仙台は"リゾート地"? 仙台財界新トップ その真意は

「仙台」という街、どんなイメージがありますか。
杜の都、牛タン、学生の街…

“仙台を日本一のリゾート地にしたい”
そう語るのは、今月、仙台商工会議所の第25代会頭に就任した藤崎三郎助さんです。

仙台=リゾート地?
その真意、新会頭に直撃しました。

(聞き手:仙台局記者 伊藤奨)


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【記者】 新会頭に就任した今の気持ちを聞かせてください。

【藤崎氏】 11月1日の仙台商工会議所の臨時議員総会で満場一致で認めていただきました。それを経て就任し、議員が140人、会員企業は個人含めて全部で9500の団体の長をやらせていただくわけですので、極めて重く受けとめています。いろいろな経済状況を考えますと、大変な時期であることは間違いないんですけれども、その中で責任の重大さということも十分に認識して務めていきたいと思っております。

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【記者】 仙台商工会議所のトップは最近3代続けて七十七銀行の出身者が務めています。小売業出身の会頭就任は27年ぶりです。どのように受け止めていますか。

【藤崎氏】 私の仕事がどうのということよりも、商工会議所の会頭というのは、横のつながりを使って地域をどうやったら元気にし、皆さんがちゃんとした仕事をさらに発展させていくことができるのかということを突き詰めていくのが本当の仕事だろうと思っています。ですから、金融関係出身者と小売業出身者とで考えた場合、外からごらんになったら違うというイメージになるのかもしれませんけど、私は根本的には全然変わってないと思います。震災からの復興や、観光客等を呼び寄せることによって地域を活性化させていきます。要するに顧客が喜んで下さることでなければお金は入ってこないという商売の基本は共通しているということだと思っています。

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【記者】 地域経済の現状や課題についてどう考えていますか。

【藤崎氏】 3年前からの新型コロナウイルスの感染拡大で、社会生活そのものが非常に変化を余儀なくされてしまったということだけは間違いないと思います。いろいろな業種で今までとは違った形での対応を迫られています。私は小売業なんですけれども、一言で言えばお客様がなかなか出てこられない状況になる。ですから、たとえば小売りの業態が通信販売であるとか、eコマース(=ネットショッピング)であるとか、DX(=デジタル技術を活用した業務変革)も含めて、そうした方向に動いています。また、特に飲食業関係への影響というのは、本当に計り知れないものがあったんだろうなと思います。そういう方々がこの3年間で、根本的な意味での商売というものを考えなければならなくなってしまったということについては、大いに憂慮する状況です。
ですからある程度、新型コロナの影響が収まるめどがついたときに、消費マインドが冷え込んでいるということに対して、どのようなプロモーションができるのかというのを新たに考えていかないとダメですし、そう簡単にできる事柄でもありません。そうしたことが今後の我々としては取り組む一番重要な課題になるのかなと思います。

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【記者】 ロシアによるウクライナ侵攻や円安の影響で物価上昇が続いています。
地域経済への影響はどのように考えていますか。

【藤崎氏】 物価高の理由の1つは原材料価格が上がっていること。もう1つは、特にアメリカを中心とする為替レートの変動、貨幣価値の変動で円安になっていることがあって、それによって輸入品がすべて上がっています。今後さらに日本国内の流通で物価上昇につながる要因というのは必ず出てきます。やはり輸入が関係する、電気などのエネルギー関係の価格はどうしても上がらざるを得ない。今後も物価がそう簡単に下がってくるということについては期待薄です。ですからそれに対応した形での経済を新たにつくり上げていくか、そっちの方向に耐えられるような形でもっていかないとダメだということは間違いないと思います。

【記者】 地域経済をどのように盛り上げていきたいと考えていますか。

【藤崎氏】 仙台市の放射光施設「ナノテラス」をはじめとした、新しい材料もありますので、いろんな形で地方を盛り上げていきたいです。例えば商工会議所がいままで主導してきたものでは、仙台の七夕まつりなど東北の6大祭りがあります。そういった観光やイベントを通じて、仙台市や宮城県、東北の集客を強力に推し進めたい。人が集まればいろいろな波及効果が出てきます。まず新型コロナの影響で集まるのをやめようというマインドをなくすような方策をぜひ考えていきたいと思います。

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【記者】 ずばり仙台経済活性化のキーワードは。

【藤崎氏】 「仙台を日本一のリゾート地に」です。
実は先代の藤崎三郎助、私の父は30年ぐらい前に亡くなったんですが、それまでにいろいろな話をしました。父は「俺はどうせ長生きしないから、お前がそれなりのいろんな立場になったらぜひ考えてほしいことが1つだけある。それは何かというと、『リゾート』という言葉がある。リゾートというと風光明美で温泉があって、要するに過ごしやすい環境で、どちらかというと自然環境をすごい重要視した感じのリゾートっていうのが日本ではどうもイメージ的に強い」と。で、うちの父がよく言っていたのは、私も全くそうだなと思っていますが、「リゾートというのは都市機能が一番重要である」と。生活しやすいまちとか、生活しやすい環境であるとかということです。それを考えたときに仙台というのは、いわゆる重厚長大産業がなく、まず空気がきれい。環境がいいです。それから港湾があって空港があって新幹線が来ていて高速道路が2本来ている。冬になったら街なかはちょうど雪は降らないけれども、周りに行けばスキー場もあるし、夏だったり秋だったりすればゴルフができる。海水浴もできる。なんと言っても一番いいのは、100万都市の仙台というすばらしいバックボーンがある。これを言わずしてリゾートという言葉は生まれてこない、というのがうちの父の持論でした。

要するにリゾートは風光明美で温泉があればいいということではなくて、都市の機能が非常に重要だと考えるわけです。ですから将来的に居住したいとかそれから移り住みたいとか、そういう気持ちを起こさせる1つの要素としては、観光的要因も多いんですけれども、都市の要素が非常に重要です。ですから、そういった意味での総合的な街の魅力を上げていくために取り組みたい。

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【記者】 仙台を『リゾート地』にするために、どのようなことが必要になりますか。

【藤崎氏】 インフラの整備は当然必要になってきますが、交通関係・港湾関係・道路関係はある程度仙台の場合は出来上がってるっていうふうに考えて差し支えありません。今後も恒常的に人口を増やす、定着させていくことを考えるのであれば、今度は住環境をきっちり整理していく必要性というのが一番先には考えられます。これは商工会議所単独というよりも行政との折衝が当然必要になってくるだろうと思いますので、商工業の皆さんの意見を吸い上げて、県や仙台市に要望していきたいです。


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