2020年06月04日 (木)

香港を狙う中国の新法制/アメリカが中国を見限った?

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2020年5月31日の出演者のみなさんです。

左から、坂下千里子さん、Mr.シップ、永井伸一キャスター、国際部・花澤雄一郎デスクです。

 

この日から、リモート出演を続けていた坂下千里子さんがスタジオに復帰しました。

スタジオ内でも間隔をあけて出演しています。

 

世界の新型コロナウイルス感染拡大が気になりますが、香港では大きなデモがありました。

香港のいまを、若槻支局長に聞きました。

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香港では、新型コロナウイルスの感染と対策として、9人以上で集まることが禁止されていて、しばらく抗議活動は姿を消していました。

しかし、この1週間ほどは連日、小規模ながら各地で抗議活動が行われています。

こうした活動ができるのも、香港が「一国二制度」のもとにあるからと言えます。

しかし今、その「一国二制度」が終わってしまうのではないかという事態になっています。

 

ここから、花澤デスクに聞いていきます。

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「一国二制度」とは「香港は中国の一部ではあるけれども、中国本土とは違う法律・仕組みでやっていきますよ」ということです。

しかし、5月28日、中国で、香港に「国家安全法制」というものを導入することが決まったんです。

 

[中国が導入しようとしている「国家安全法制」がどんなものか、オレが説明するヨーソロー]

 

今まで香港の人々は「一国二制度」のおかげで、自由に中国の政府を批判する集会を開いたり、新聞やテレビで批判することもできた。

ちょっと難しく言うと「高度な自治」ってやつだ。

だから中国の政府は、香港の人々を取り締まれなかったんだ。

そこで中国の政府は香港に「国家安全法制」を導入。

「香港では、今まで中国の法律は適用できなかったんだけど、これは例外なのだ」。

だからこれからは、必要なら中国の治安部門が、香港の中で活動できるんだ!

 

 

中国政府はあくまでも国家安全法制は、国家を分裂させたり、政権を転覆させたりする行為を取り締まるためだと言っています。

しかし、香港の民主派の人たちは「中国政府を批判すること」、「抗議デモ」、「外国に向けて中国の問題を訴えること」、こういうことが罪に問われることになると心配しています。

さらに中国の当局が、香港で直接、逮捕できるようになると懸念されています。

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新型コロナウイルスで世界が混乱している中で、なぜ中国は国家安全法制を導入したのでしょうか。

北京にいる中国総局・柳原記者に聞きました。

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ここまで強硬に進めるとは思っていませんでした。

しかし、香港の抗議活動は一向に収まらず、その批判の矛先は中国政府や共産党にも向かっていました。

一部ではありますが、中国国旗を燃やしたり、独立を主張したりする動きまで出てきているとしていて、許容できるレベルを超えたと判断したのだと思います。

世界からの批判は覚悟の上で、力で抑え込む方針をとることになりました。

 

 

「一国二制度」で最も大事なのは、言論や集会の自由です。

今回の事態は非常に深刻で「一国二制度は死んだ」とも言われています。

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この事態に香港の人たちの間には、いいようのない憤りと不安が広がっていると感じます。

去年6月から、香港では大規模で時には激しいデモが繰り返されてきましたが、国家安全法制が導入されると、こうしたデモが大幅に制限されるおそれがあり、いまのように自由にものが言えなくなるという危機感が強まっています。

 

1年前から毎週のようにデモに参加してきた、蕭浩然(しょう・こうぜん)さんです。

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「デモにはできるだけ参加しています。抗議活動の火は消えません」。

中国政府に批判的な議員のスタッフをしながら抗議活動を続けている蕭さん。

いま、全てをなげうって自由な香港を守らなければならないと考えています。

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「香港を取り戻せるならば犠牲もしかたありません。逮捕される覚悟はできています。刑務所に行く心の準備もできています」。

 

一方、抗議活動を続けることに限界を感じ始めている、易卓邦(えき・たくほう)さんです。

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大学卒業後に広告制作会社を立ち上げ「ユーチューバー」として活動してきましたが、去年11月、暴動に関わった疑いで逮捕されました。

若者と警察が激しく衝突した大規模なデモに参加したからです。

今月中旬には「暴動罪」で起訴されました。

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「起訴されてから、私は人生のレールから外れてしまいました。今後の仕事や人生が変わってしまったんです」。

裁判はすでに始まっていて、裁判中は週1回、警察署に行って居場所を報告しなければなりません。

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「暴動罪」の最高刑は、禁錮10年です。

裁判がいつ終わるのか先が見通せず、仕事で海外に行くことも許されません。

易さんは悩んだ末、当面の間は抗議活動への参加をやめることにしました。

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「いくら戦っても効果がありません。どうしたらいいか分からないんです。香港は行き止まりまで追い詰められました」。

 

香港の人たちの選択肢は、多くありません。

将来への強い不安から、香港から出ていこうという動きも出始めていて、台湾やヨーロッパなどへの移住手続きを代行する業者には問い合わせが殺到しています。

そんな中で、抗議活動では「香港の独立を」と、これまであまり見られなかった声が目立つようになりました。

その追い詰められた民主派の人たちが望みを託している手段があります。

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民主派の新聞は、アメリカ大統領に向けて「プリーズ・ヘルプ・アス」=「助けてください」と手紙を書こうと呼びかけています。

民主派の団体などはたびたび会見を開き、国家安全法制の導入を撤回させるため、中国に強い圧力をかけてほしいと、アメリカに訴えています。

香港の人々は、もはや外国の力に頼る以外方法がないと、アメリカの動きを見つめています。

 

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香港の問題も加わって、アメリカと中国の対立はますますエスカレートしています。

双方の強硬な姿勢が、かつてないレベルに達しています。

 

アメリカは、香港に対して、関税やビザを優遇するなどの特別扱いをしてきましたが、これをやめると発表しました。

アメリカが香港の特別扱いをやめると香港のビジネス環境が悪くなり、外国企業が香港で活動したり、投資をすることがしにくくなります。

実は、中国の企業は香港の市場でたくさんのお金を外国から集めていて、それを中国国内で使っています。

そのため香港の市場に魅力がなくなると、中国の経済全体にも打撃になるんです。

さらにアメリカは、中国人留学生を制限したり、中国企業のアメリカでのビジネスを制限する姿勢も示し、中国に対する厳しい姿勢を鮮明にしました。

アメリカと中国はこれまでも「貿易戦争」、「南シナ海・台湾」、「5Gなどのハイテク分野」でも対立してきました。

ただ、そうは言ってもアメリカ政府は、これまでは「結局、最終的には中国とはなんとか付き合っていくしかない」というのが基本的な考えでした。

それが最近、大きく方向転換しました。

トランプ政権が5月20日に出した中国政策の報告書には「アメリカがこれまでやってきた中国政策は甘すぎて間違いだった。期待していても中国は国際ルールを守る国にはならない」と書かれています。

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さらに、「中国はアメリカの国益を傷つける存在だ」とも言っています。

ほとんど中国を見限ったとも言える衝撃的な内容でした。

この厳しい姿勢の背景の1つが、アメリカが抱える軍事面での中国に対する危機感です。

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こちらは日本の周辺の地図です。

グアム、日本、韓国などに基地がありますし、海の上には「動く基地」である巨大な空母があります。

この地域では、これまでアメリカ軍が圧倒的に強い状態でした。

そこで中国が近年、急激に開発を進めたのが「中距離ミサイル」です。

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色々と開発していますが、そのうちの1つは、黄色の線まで届くミサイルです。

非常に精度が高く、動いている空母を撃沈できるとされていて「空母キラー」と呼ばれています。

アメリカの空母がこの中に入ってこられないようにしようという戦略です。

さらに、オレンジの線まで届くミサイルがあります。

「グアムキラー」と呼ばれ、アメリカ軍基地があるグアムも狙えます。

ミサイルは、数でもアメリカを圧倒しています。

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いっぺんに撃たれたら、アメリカ軍でもミサイルを全て撃ち落として空母を守ることはできないと言われています。

つまり、空母がこの範囲に入ると撃沈されるおそれがあるということで、外に出ざるを得なくなります。

アメリカ軍はこの地域で圧倒的に強かったのですが、いつの間にか、かなりまずい状況になったという焦りも感じます。

 

中国は、アメリカとどこまで対立していく構えなんでしょうか。

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中国が軍事力への自信を深めていることは確かです。

ただ、アメリカとの対立は織り込み済みとはいえ、軍事衝突は避けたいのが本音です。

それでも、アメリカが台湾にさらに支援するなど、中国にとって譲れない一線を超えてきた場合には緊張が一気に高まることもあり得ます。

今更、香港の国家安全法制を引っ込めることはありえませんが、対立が決定的にならないように、アメリカを過度に刺激していくことは避けていくと思います。

同時に中国への批判が広がらないように、各国の対応にも神経をとがらせています。

経済での関係をちらつかせながら他の国に働きかけて「なるべくアメリカを孤立させていく」、中国は今後、そうしたしたたかな戦略をすすめていくと思います。

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こういう様々な対立の緊張状態にある上に、今回の香港の問題がさらに加わったというのが現状です。

特にアメリカはこの報告書にあるように、これまで以上に中国に厳しい姿勢で臨もうとしています。

アメリカ国内世論は中国に対してより厳しくなっていて、議会はトランプ大統領以上に中国に厳しい姿勢です。

そしてトランプ大統領としても中国に対して厳しい姿勢をみせることは、ことし11月のアメリカ大統領選挙にもプラスになるという計算もあります。

つまり、アメリカ側にも、ブレーキはほとんど見当たらない状況です。

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世界をリードしてきたアメリカと、それに挑戦する中国が対立するのは必然でもあります。

放置すればエスカレートしていく危険な状況です。

秩序に挑戦する中国にはいま、世界中で警戒感が高まっています。

日本はそうした各国と連携して中国に対して声をあげ、協調に導いていけるのか、私たちの危機意識が問われています。

 

 

 

【この日の時間割】

1.どうなる一国二制度 香港を狙う中国の新法制

  アメリカが中国を見限った?

2.感染拡大続くブラジル「それでも経済を!」

 

 

 

これでわかった!世界のいま

NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送

出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ

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投稿者:永井伸一 | 投稿時間:16:45


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