"使い捨てプラ"禁止に... インドで深刻ごみ事情
2019年10月6日の出演者のみなさんです。
左から、永井伸一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストのトラウデン直美さん、国際部の花澤雄一郎デスクです。
西葛西を歩けば、あっちにもこっちにも、インドの人たち。
このあたりは「リトル・インディア」と呼ばれ、インドの食材を扱うお店がたくさん並んでいます。
こうしたカラフルなスパイス、インドではこのような袋での販売ができなくなるかもしれません。
世界中で大きな問題となっているのが、プラスチックごみ。
ここインドでも、深刻な事態を引き起こしています。
そこで、インドのモディ首相が大きな決断をしました。
ニューデリー支局の小林潤支局長が中継で解説しました。
実はモディ首相は今月2日の演説で、使い捨てプラスチックを3年後の2022年までに全面的に禁止する方針を示したんです。
インドでは、プラスチックごみは、健康や生活への直接的な脅威となっているんです。
こちらをご覧ください。
ニューデリーの中心部からそんなに遠くない所ですが、道端にごみが散乱しています。
レジ袋、プラスチックカップなど、あらゆる使い捨てのプラスチックが捨てられています。
特に貧困層が住んでいる地域では、ごみの収集が十分に行われていないため、そのまま捨てられてしまっています。
捨てられたごみを、動物たちが食べる姿も見られます。
地域にはごみを回収するボックスがありますが、誰もこの中に捨てず、子どもの遊び場になっています。
公式のごみ捨て場ではないと思われる、列車の操車場の前の広場にも、地域のごみ捨て場になってます。
ニューデリー近郊にはこんな場所もあります。
積み上げられたごみの山です。高さは65m。
来年には、高さ73mの世界遺産「タージマハル」を超えるのではないかと言われています。
インドではプラスチックごみによると見られる健康被害も報告されています。
また、プラスチックごみが排水をつまらせて洪水を引き起こしたり、都市機能を停止させるかもしれないと心配されているんです。
そのため、いっそのことプラスチックごみを禁止しようということなんです。
モディ首相は、環境の改善は国家の緊急の課題だとしています。
[インドのモディ首相は「きれいなインド運動」を提唱していろんなことをしてきたんだヨーソロー!]
インドでは昔から地方を中心にトイレがない家が多く、感染症がまん延し、命を落とす子どももいました。
このままではいけないと、政府がお金を投じて国中にトイレを整備。
おかげでこの5年間で家庭用トイレが爆発的に普及したんです。
他にも、大気汚染が酷くなったため、電気自動車を普及させたりしました。
こうしてモディ首相は、就任以来「きれいなインド運動」を提唱しいろんなことをしてきたんです。
だから、町中がごみで散らかってることが許せないんです。
とは言っても、使い捨てプラスチックを禁止するというのは可能なのでしょうか。
実は去年から、使い捨てプラスチック製品の使用を禁止している州があるんです。
インドで最も多くの人が暮らす都市、ムンバイを含むマハラシュトラ州では、去年6月から全面的なプラスチック規制を行っています。
いわゆるレジ袋や、スプーン、フォークなどの食器、小さいペットボトルなど、使い捨てのプラスチック製品の製造や使用を禁止しています。
違反すると、企業や店だけでなく一般の人も処罰されます。
1回目の違反で5000ルピー、日本円で8000円近い罰金が科せられます。
3回目以降の違反では、罰金が5倍になり、3か月の禁固刑も科せられます。
いまでは布や紙の買い物袋を持つ人が増え、規制を歓迎する声も出ていました。
町の人は。
「排水溝にプラスチックごみがつまると水があふれ、家が水浸しになることもあるんです。布の袋を持って歩くのは当然のことです」。
「神聖な牛がプラスチックを食べたら大問題です。プラスチックが禁止されてよかったです」。
一方で、規制を守らない人たちもいます。
市場にある果物を売る店では、カットした新鮮なパイナップルをプラスチック製の袋に入れて販売しています。
州の規制では、食品を包むプラスチック製の袋は、一定の厚さがあってリサイクルできるものに限られています。
ところが、この店では禁止されている薄い袋を今も使っています。
リサイクル可能な厚い袋は色が濃いので、中のパイナップルが新鮮に見えないというのです。
「薄い袋だと見栄えがいいですが、厚い袋だと、パイナップルを切ってから時間が経ったように見えるんです」。
別の店を経営する人は。
「許可された袋は高くて、われわれが買える範囲を超えています。禁止するのはいいですが、その前に代わりをどうするか決めるべきです」。
行政は規制や罰則を設けて、強い姿勢で臨みましたが、小売業界などからの反発は強く、規制は形だけになっているという指摘もあります。
産業界からも、モディ首相の政策は「急ぎすぎだ」という声が上がっています。
「あまりにも急に政策を変更すると、われわれの生計の手段を奪ってしまいます。消費者は分別せずごみを出し続け、政府も適切に機能していないのに、流通全体のほんの一部のプラスチック業者ばかり責められています」。
「環境・衛生」と「経済」のボールを持ったインド象が出てきました。
モディ首相は環境を良くしようと取り組んでいますが、安くて加工しやすいプラスチック製品を禁止すれば、当然、困る会社も出てきます。
環境を重視すれば、経済が下がってしまいます。
今回、モディ首相は一部のプラスチック製品を、直ちに全面禁止にするのではないかという見方もあったんですが、そこまでは踏み込みませんでした。
経済への悪影響を考えたためだと思います。
しかし、経済だけを重視して環境が悪いままだと、イメージも悪いですし海外からの投資が減るなど経済にもブレーキがかかってしまいます。
だからこそ、モディ首相は2022年と具体的に時期を区切って、やり遂げると表明したのだと思います。
プラスチックごみに対する危機感はインド以外のアジアの国々でも高まっています。
こんな取り組みも行われているんです。
タイの南部には“脱プラスチック”を掲げる市場「ごみゼロマーケット」があります。
使われているのは、竹の容器。
ストローも竹でできています。
市場には150以上の店が集まっていて、出店の条件は「プラスチックを使わないこと」です。
こうした珍しい取り組みが評判を呼び、多くの客が訪れるようになりました。
一方、インドネシアのビーチリゾートとして人気のバリ島でも、脱プラスチックを呼びかける動きが広がり始めています。
きっかけは、バリ島の海に漂う大量のプラスチックごみと、その中を泳ぐエイの映像が公開されたことでした。
こちらの買い物袋は「タピオカ」の原料にもなっている、キャッサバという芋から作られているんです。
キャッサバは、インドネシア各地で栽培されています。
デンプンを固めて薄く伸ばしたもので、自然に分解し環境への悪影響もないといいます。
「インドネシアではキャッサバは簡単に、安く手に入ります。世界中に広めていきたい」。
「持続可能な脱プラスチックを」。
この問題の難しさは、人々の生活や企業活動がいかに使い捨てプラスチックの使用を前提としたものになっているかということではないでしょうか。
その意味では私たちの社会全体が納得しながら、持続的に脱プラスチックに取り組んでいかなければなりません。
インドの現状は禁止措置の難しさという意味で、日本や世界にとって参考になるはずです。
3年後にむけてインドがどのように「脱使い捨てプラスチック」を進めるのか、注目してほしいと思います。
【この日の時間割】
1.“使い捨てプラ”禁止に…インドで深刻ごみ事情
2.渦中のトランプ大統領 ウクライナ疑惑って何?
3.日本人女性が挑戦!イスラム伝統衣装おしゃれに
これでわかった!世界のいま
NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送
出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ
2019年10月13日のゲストは、初登場!八木沼純子さんです。
投稿者:Mr.シップ | 投稿時間:14:40