特殊詐欺被害急増 警戒を

あとをたたない特殊詐欺の被害。先月末までに県内で起きた特殊詐欺の被害額はおよそ3億7,700万円。ここ3年でことしが最も多くなっています。新型コロナウイルスの感染拡大で帰省を控える傾向が続き、警察は家族を装った特殊詐欺が増えるおそれがあると警戒を強めています。どうしてだまされてしまうのか。被害者側の心理をまじえて、警察担当の栗岡希記者が詳しくお伝えします。

【Q】ことしは特殊詐欺の被害が増えているということでしたが、実際にはどれくらい増えているのですか?

【栗岡記者】去年まで被害額・件数ともに減る傾向にありました。しかし、ことしは11月末時点ですでに件数が前年より73件、被害額は1億2000万円余り上回っています。直近3年間で見ても件数・被害額ともにことしが最も多く、再び増加傾向にあります。

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【Q】被害者はどういった手口で被害に遭っているのでしょうか?

【栗岡記者】主な手口を見てみますと、家族などをかたって現金をだまし取る『オレオレ詐欺』と『架空料金請求詐欺』、そして「保険料の還付金がある」などとうそを言って現金をだまし取る『還付金詐欺』。これらの件数・被害額が前年より増えています。

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このなかでことし急増しているのが『還付金詐欺』ということなんですが具体的なケースを見てみます。

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今月、仙台市内の60代の女性の自宅に市役所の職員を装った男からかかってきた電話。

「介護保険の関係で以前に通知を出しているのですが届け出を受けていなかったので3万7200円をお返しします。銀行に電話をさせて、手続きを進めます」と言われました。

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信じた女性は、男に携帯電話の番号を教え近くのATMに行きます。

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すると銀行員を名乗る男から携帯電話に連絡が入り、その指示通りにATMを操作しました。

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さらに、女性は男の指示で別の2か所のATMに行き、還付金を受け取るつもりが逆に合計でおよそ210万円を振り込んでしまいます。

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その後、女性がこのことを家族に伝えたことで、初めて還付金詐欺の被害に気づいたということです。

【Q】多くの方が自分はだまされないと思っているが、それでもだまされてしまう。いったいどうしてなのでしょうか?

【栗岡記者】その点について犯罪心理学が専門の東北大学の荒井崇史准教授に聞きました。

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「心理学でよくいわれるのですが、人間は一貫性を求めるような心理の傾向があって、かかってきた電話を一度信じてしまうと、それがずっと続いていくわけです。途中でおかしいぞと思っても、前に信じてしまった自分を否定することは難しいので、そのまま止まれずにいってしまう。被害者が一度振り込もうと思ってしまうと、後戻りできなくなってしまいます」

【Q】”1度、信じてしまった自分を否定したくない”という心理が働くことはわかりました。

では、具体的にどうしたら被害に遭わずにすむのでしょうか?

【栗岡記者】荒井准教授は被害予防のために3つのポイントをあげています。

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「帰省しないから会わないのではなく動画で顔を見ながら話すのが重要。近況を伝え合うだけで例えば加害者がしかけてくる架空のストーリーがおかしいぞということに気づけることもある。まずはコミュニケーションをとることが重要だ」

これから年末年始を迎え、帰省を控える傾向が続き家族を装った手口などが増えるおそれがあります。特殊詐欺は決してひと事ではありません。十分に警戒をして、新しい年を穏やかに迎えてほしいと思います。

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 栗岡 希
 (令和3年入局)
   警察取材を担当