ヨーロッパ スペイン

スペイン 光の都アリカンテ/スペイン

初回放送
2019年5月21日
撮影時期
2019年3月
語り  
ムロツヨシ

巨大な岩山がそびえる、スペイン・アリカンテ。白く輝くこの岩山にちなんで「光の都」と呼ばれた街です。太古の昔からさまざまな民族が行き交った坂と階段の街をめぐり、伝統への誇りを胸に生きる人々と出会います。

歩き方

街の基礎情報 アリカンテ

場所:

スペイン東部

人口:

約33万(2018年現在)

景色:

標高166mの岩山、ベナカンティル山が街のシンボル

人々:

陽気で気さく、街の伝統を大切にしている

産業:

観光業、工業など

交通手段:

電車、地下鉄、バス、タクシー

行き方:

日本からアリカンテへの直行便はありません。成田空港からマドリードまでの直行便があります。所要時間は約14時間。マドリードからアリカンテまでは飛行機で1時間15分、電車で約3時間です。

通貨:

ユーロ
1ユーロ 約125円(2019年4月30日現在)

歩き方

リゾート感あふれる海辺をスタートし、街のシンボル・ベナカンティル山の頂上を目指します。ヤシの木が茂る遊歩道や白砂のビーチは、アリカンテの太陽に憧れる旅行者でいっぱい。でも旧市街に入ると雰囲気は一変します。山裾につくられた街は坂道と階段の連続。車も入れない路地の奥に、穏やかで伝統的な暮らしが息づいています。地元っ子が集う小さな食堂。地形を生かしたスポーツに興じる若者たち。坂の街ならではの祭りの風景。そして、山頂から眺める地中海の夕暮れ。「光の都」と称された街を味わい尽くします!

街を歩いてみて(ディレクター談)

グルメコーナーで紹介したモハマは、魚を塩漬けにして干した「サラソン」という食品の一種。専門店にはサバ、カツオ、サメなどのサラソンが並び、どこか日本の干物屋さんを思わせます。アリカンテの人たちに親しみを感じるひとつのきっかけになりました。

写真ギャラリー

街のなりたち

アリカンテの歴史は古く、さまざまな民族がこの地を支配してきました。カルタゴ人の時代の街の名は「アクラ・レウケ」、ローマ時代は「ルセントゥム」。それぞれ「白い断崖」「光の都」という意味で、どちらも、太陽を受けて輝くベナカンティル山に由来しています。ベナカンティル山は大昔から沖を行く船の目印だったのです。9世紀、当時スペインを支配していたアラブ人は山頂に要塞を築きました。13世紀のレコンキスタ後、要塞はサンタ・バルバラ城と名を変え、現在も街のシンボルとしてその姿をとどめています。

出会い

街の「タベルナ」

旧市街の小さなタベルナ(食堂)。先代オーナーはモロッコ人、現在のオーナー・エレナさん夫妻はアルゼンチン人ということで、アラブ、南米、そしてスペインの料理が楽しめます。かつてアラブの支配下にあったアリカンテは、今でも異文化に寛容なんだとか。

街の「パルクール」

公園でパルクールに興じる若者たちと出会いました。パルクールは軍隊の訓練が起源と言われるスポーツで、走ったり跳んだり身体機能をフルに発揮してさまざまな障害を越えていくもの。坂あり階段ありのアリカンテはうってつけのフィールドなんだそうです。

街の「聖週間」

聖週間(キリストの受難をしのぶ1週間)のパレードの練習に出くわしました。主役はキリストやマリアの像をのせた山車。重さ2トンにも達するこれを本番ではふもとにある大聖堂まで担ぎ下ろすのだそうです。旧市街の人たちが最も愛し、誇りを抱く行事です。

グルメ

【第1位】アロス・ア・バンダ

アリカンテ風パエリア。一般的なパエリアとは違って魚介類の殻をむいて食べやすくしてあります。味つけの基本はサフランとサルモレタというトマトベースの秘伝調味料、そして濃厚な魚介のだしです。このだしの良し悪しが米の味を決めるのだそうです。
<平均価格 (2人前 16.5ユーロ 約2000円)>

【第2位】ロジョス・ナランハ

一見ふつうのクッキーですが、食べてびっくり、口の中にオレンジの香りがはじけます。水の代わりにオレンジジュースを使っているのです。アリカンテのあるバレンシア州はオレンジの名産地。アリカンテの家庭ではオレンジを入れたサラダも人気なんだとか。
<平均価格 (10枚 2.5ユーロ 約300円)>

【第3位】モハマ

地中海でとれたマグロを塩漬けにして干したもので、うまみが強く白ワインにぴったり。紀元前にカルタゴのフェニキア人が伝えたと言われています。材料は新鮮なマグロと地中海の塩だけ、シンプルな作り方はカルタゴの時代からほとんど変わっていません。
<平均価格 (1キロ約50ユーロ 6250円)>

ちょっとより道

「エルチェ 世界遺産!ヤシの街」

アリカンテから内陸へバスで40分。144万平方メートルという広大な領域がまるごと世界遺産に登録されているヤシ園の街、エルチェへ向かいます。雨の少ないこの地にヤシが生い茂っているのは、8世紀にアラブ人が造った大規模なかんがい設備のおかげ。山から水を引いた用水路はキリスト教徒に受け継がれ、今も現役で使われているんだとか。膨大な数のヤシが作る木陰のおかげで、街全体が夏の強烈な日ざしから守られ、豊かな農作物が実る地になったのだそうです。

語り:濱田マリ