2019年11月21日 (木)

先の見えない抗議活動 香港どこに向かうの?

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2019年11月17日の出演者のみなさんです。

左から、永井伸一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストの武井壮さん、国際部の小田真デスクです。

 

香港で政府への抗議活動が始まって5か月がたちました。

ついには、死者が出てしまう事態に…。

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対立がますます激しくなる香港。どこに向かっているのでしょうか。

 

香港の若槻支局長に、現地の様子を聞きました。

こちらではきょうも集会が呼びかけられていて、大勢の市民が政府や警察への怒りを表そうと集まりました。

そして、別の場所では、きょうもデモ隊と警察の激しい衝突が起きました。

香港を象徴するような金融街で、先週は毎日、抗議活動が行われ会社員も大勢参加しました。

警察がそうしたスーツ姿のビジネスマンに向けて催涙弾を撃っているのを見ると、取り締まりが急激に強まったと実感します。

そしてきのう、香港に駐留する中国の軍の兵士たちが、施設の近くの道路で散乱したがれきなどの撤去を行ないました。

施設の外に出るのは異例のことで、「ボランティア活動に見せかけたデモ隊への威嚇だ」との反発も起きています。

さらに、交通機関がマヒするなど、市民生活にも影響が出ていることで、抗議活動に反対する市民とデモ隊との衝突も起きています。

抗議活動の長期化で、デモ隊と政府との対立が激化していることに加えて、社会全体の亀裂も深まっていて香港は出口の見えない重苦しい空気に包まれています。

 

どうしてここまで激しくなったのか、国際部中国担当・小田真デスクが解説しました。

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当初、デモは平和的に行われていました。

しかし、いくら抗議活動をしても香港政府が要求に応じようとしないので、過激な行動に出るようになっているんです。

そもそもなぜ市民がこんなに怒っているのかというと、中国が香港についての「約束」を守っていないと感じているからなんです。

 

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[香港と中国がした“約束”のことを、オレが説明しヨーソロー]

 

19世紀半ばから150年ぐらいの間、香港はイギリスの植民地でした。

それが1997年、中国に返されることになったんです。

しかし、中国は共産党がすべてをコントロールする「一党支配」の国。

中国に戻ったら、生活が変わってしまうのではないか、自由にものを言うこともできなくなるのではないかと、香港の人たちは不安になりました。 

そこで中国は、

「香港の政治や裁判、経済活動などは、香港の人たちでやっていいよ。」

「言いたいことを言える社会も守るよ。」

「こうした制度は、50年間は変えたりしないよ。」と約束しました。

さらに「将来的には、香港政府のトップを香港の人たちが選挙で選べるようにするよ。」と…。

こうして香港は、中国に返されたんです。

本当なら、今から30年ぐらい先までは、自由な社会が約束されていたはずだったんです。

 

香港と中国の約束については、こちらで説明していきます。

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市民、香港政府と警察、そして中国を象徴する龍です。

龍は約束を掲げていますが、今の香港では、これらが守られていないんです。

 

まず「将来的に自分たちでトップを選んでもいい」という約束について。

香港政府のトップは行政長官といいますが、もともとは一部の人たちだけで長官を決めていました。

「それでは約束と違うじゃないか」ということで、 中国は一度は「市民の投票で選べるようにする」と言ったんです。

 

しかし、ふたを開けると、結局、中国寄りの人しか立候補できない仕組みだったんです。

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次は「言いたいことを言える社会を守る」という約束。

実は今、香港では、中国の悪口を言うような本を出すとつかまったり、新聞社やテレビ局にも中国の資金がどんどん流れ込んでいて、中国寄りの報道が目立つようになっています。

 

中国が約束を守ろうとしないのはなぜか。

それは、この人が大いに関係していると言われているんです。

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習近平国家主席になってから、国内の締めつけを強めているんです。

香港との約束を認めてしまうと、中国本土でも同じような要求が出てくるのではないかと恐れているんです。

そのため、抗議活動をする人たちの要求は、絶対に認めません。

 

今月初めには、習主席が香港の行政長官と会談し、抗議活動を徹底的に力で抑え込めという指示を、直接会って伝えました。

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これをきっかけに香港の取り締まりが一気に厳しくなったと感じます。

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2人の会談後に行われた香港警察の取り締まりでは、デモに参加していた学生に対して、至近距離から実弾を発砲しました。

ところかまわず催涙弾を発射し、もはや市民の反応など気にしなくなっています。

逮捕された人の数もこの1週間だけで700人を超えています。

 

「自由が奪われてしまうのならば、香港そのものを壊してしまえ」と、過激な行動に出る若者もいます。

香港のデモに参加する若者を取材しました。

 

ガスマスクやゴーグルを身につけた女性。

過激な抗議活動を行うグループに加わって、最前線で警察と向き合っています。

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「私はバリケードを設置したり、催涙弾を投げ返したりしています。警察と向き合うと、その時は恐怖を感じるけど、怖がってはだめだと自分に言い聞かせています」。

女性も、当初は平和的に抗議活動に参加していました。

ところが、6月12日、警察が大量の催涙弾を打ち込むのを間近で目にしたことが、過激な抗議活動に加わるきっかけになったといいます。

「何も武器を持たないデモ参加者にやさしく対応しようとは、少しも思っていないんだと感じました。それで、私たちは制圧されるだけではなく、過激化すべきではないかと考えたんです。逮捕されて懲役刑になる覚悟はあります。すばらしい香港になってほしいから参加し続けます」。

 

最前線での抗議活動に加わり火炎瓶を投げたりしている男性に、抗議活動に参加する際に持っていく荷物を見せてもらいました。

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「防毒マスク、水泳用ゴーグル。どっちも催涙ガス対策です。それからミニライト。これはいろいろ役に立ちます。夜、道を照らせるし、突然襲撃されたら相手の目に光をあてて、動きを止められるんです」。

 

なぜ、過激な行為を続けるのか。

男性は、警察に対抗するだけでなく、香港の評判を落とすことも目的だと言います。

「『香港は安全ではない』と世界中の人に知ってもらい『国際都市・香港』の価値を落とさないと政府は動かない。力のかぎり抗議活動を続けたい」。

「我々を攻撃するなら、お前たちも道連れだ」。

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このような考え方は、広東語で「攬炒(らむちゃお)」と言われています。

「敵を道連れにして死ぬ」という意味で、一部の若者の間で広がっています。

香港の価値を落とすことで政府を困らせ、そこから突破口を開こうというのです。

「もう香港は安全じゃない。混乱が続けば、ますます安全でなくなるでしょう」。

 

過激な行為には直接参加せず、別の形で支援している人も少なくありません。

けが人の手当てをするボランティアに加わっている男性もいます。

抗議活動に参加する時には止血に使う道具など救急グッズを持ち歩き、いつでも手当てができるようにしています。

「自由な香港」を守りたい気持ちは同じだからです。

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「彼らの苦しみや怒りは理解できます。同じ目標に向かってやっているのだから協力しようと思うんです。抗議活動に参加する人がいるかぎり、けが人が出るかぎり、僕も活動を続けます」。

 

 

彼らはマスクを取ると、どこにでもいるような穏やかな若者です。

そんな若者たちが「ここでやめてしまえば、自分たちの未来はない。」というところまで追い詰められているんです。

いわば「最後の闘い」なんです。

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過激化した香港のデモ、どうすれば解決するのか。

中国が力で抑え込むという指示を出した以上、市民がどんなに声を上げても、事態は変わりません。

そこでカギとなるのが「世界の目」です。

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例えばアメリカやイギリスは「これらの約束を守らないと制裁を加えるぞ」と、にらみをきかせています。

習主席としては、中国の経済にかげりが見える中で、こうした「世界の目」を無視できなくなっているんです。

来年の春には習主席が日本に来る予定ですが、日本の政治家からもこのまま呼んでいいのかという声も出ています。

 

こうした中、市民の声を中国、そして世界に伝える大きなチャンスが1週間後に予定されています。

日本でいうと、地方議会の選挙にあたる「区議会議員選挙」で、行政長官と違い、市民が直接議員を選べます。

市民の意見を届けやすい選挙なんです。

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なので、今回は中国に批判的な人たちが議席を大きく伸ばすのではないかと見られています。

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香港の人たちは今、大きな犠牲を払いながら、ずっと大事にしてきた自由な社会を守ろうとしています。

自由というと空気のように当たり前にあるものだと考えがちだが、実は、意識しなければ、いつかはなくなってしまうものだと教えてくれています。

日本にいる私たちも香港の行く末に思いを寄せることが大切なんだと思います。

 

 

 

【この日の時間割】

1.先の見えない抗議活動 香港どこに向かうの?

2.身柄受け入れで押し問答 男の正体は…

3.「貧困・障害に乗り越えて」ベトナム人デザイナーの挑戦

 

 

 

これでわかった!世界のいま

NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送

出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ

2019年11月24日のゲストは、濱田龍臣さんです。

投稿者:永井伸一 | 投稿時間:17:24


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