先発マスクに抜てき。
また、自慢のパワーを活かした長打力も発揮し、
昨シーズンの12球団の新人で最も早くホームランを放つなど、
貴重な「打てる捕手」としての片りんを見せた。
しかし、そこからは思い通りにいかなかった。
開幕直後に新型コロナウイルスの感染で離脱すると、
1軍復帰を目指すファームの試合で左手の指を骨折。
結局、1年目は5試合の出場にとどまった。
安田選手自身も、
「本当に何もできず1年目は終わってしまった。
2年目ではあるけど、1からという気持ちでやっていきたい」と決意を口にする。
自主トレーニングでは、
同じ左打者のホークス・柳田悠岐選手とともに徹底して打ち込む一方、
元・広島カープの名捕手・達川光男さんにも送球や捕球について指導を受けた。
(達川さんに指導を受ける安田選手)
どんな球にも対応できる捕球姿勢や、
安定したスローイングに繋がる送球の体勢などのアドバイスを受けるなど、
正捕手の座を勝ち取るために「守備面」のレベルアップにも余念がない。
安田選手は、
「守備面は、送球やキャッチング、ワンバウンドの捕球など全てがまだまだ未熟。
人に教わったことを自分の中で吸収できるようにしたい」と、強い覚悟がにじむ。
2年連続の開幕での先発マスクへ向け、進化を求める。
白熱する正捕手争いの行方は
紹介した2人の他、ベテランの炭谷選手、1軍キャンプ抜てきの8年目・堀内謙伍選手を含めた正捕手争いは、キャンプを終えて練習試合やオープン戦などの実戦の場に移っていく。
キャンプ終盤の実践では、
太田選手が対外試合で2点タイムリーツーベースを放って、打撃でアピール。
安田選手がシート打撃で、昨季21盗塁の小深田選手の二盗を刺した。
しかし、ベテランの炭谷選手も、
「全くポジションを譲る気はない。出たい気持ちがなくなったら選手として終わり」と語り、
練習後に自ら打ち込みに取り組むなど、若手たちの挑戦にも立ち向かう構えだ。
( 炭谷選手)
白熱する正捕手争いに、開幕前から目が離せない。
(NHK仙台アナウンサー・黒住駿)