【新型コロナ「5類」に】②"我慢"のときを越えて~「再開」と「備え」

新型コロナの感染症法上の位置づけが、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行しました。高齢者施設や保育の現場では、これまで中断していた直接の面会や、マスクなしでのコミュニケーションを再開する動きが出ています。一方で、専門家などは、感染対策を継続し、次の流行に備えるよう呼びかけています。

 5月8日放送「てれまさ」より

 5月9日放送「てれまさ」より

 

【おばあちゃんと手を取り合って】

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宮城県利府町の介護老人保健施設「加瀬ウェルネスタウン」では、新型コロナの感染拡大以降、入所者と家族との直接の面会を中止し、事前に予約した人に限り、ガラスを隔てた形での面会を認めてきました。

「5類」移行後は、マスク着用や消毒などの対策を徹底した上で、以前と同じように、入所者の個室で直接、面会できるようにし、早速、家族が相次いで訪れています。

夫と、生後半年の赤ちゃんとともに祖母に会いに来た40代の女性は、「これまで長かったね」と涙を流しながら、手を取り合って再会を喜びました。

(祖母と面会した女性)
「ずっと直接会うことができなかったので、部屋に入った瞬間からもうボロボロ泣いてしまいました。祖母の手を握れたことがとてもうれしかったです。半年前に生まれたひ孫の顔もようやく見せることができ、『かわいい』と言ってもらいました」

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この施設では、これまで中止していた、併設する保育園の子どもたちとの交流も3年ぶりに再開し、5月8日には、デイケアの利用者が子どもたちと一緒に歌ったり、じゃんけんをしたりして、顔をほころばせていました。

(子どもたちと交流した87歳女性)
「これまで寂しかったですが、きょうはとても楽しかったです。子どもたちと接していると若返ります」

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(施設を運営 医療法人社団「喜英会」の髙橋恒夫会長)
「入所されている皆さんと子どもや孫が会って話すのはとても大切なことです。これまで悲しく苦しい思いをさせてきたので、とてもうれしいです。お年寄りが感染しないよう、今後も一層、緊張感をもって運営にあたります」

 

【マスク外してのびのびと】

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仙台市内の認定こども園では、室内でマスクを外して遊ぶ子どもの姿が見られるようになりました。幼稚園や保育所でも、これまで、マスク着用が求められる期間が長く続いていましたが、仙台市青葉区にある「落合はぐくみこども園」では、ことし3月からマスクの着用は「個人の判断」としています。

「5類」への移行を受けて、仙台市の郡和子市長は、5月10日、この認定こども園を視察し、2歳児がいる部屋で、マスクを外して遊ぶ子どもたちに話しかけていました。このあと交流した保育士からは、「マスクを外すことで子どもたちの表情が分かるようになり、成長を感じられる」とか、「人数に制限があった運動会などのイベントで制限がなくなり、うれしい」といった声があがっていました。

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(仙台市 郡和子市長)
「子どもたちの元気な声が園内に響き、5類に変わったことで、子どもがのびのびと育つ環境が戻ってくることをうれしく思いました」

 

【病院も面会再開 医療機関の連携強化も】

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仙台市青葉区にある「東北大学病院」では、これまで原則禁止していた面会を、入院患者1人につき2人まで、1日1回、15分以内などの条件つきで再開しました。

このほか、▼入院前に一律に行ってきた新型コロナのPCR検査を取りやめ、▼1日あたり最大で30人以上の患者を受け入れてきた専用の病床も解除したということです。

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(東北大学病院 張替秀郎病院長)
「比較的、重症化せず、入院患者も減って落ち着いてきている。これからは特殊な感染症ではなく、季節性インフルエンザのように通常の診療を行う感染症の1つとして対応していく」

その上で、再び感染が広がった場合への備えを進めることにしています。新型コロナの入院患者は今後、一般病棟の個室で受け入れますが、感染が拡大し重症患者が増えた場合は、改めて専用病床を設けることも想定されるということです。

宮城県内でも新型コロナの入院患者の受け入れや外来診療を行う医療機関が増える見込みで、入院の調整は原則として医療機関どうしで行うことになるため、東北大学病院は、各医療機関と連携を強化して対応していきたいとしています。

(東北大学病院 張替秀郎病院長)
「この3年間でさまざまな経験をしてきたので、状況が変わったときにも柔軟に対応していきたい。県内の各病院とも定期的に会議を開くなどして連携を図り、互いの状況を見ながら足りないところを補って、感染した人が困らない体制を作っていきたい」

 

【知事“症状出れば適切に対処を”】

元の生活を取り戻す動きがある一方で、再びの感染拡大も心配されています。宮城県の村井知事は、「恐ろしいウイルスであることは間違いない」として、適切に対処するよう呼びかけています。

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(宮城県 村井知事)5月8日の定例記者会見
「今回の感染症は見えないウイルスが敵であり、どこがピークでどこで終わるのか全く見通せず、非常に不安な日々を過ごした。県民や医療機関の協力もあり、被害は最小限に抑えられたのではないか」

「これでコロナウイルスが絶滅したわけではない。恐ろしいウイルスであることは間違いないと思うので、自身で安易な判断をせず、症状が出たときにはすぐに検査をした上で、療養するようにしてほしい」

 

【専門家「重症化する人をいかに守るか」】

感染症に詳しい東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は、高齢者や基礎疾患のある人など重症化リスクのある人たちをいかに守っていくか、社会全体で意識を向ける必要があると指摘しています。

賀来特任教授は、この時期に5類に移行したことについて、「多くの人がワクチン接種を受け、ウイルスもオミクロン株に変わり、若い人を中心に重症化が少なくなってきたことが背景にある」とした上で、次のように指摘します。

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(東北医科薬科大学 賀来満夫特任教授)
「新型コロナがゼロになったわけではない。人々が自由に動き、マスクも自主判断になるなど、感染が広がるリスクもある。大きな流行の第9波が起きるおそれもあり、注意が必要だ。

新型コロナの診療にあたる医療機関が増え、一人ひとりの判断で行動できるようになるのはメリットだが、感染した場合にどう行動するか、判断に困って混乱することも考えられる。検査や治療の費用負担が生じることも懸念材料と言える。

この中で、重症化しやすいお年寄りや持病がある人を社会でどのように守っていくか、真剣に考えていく必要がある

感染を防ぐ対策としては、
 ▼密閉、密集、密接のいわゆる「3密」の環境を避ける
 ▼人と会話したり食事をする時はマスクを着ける
 ▼人が集まる場合は長時間にならないよう注意する
これまで身につけてきたこうした点を引き続き実践するのが効果的としています。

さらに、医療体制について、次のように訴えています。

(東北医科薬科大学 賀来満夫特任教授)
「重症化しやすい高齢者や持病がある患者が入院する施設をしっかり確保しなければならない。そのためにも、軽症の人はほかの医療機関が診るなど、地域の中で役割分担を進める必要がある。さらに、高齢者施設などで集団感染が起きた場合、ほかの医療機関が感染対策や治療面で支援する総合的な医療体制を構築することが大切だ」

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