貿易戦争だけじゃない!? 世界経済ピンチの理由

2019年7月21日の出演者のみなさんです。
左から、永井伸一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストの濱田龍臣さん、国際部の田中健太郎デスクです。
きょうのテーマはずばり、「世界経済」です。
いま「世界経済」が心配な状況なんです。

国際部・経済担当の田中健太郎デスクが解説しました。

中国やアメリカ、それに日本やヨーロッパ、世界中で景気の雲行きがあやしくなっています。
こちらのセットで解説していきます。

砂浜には中国の習近平国家主席と、アメリカのトランプ大統領が日光浴しています。
トランプさんの方は晴れていますが、習さんの頭上には雲が広がっていますね。
まず中国ですが、先週発表された最新の経済成長率が「リーマンショック」の影響を受けたときを下回るほど悪かったんです。

11年前の2008年に、リーマン・ブラザーズというアメリカの大きな証券会社が破綻しました。
深刻な不況になって家を手放す人が相次いで、アメリカでは住宅価格が暴落しました。
影響は世界中に広がり、多くの人が仕事を失いました。
日本でも、仕事を失う人が続出し、炊き出しにも長い列ができました。
アメリカの不況が日本にも影響したんですね。
しかし、なぜ中国経済がリーマンショックの影響をうけた時よりも悪くなっているのでしょう。
1つはアメリカとの貿易戦争ですが、もう1つがこちら。

「借金問題」です。
これが実は大きな大きな問題なんです。
そもそもこの「借金問題」は先ほどの「リーマンショック」の時までさかのぼります。
この「海の家」を中国の企業だと思って下さい。

「リーマンショック」のとき、中国も景気がとても悪くなりました。
そこで中国政府はどうしたかというと、たくさんの「海の家」を作りました。

その「海の家」に「どんどん借金してもいいから営業して」と言ったんです。
働く従業員が増えて、モノを買うから景気もよくなりました。
しかし、その後、中国政府は「借金が増えすぎたから借金するのはもうやめましょう」と言い出したんです。
すると、経営できなくなる「海の家」が出てきて仕事を失う人も出てきました。

これを現実の世界に戻すと、自動車とかモノが売れなくなったりして景気が悪くなってきたということなんです。
いまや、中国は、日本やヨーロッパからもあまりモノを買わないということになってしまいました。

日本もヨーロッパも、中国の影響をまともに受けてしまっているんです。
中国経済、厳しい面が現れてきているんですが、中国の若者達は、それを肌で感じているようです。
いま、中国の若者たちの間では、喪失感や自虐的な感情など自分たちの内面を表す言葉「喪」という文字が流行しています。
喪失感など“ネガティブな感情を表現することはカッコいい”という新たな価値観を持つ若者たちが増えているのです。

こちらは、ネガティブな感情を音楽に込めて活動している大学生の張さんです。
自虐的な歌詞が人気を集めています。
張さんは北京中心部の住宅街に自宅があり、祖父と母親と弟の4人家族です。
母親が家計を支えていますが、生活は苦しいと言います。
「中国でお金を稼ぐなんて難しいよ、この時代に生まれたからこうなったと思う」。
張さんは中国の急速な経済成長をみてきました。
自分も豊かになれると信じて、激しい受験競争をくぐり抜けてきましたが、経済が減速する中で、自分たちの世代は、これまでの世代ほど簡単に、豊かにはなっていかないと感じています。
「いい仕事に就いても、結局、中国ではお金を稼げないよね」。
「金持ちの子は一生金持ちだけど、貧乏の子は一生貧乏だよ」。
張さんは、どうすることもできない「あきらめ」や「無力感」を歌詞に込めています。
ライブには、同じ世代の若者達がつめかけ、張さんの歌に自らを重ね合わせていました。

「私自身がネガティブなので、彼の曲を聴くと、魂が癒やされることが多いです」。
「彼らの歌は、現代社会で傷ついた若者たちのネガティブで廃れた生活を代弁していると思います」。
急速な経済成長に陰りが見える中国。
明るい未来を描けない若者たちに現実が重くのしかかっています。
ここまで中国をみてきましたが、アメリカの方は太陽が降り注いでいますね。
アメリカは「いいニュース」が多いんです。

株価は最高値、失業率も50年で最低です。
しかし、中国の景気が悪くなっているので、中国と取り引きのあるアメリカの企業が工場の建設を控えるなど「悪い」動きも出てきています。

つまり中国を覆うこの雲がアメリカにもかかり始めているんです。
こうした不安を払おうと、アメリカは、あることを10年半ぶりにやろうとしているんです。
それがこちら。

「利下げ」です。
「利下げ」を行って、中国から伸びる雲を、アメリカにかからないようにしようとしているんです。

[経済の話でよく聞く「利下げ」ってのが何なのかオレが説明しヨーソロー]
「利下げ」とは利子を下げることです。
そのため、金融機関からお金が借りやすくなり、住宅ローンや車のローンなどが組みやすくなります。
つまり、「利下げ」をすると景気が良くなるんです。
しかし、「利下げ」は、ここぞというときにやるものです。
今回のように景気が悪くないなかでアメリカが「利下げ」を行おうとしていることにはリスクもあるんです。
それが「バブル」です。

かつての日本も「バブル」が崩壊し、長い不況になりました。
景気がいいのに、みんながお金を使うと、家の値段が異常に上がるなど「バブル」になる心配があります。
この「利下げ」を行うかどうかは今月末に決まる予定です。
まとめはこちら。

「景気を良くする薬は」
中国はいま、莫大な「借金」を抱えながらも、景気を良くするため、実は、再び「借金」を増やそうと考えています。
一方アメリカは、株価が最高値を続ける中でも「利下げ」に踏み切ろうとしています。
いずれも景気に対する「薬」なんですが、飲む量やタイミングを誤れば、逆に、健康を損なうおそれもあります。
暗雲たれこめる世界経済は、「薬」によって、雲が晴れるのか、副作用によってさらに雲が広がるのか。
その効き目に注目すると、景気の行方を見極める手がかりが得られそうです。
【この日の時間割】
1. 貿易戦争だけじゃない!? 世界経済ピンチの理由
2. なぜ?NATOのトルコにロシアのミサイル
3. 治安悪化のブラジル 銃規制緩和 の波紋
これでわかった!世界のいま
NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送
出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ
2019年7月28日のゲストは、初登場!宮川一朗太さんです。
投稿者:永井伸一 | 投稿時間:16:07 | カテゴリ:せかいま美術館 | 固定リンク
週刊Mr.シップ 第百七十二回 「世界の経済」

周りのみんながいくらお金を持ってるのか、ちょっと気になるよな?
世界のお金のこと(経済)を知れば、この先のお金との付き合い方も変わっていくかもなぁ。
投稿者:Mr.シップ | 投稿時間:19:02 | カテゴリ:週刊Mr.シップ | 固定リンク
奇跡的な瞬間
前回のブログでも書きましたが、
ワタクシ、月好き・星好き・宇宙好き!
7年前に“金環日食”があったのを覚えていますか?
実は撮影に成功しちゃったんです!
しかも天体望遠鏡ではなく携帯で。
スマホではありません、いわゆるガラケーで!コチラ!!

真ん中に小さく…
拡大すると…

間違いなく金環日食!
アポロ11号月面着陸から50年、
そんなことがきっかけで、ワタクシ、過去の天体ショーを思い出してしまいました。
今週の“せかいま”は、
この国が登場しますよ。

これは実に分かりづらい…
この写真でどうでしょう???

正解は番組で!
「せかいま」のホームページ
( https://www4.nhk.or.jp/sekaima/ )
これでわかった!世界のいま
NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送
出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ
2019年7月21日のゲストは、濱田龍臣さんです。
投稿者:永井伸一 | 投稿時間:18:10 | カテゴリ:永井伸一の目指せ100点満点! | 固定リンク
EU離脱で揺れるイギリス 次の首相は?

2019年7月14日の出演者のみなさんです。
左から、永井伸一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストの古坂大魔王さん、国際部の佐伯敏デスクです。
EU離脱で揺れるイギリスでは、次の首相の座をめぐって、激しい戦いが続いているんです。

勝ちそうなのが、ボリス・ジョンソンさん。
宙づりになったり、水に入ったりして、イギリスでは人気者なんです。
でも、こんな過激な発言も。
「EUは、やり方は違うがヒトラーと同じようなことをやろうとしている」。
「ヒラリー・クリントン氏は、サディスティックな看護師みたいだ」。
イギリスの次のリーダーが、ボリス・ジョンソンさんになったら、EU離脱はどうなるのでしょうか。
国際部・佐伯敏デスクが解説しました。

今行われているのは、与党・保守党の党首選挙です。
この選挙の結果が来週23日に決まって、翌日に首相に就任します。
候補者は、この2人に絞られました。
ボリス・ジョンソンさんと、ジェレミー・ハントさんです。

最新の世論調査ではジョンソンさんが圧倒的に有利で、首相になるとみられているんです。
先日行われたテレビ討論会でジョンソンさんは、
「私には首相になる力と資質がある。我々は変われる!名声を回復するぞ」と、力強く言っていました。
いまイギリスの人はどうみているのでしょうか。
ロンドン支局の税所支局長に聞きました。

混乱する国の進路をゆだねるリーダー選びとあって、党首選としては、異例の注目度です。
ジョンソン氏は、言葉を重んじるイギリスでは大事なやりとりの巧みさ、そして、ステージにあがったとたんに輝きを増すスター性を備え持っているとして、保守党の党員の間では絶大なる人気を誇っています。ただ、広く一般国民の間ではというと、そのキャラクターの濃さから、これほど好き嫌いが分かれる政治家はいないと言われていますが、それも注目度の高さの裏返しといえます。
党首選で投票できるのは16万の党員のみ。
国民は「ジョンソン首相誕生」に向けて、期待とともに心の準備をしている、といった状況です。
そもそも、ジョンソンさんってどんな人物なのでしょうか。

[イギリスの次の首相になりそうなボリス・ジョンソン氏のこと、オレが説明するヨーソロー]
ジョンソンさんがなぜ支持されるのか、説明していきます。

ジョンソンさんと言えば、なんといっても「キャラの濃さ」。
ユーモアや独特の話術、それにどこか抜けた憎めない行動が人々の心をつかんでいるんです。
その憎めなさが垣間見えるできごとがありました。
自宅から出てきたジョンソンさんが、記者たちが待ち構える中、紅茶を入れたカップをトレイに乗せて現れました。
実はこのとき、ジョンソンさんは過去の発言をめぐって、記者から質問攻めにあうはずだったんです。
でも笑いながら紅茶を勧めるばかりで、結局質問には答えなかったんです。
キャラに加えて、もう1つ支持される理由が「実績」です。

ジョンソンさん、2012年ロンドンオリンピックのときのロンドン市長で
「オリンピックを成功させた市長」というイメージがあります。
そして、「ボリスバイク」。

これは、ジョンソンさんがロンドン市長時代に導入した、町なかで自転車をシェアするサービスです。
今ではすっかりロンドンに定着していて、交通渋滞への対策としても評価されているんです。
しかし、油断は禁物。
ジョンソンさんにも「弱点」があるんです。
それがこちら。

ジョンソンさん自身です。
とにかく“失言”がいっぱい。
冒頭にもありましたが、アメリカのヒラリー・クリントン元国務長官について、サディスティックな看護師みたいだ」と言いました。
他には、イスラム教徒の女性の姿について「郵便ポストか銀行強盗にしか見えない」とも。
そして「弱点」は失言だけではありません。
ジョンソンさんは、フェイクニュースの先駆者だとも言われています。
もともとは新聞記者でしたが、駆け出しの頃、人の発言をねつ造したとして解雇された経歴もあります。

そんなジョンソンさんが、イギリスの首相になったら今一番の課題「EU離脱」はどうするのでしょうか。
ジョンソンさんは、「EUとわかり合えないまま離脱してもかまわない」=「合意なき離脱でもいい」という主張です。

討論会でも「自分は期限になっている10月31日に絶対に離脱する」と対立候補に断言しました。
一方、離脱の期限をはっきり言わない対立候補に詰め寄る場面もありました。
イギリスの人たちはどう感じているのでしょうか。
再びロンドンの税所支局長に聞きました。
イギリスの人たちはジョンソン氏のこの強気の姿勢に、一抹の不安を抱えながら見つめていることは間違いありません。
ただ、離脱を巡って3年もの間、混乱が続きながら何も進んでいない現状に国民はうんざりしています。
その閉塞感の中で、脇の甘いところはありますが、前向きで勢いのあるジョンソンさんに「流れを変えてもらいたい」と期待する気持ちもわからないでもありません。
そして、与党・保守党の支持者は、もともと離脱を望む人が多くいます。
このため、離脱を成し遂げなければ支持者から見放され、政権維持はおろか党そのものが消滅しかねないという強烈な危機感があります。
ジョンソンさんが首相になれば、そうした支持者の声に応えなければなりません。
いざとなったら柔軟性を発揮するのでは、という見方もありますが、ジョンソン首相誕生を後押しした強硬派の人たちがそれで納得するのか、疑問です。
また、EUと再交渉すると言ってもEU側は拒否していますし、もうすぐ夏休みですから説得のための十分な時間すらありません。
「合意無き離脱」に向け、アクセルを踏み続けるかに見えるイギリスが、どこかでブレーキをかけるのか、そのタイミングが遅すぎないことを願うばかりです。
ジョンソンさんが心変わりでもしない限り「合意なき離脱」の現実味は増すばかりとなりそうです。
ジョンソンさん、日本との関係はと言うと、実は4年前、日本に来たことがあります。
ラグビーワールドカップに関連するイベントに参加し「一緒に、スクラムを、組もう」と日本語で話しました。
ここまではいいんですが、ラグビーをプレーしたジョンソンさんは熱が入りすぎて子どもを吹き飛ばす、はちゃめちゃぶりも見せました。
帰国したあと、ジョンソンさんはイギリスの雑誌に、日本について
「中国に注目するあまり、日本を見ないのは間違っている。この国はすごい」と書いています。

日本との関わりを重視するような発言ですね。
伝統的に関係のある日本やアメリカ、インドなんかとの関係も強めていくのかもしれません。

ジョンソンさんが首相になれば、イギリスは離脱に向かって「坂を転がるラグビーボール」です。
型にはまらないジョンソンさんですので、どこに転がるかわからない、予測不能な危うさも伴います。
もちろん、良い方に転がることだってあるかもしれません。
【この日の時間割】
1. EU離脱で揺れるイギリス 次の首相どんな人
2. 月面着陸から50年 宇宙開発 各国はいま
3. 地雷に立ち向かう アフガニスタンの女性
これでわかった!世界のいま
NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送
出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ
2019年7月21日のゲストは、濱田龍臣さんです。
投稿者:永井伸一 | 投稿時間:15:25 | カテゴリ:せかいま美術館 | 固定リンク
週刊Mr.シップ 第百七十一回 「イギリス」

ついに、重~いこの石(EU離脱)を動かす人があらわれたっぽいぞ。
それが誰なのか、どんな人なのか、そして世界はどうなるのか、あしたの放送で解説しちゃうぞ。
投稿者:Mr.シップ | 投稿時間:18:36 | カテゴリ:週刊Mr.シップ | 固定リンク
月面着陸から50年!
アポロ11号で人類が初めて月面に降り立ってから、
今月20日で50年となります!
ということを記念して、
東京・神田の書店で月面を観測しようというイベントが行われました。
月好き、宇宙好きのワタクシ、行ってみました!

雨でした!涙。
しかし、この日は観測に欠かせない天体望遠鏡の使い方を教わったり、
月の解説もあったりと、
月を直接見ることができなくても、なんだかワクワクするイベントでした。

今週の「せかいま」でもその様子が出てきますよ、
月好き、宇宙好き、宇宙探査好きな皆さん、お見逃しなく!
「せかいま」のホームページ
( https://www4.nhk.or.jp/sekaima/ )

これでわかった!世界のいま
NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送
出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ
2019年7月14日のゲストは、古坂大魔王さんです。
投稿者:永井伸一 | 投稿時間:18:08 | カテゴリ:永井伸一の目指せ100点満点! | 固定リンク
香港デモ、きょうの香港はあすの台湾!?

2019年7月7日の出演者のみなさんです。
左から、永井伸一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストの平泉成さん、国際部の大山吉弘デスクです。
政府への抗議活動が続く香港。
この日も大勢の人がデモを行っていました。
場所はこれまで議会がある中心部でしたが、この日は初めて旅行者の多い繁華街でデモが行われました。

実は、台湾もひと事ではないんです。
「きょうの香港は、あすの台湾」。
台湾の市民からは、こんな声も聞こえてきます。
香港のデモと台湾、どんな関係があるのでしょうか。
国際部・大山吉弘デスクが解説しました。

実は香港のデモが、台湾で行われている政治的な一大イベントに大きな影響を与えています。
それがこちら。

台湾の総統選挙です。
台湾では、トップ=総統を決める選挙が、事実上スタートしています。
台湾には、与党・民進党と、野党・国民党の2大政党があるんですが、今、注目されているのが民進党の蔡英文(さい・えいぶん)総統です。
去年の統一地方選挙で大敗して、支持率が低迷。
党首の座も追われてしまいました。

しかし、香港で起きている一連のデモの影響で、支持率を一気に回復させているんです。

台湾の蔡英文総統の支持率に、なぜ香港のデモが関係しているのでしょうか。
それを知るには、まず香港と台湾の“意外な関係”について知る必要があるんです。
香港と台湾を結びつけるキーワードが「1国2制度」です。

[香港の「1国2制度」についてオレが説明しヨーソロー]
「1国2制度」のおかげで、香港には独自通貨があり、議員も選挙で選べます。
そして、デモをしたり、自由に政府を批判したりすることができるんです。
でも、その「1国2制度」が今、揺らいでいます。
そのあらわれが香港のデモなんです。
デモのきっかけとなったのが、こちらの条例の改正案です。

香港にいる容疑者の身柄を、中国本土に引き渡すことができるようにするものです。
「中国がこの改正案を悪用して、中国政府を批判する人たちを引き渡すよう求めてくるかもしれない」と、香港市民は心配したわけです。
そして「それでは『1国2制度』が守られていないじゃないか」とデモに発展したんです。
そもそも、この「1国2制度」は、実は、中国が台湾を統一するために考えた制度なんです。

そして、その考えは今も変わっていません。
中国の習近平国家主席は、ことし1月、月1回の演説で台湾について、
「台湾独立は歴史への逆行で、滅びの道だ」

「台湾との統一には『1国2制度』が最良だ」と発言しています。
台湾の人たちは香港の混乱ぶりを、自分たちの未来のように受け止めています。
“きょうの香港はあすの台湾”ということばは、
「中国に統一されて『1国2制度』が導入されれば香港の二の舞になってしまう」「中国に飲み込まれてしまう」という中国への警戒感のあらわれなんです。
だから今、台湾で始まった選挙の最大の焦点が「中国との距離感」なんです。
それぞれの党をみていくと、与党・民進党は“中国に対して強硬”です。
独立志向が高く「中国と台湾は別々の国だ」と主張しています。

一方の野党・国民党は“中国寄り”。
「中国とは仲よくやっていこう、そうすれば経済がよくなるよ」という融和的な立場です。
その国民党の有力候補が、こちらの2人。

ただ今、中国寄りの姿勢から苦しい選挙戦を強いられています。
国民党の韓国瑜(かん・こくゆ)さんは、香港のデモについて「知らない」と発言し、メディアに取り上げられたあと、支持率が急落しました。
これまで韓さんを支持していた人も、その言動を批判しています。
若い世代に影響力をもつユーチューバーの陳之漢(ちん・しかん)さんは、自分の動画投稿サイトに韓さんを出演させるなどして応援していましたが、「知らない」と発言したのを批判し「もう支持しない」と話しています。
国民党のもうひとりの有力候補、ホンハイ精密工業の創業者で、シャープを買収した郭台銘(かく・たいめい)さんも、伸び悩んでいます。
中国に多くの工場を持ち、つながりの強い郭さんは中国との距離の取り方について、明言を避けてきましたが、台湾で中国への警戒感が強まると態度を一変させて、1国2制度を批判しました。
台湾では中国に対してきぜんとした態度を取ってほしいと考える有権者が増えています。そんな中、与党・民進党の蔡英文総統は「香港のデモを支持する」と、いち早く表明し、有権者の支持を集め順調に選挙戦を進めています。

台湾で広がる中国への警戒感が、来年の選挙結果を大きく左右しそうです。
といっても、選挙は来年1月です。
あと半年の間にどうなるかは分かりませんが、鍵を握るのは、やはり、中国の対応になります。

“中国のジレンマ”。
中国政府にとって、香港のデモが中国に強硬な蔡英文総統を有利にする展開は、完全に誤算だったといえます。
ただ、香港のデモの収束を図ろうと強硬な姿勢に出れば、結果として台湾での反発につながりますし、かといって弱気に出るわけにもいきません。
つまり、ジレンマというわけです。
台湾は、日本にとっても結びつきが強いですから、今後も、中国の出方、
そして、台湾の人たちの選択をじっくり見ていく必要があると思います。

これでわかった!世界のいま
NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送
出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ
2019年7月14日のゲストは、古坂大魔王さんです。
投稿者:永井伸一 | 投稿時間:15:43 | カテゴリ:せかいま美術館 | 固定リンク
週刊Mr.シップ 第百七十回 「香港→台湾」
香港て何年か前にも雨傘運動っていうデモがあったよな。

なんで台湾でも中国の反発が強くなってるかって?
それは明日の放送のお楽しみなんだヨーソロー。
投稿者:Mr.シップ | 投稿時間:20:45 | カテゴリ:週刊Mr.シップ | 固定リンク
あの時、香港にいたんです
いまから22年前の1997年7月1日は、
香港がイギリスから中国に返還された日。
実は返還前後の6月30日から7月1日、ワタクシは…

香港にいたんです!
ちょっとわかりづらい写真ですが、
ビルの前にあるのは、
香港市内にある和平記念碑、返還前まではイギリス国旗がかかっていたんです。

こんなお土産があったんです。
返還前の香港の空気が詰まった缶!
あれから22年、香港でいま、大規模なデモが起きています。
一体どうして?
そして香港から海を隔てたこの場所でも大いに関係あるみたいなのです。

ここはどこでしょう?
ズバリ、今週の「せかいま」を見ればわかります!
お楽しみに!!
「せかいま」のホームページ
( https://www4.nhk.or.jp/sekaima/ )
投稿者:永井伸一 | 投稿時間:17:07 | カテゴリ:永井伸一の目指せ100点満点! | 固定リンク
3回目米朝首脳会談とEUがピンチ!?

2019年6月30日の出演者のみなさんです。
左から、Mr.シップ、ゲストの和田アキ子さん、国際部の花澤雄一郎デスク、国際部の長尾香里デスク、永井伸一キャスター、坂下千里子さんです。
この日は、急きょ行われた3回目の米朝首脳会談と、EUのピンチについてお伝えしました。
アメリカのトランプ大統領と北朝鮮のキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長が
この日、南北の軍事境界線にあるパンムンジョムで面会。
およそ4か月ぶりに顔を合わせ、3回目となる首脳会談を行いました。

現職のアメリカ大統領としては初めて軍事境界線を超えて北朝鮮側に入り「素晴らしい気分だ」と述べました。
パンムンジョムでアメリカと北朝鮮の首脳と会談を行うのは、朝鮮戦争の休戦以降66年間で初めてです。
今回の会談はトランプ大統領がツイッターを通して呼びかけ、これに北朝鮮側が応じる形で急きょ実現しました。
ワシントンとソウルに駐在したことがある国際部の花澤雄一郎デスクが解説しました。

今回の首脳会談ですが「会うのでは」という見方は、少し前の段階ではありましたが、話は進んでおらず「今回はない」という認識でした。
そのため、あまりにギリギリのことでさすがに驚きました。
ただし今回の面会は、確かに歴史的なことですが事前の準備もないですし、直接「非核化」が前に進む
とは思えず、そこは冷静に見る必要があります。
トランプ大統領がなぜキム委員長に会いたいと言い出したのかというと、
「こう着状態となっている北朝鮮との交渉をなんとか動かしたい」という考えがあり、さらに会うこと自体が「政治的な利益」という面もあります。

ことし2月の2回目の首脳会談では、非核化の段階ごとに見返りを与えるかどうかで双方譲らず、決裂しました。
その後、圧力を掛け合うチキンレースになりました。
そして先月、北朝鮮は再び、弾道ミサイルを発射しました。
さらにエスカレートしていきトランプ大統領としては「北朝鮮との交渉に失敗した」と言われることを嫌がったんだと思います。
トランプ大統領は来年に大統領選挙がありますので、なんとか交渉を動かしたい、あるいは進まなくても「北朝鮮との交渉は続いていて、良い方向に向かっている」というイメージをアメリカ国民に持たせたいという狙いがあります。



中国総局北朝鮮担当 長野記者)
キム委員長が、なぜ今回の首脳会談の呼びかけに応じたのかというと、今のこう着状態を打開するため直接トランプ大統領に直談判するしかないと考えたのだと思います。
そして今後は国営メディアなどで「トランプ大統領とキム委員長が一層親密になった」とアピールするとみられます。

北朝鮮は米朝交渉がうまくいかなくなったのは、トランプ大統領の側近が交渉を複雑にしているからだと主張しています。
こうした側近を交渉から外しトップ同士の決断を求めてくることもありえます。
また今後、制裁解除の前向きな動きが見えなければ再びミサイルの発射など軍事的な動きも予想されます。
花澤デスク)
つまり、トランプ大統領もキム委員長も、ともに今回「会うこと自体に利益がある」ということです。
しかし、北朝鮮の非核化は簡単ではありません。
そもそも、2回の首脳会談がありましたが、非核化は実質的にはまったく進展していないんです。
北朝鮮は「非核化を目指します」と言いながら、核開発は続けています。
でも、核実験や大陸間弾道ミサイル発射さえしなければ、アメリカは怒らないというのが現状なんです。
これは、このまま核兵器を持ちつづけたい北朝鮮には都合がいい、つまり北朝鮮ペースがズルズルと続いている状態なんです。
一方でアメリカは「非核化させたい、できる」と思って最初の首脳会談をしましたが全然進んでいません。
「失敗した」というワケにはいかないから「交渉を続け、非核化に向けて進んでいる」というアピールを続けている状況になっています。
私は長年、北朝鮮問題を担当してきたアメリカ政府の元高官と話しましたが、トランプ大統領は「非核化に向かっているという幻想」を振りまき続けている、と言っていました。

あたかも非核化が進んでいるような、つまりある種の「壮大なウソ」を続けていると、そしてそれが政治的利益があるという受け止めです。
今後、アメリカはなんとか交渉を進めようとするでしょうが、北朝鮮は全く譲る気配はありません。
となると、アメリカが多少柔軟性を示すのかが焦点になります。
譲らなければこう着した状態が続きながらトランプ大統領が「うまく行っている」と言い続けることになります。
核兵器を持つ北朝鮮という既成事実化が進み、事実上、世界が受け入れるという状況に向かっているのが現状です。
記者会見でアメリカメディアから「会談では譲らず決裂し、ミサイルも撃ったのに、会うのがふさわしいのか?」という厳しい質問が飛び、その後の報道でも「これが何の役に立つ?」という厳しい声も上がっています。
トランプ大統領は、来年の大統領選挙での再選を最大の目的にしていますが、アメリカ世論が「より厳しく対処すべき」となっていけばトランプ大統領の対応も変化する可能性はあります。

▼2時間目はこちら。
イギリスがEUからの離脱を決めましたが、EUに対する反発はほかの国でもが広がっています。
国際部・ヨーロッパ担当の長尾香里デスクが解説しました。

EUは、ヨーロッパの28か国の集まりです。
そのEUが、いま、危うい状況になっているんです。
EUの抱える問題は、イギリスの離脱問題だけではないんです。
いまヨーロッパのあちらこちらで、「○○ファースト」という風が巻き上がっています。
自分の国の利益が最優先だと主張する国が増えてきました。

そんななかで、EUとしてのまとまりがなくなって結束が緩んでしまうのではないかという状況になっているんです。
そもそもEUとは、どんな集まりなんでしょう?

こちらのロボットをEUに見立てて説明します。
「EUの原型」と書いてあります。
EUの起源は、第2次世界大戦が終わってまもない1952年に集まった6か国でした。

「戦争を二度と繰り返さない」という目標を掲げたのです。
その後、どんどん仲間に加わる国が増えていきました。

パーツが増えることが、国が増えることを表しています。
そして1993年に、ついに今のEUになりました。

欧州合体「イーユーダー」完成!
EUは、28か国、総人口5億人にまで拡大しました。
ヨーロッパの平和と共存に貢献したとしてノーベル平和賞までもらっているんです。

こうやって、ひとつになることで、世界の中で存在感を強めてきたんです。

[1つになるとどれだけ強いのか、オレとイーユーダーが説明するヨーソロー]
イーユーダーの強さの秘密をみていくために、ここからはその心臓部をみていきましょう。
EUにはヨーロッパ議会という議会があります。

イーユーダーを動かす大事な回路のようなものです。
ちょっと変わった議会で議席の数は28の加盟国ごとに割り振られていて、議員は、各国それぞれの有権者が投票して選びます。
議会は、EUの共通の政策について話し合います。
つまり、加盟国みんなで守るべきルールを決めているんです。
ところが先月、このヨーロッパ議会に異変が起きました。
5年に1度の選挙が行われたんですが、投票の結果、EUのやり方は「ウザい」と、反発する議員が各国で勢いを見せたんです。

つまりEUそのものが、YESかNOかを問われたシビアな選挙になったんです。
なんでそんなことになったのかというと、原因の1つがここ数年、中東やアフリカなどから押し寄せている「難民・移民」の問題です。

受け入れるのは大きな負担だとか、治安の悪化につながるといって反発する声が、加盟する国の人たちの間で高まったんです。
中にはこれまで事実上、なかった国境を復活させるべきじゃないかと訴える国まで出てきました。
そして、EUに反発する声が広がったもうひとつの原因がこちら。

「格差」問題です。
人やモノが自由に移動できる集まりがEUです。
1つの市場になったことで、EUの中で競争が激しくなって、勝ち残れる人とそうでない人の差が大きくなった面もあるんです。
それでEUに加盟したら、メリットどころか暮らしにくくなったと考えている人も増えてきました。
こうした不満の大元をたどれば「EU」に行き着くと。
だからもうEUのルールに縛られず、自分たちで決めたいという声が増え、先月の選挙結果につながったんです。
このピンチに、これまでEUを引っ張ってきた国のひとつ、フランスに改めてスポットがあたっています。
フランスのトップがマクロン大統領です。まだ41歳の若きリーダー。

先週、NHKが単独でインタビューしたんですが「ヨーロッパが成長していくためには、EUの結束を強めていくことが唯一の道」だと話しました。
マクロン大統領は、EUは良い政策を色々作っているのに、そのメリットが市民に伝わっていないのが一番の問題だと考えています。
だから「EUのルールを見直したり、もっと機能を高めたりして良さをわかってもらおう」と、マクロン大統領は言いたいようです。
ただ、マクロン大統領、フランス国内での支持率は決して高いわけではありません。
そういうなかで、問題が山積みのEUを引っ張っていけるのか、相当の手腕と気合いが必要だと思います。
最後に、こちら。

ギリシャ神話にでてくるパンドラの箱、抑え込んできた災いがいっきに噴き出すことの例えによく使われます。
今のEUはまさにそんな感じです。
でも神話で、パンドラの箱に最後に残ったものは「希望」だと言われています。
EUは大きな経済圏で外交力も大きく、日本にとっても大事なパートナーです。
希望を絶望にしないために、これからがEUのふんばりどころです。
これでわかった!世界のいま
NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送
出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ
2019年7月7日のゲストは、平泉成さんです。
投稿者:永井伸一 | 投稿時間:15:30 | カテゴリ:せかいま美術館 | 固定リンク