2019年06月13日 (木)

米中貿易戦争 中国が奥の手?

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2019年6月9日の出演者のみなさんです。

左から、永井伸一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストの虻川美穂子さん、国際部・経済担当の布施谷博人デスクです。

 

この日の時間割です。

1時間目「米中貿易戦争 中国が奥の手?」

2時間目「アメリカvsイラン 仲介役は安倍首相」

3時間目「アメリカの高校 生徒全員が虐待被害者」

 

ヒートアップする米中貿易戦争。

新たなステージに突入し、中国の猛反撃が始まろうとしています。

どうやら戦いは、これまでと違ったものになってきたようです。

 

国際部・経済担当の布施谷博人デスクが解説しました。

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もともとこの対立は、アメリカが「中国との貿易で赤字が出て損している。貿易赤字を何とかしろ」と言い出したものです。

 

こちらのセットを使って説明していきます。

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中国・習近平国家主席とアメリカ・トランプ大統領がそれぞれカードを持っています。

まさにカードゲームのように、これまで互いにカードを切り合って激しい応酬を繰り広げてきたんです。

 

まずはこのカード。

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「関税引き上げ」です。

互いに高い関税をかけて、相手の輸出を減らしてやろうというのが狙いです。

そしてアメリカはさらに、とどめのカードを切ろうとしています。

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それが「さらに?関税の引き上げ」です。

なんと、一気にほぼすべての輸入品に関税をかけてしまおうという手続きに入っているんです。

これでますます中国の輸出は減ってしまいます。

ただ、戦いは、単なる関税の引き上げにとどまらないものに変わってきています。

先月行われていた米中の貿易交渉で、決裂してしまったんです。

 

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[アメリカは貿易赤字だけじゃなくて、中国の企業支援のやり方にも怒っているんだヨーソロー]

 

アメリカは貿易赤字をなくすことだけではなくて、中国の国の仕組みについても文句をつけ始めたんです。

しかし、中国にとって企業への資金援助は経済成長の根幹に関わるものなので、そこは譲らなかったんです。

そこでアメリカは、さらに次のカードを切りました。

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「ファーウェイ排除」です。

ファーウェイといえば、中国を代表する企業でスマホのシェアで世界2位を誇る巨大ハイテク企業です。

アメリカは政府の許可なしにアメリカの企業がファーウェイと取り引きすることを禁止したんです。

ファーウェイにとっては、スマホにどうしても必要な半導体などの部品を手に入れられなくなって、思うようにモノをつくれなくなるおそれがあります。

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アメリカは、ハイテク分野で中国に絶対に負けたくないと思っているので、徹底的に叩いているんです。

つまり、米中の貿易戦争は、どちらが世界のトップの座につくのかという「覇権争い」なんです。

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もちろん、高い関税をかけ合ったりすれば、当然、企業や消費者も困ります。

その痛みを我慢させてでも覇権を勝ち取りたいという戦いになってきたんです。

 

やられっぱなしに見える中国ですが、ここにきて徹底的に対抗する構えを見せてきました。

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中国が繰り出したカードが「長期戦」です。

何年かかろうが、この戦いに勝ち抜くんだという覚悟を固めたとみられます。

先月下旬、習近平国家主席は中国の“ある場所”を訪問しました。

その際、中国国営テレビのアナウンサーは「今、新たな“長征(ちょうせい)”が始まった。国内外の重大リスクに打ち勝ち、新たな勝利を手にしなければならない」と伝えました。

“長征”というのは、1930年代、共産党が国民党と内戦していた当時行った長期間の遠征のことです。この遠征は非常に厳しいものだったんですが、なんとか耐え切って内戦を乗り越えたんです。この長征があって、今の共産党、今の中国があるというふうに思われているんです。

習主席が訪れていた“ある場所”というのは、長征の出発地点、まさに“聖地”だったんです。

つまり、貿易戦争も厳しい苦難が続くが「長期戦を耐え抜こう」と国民に呼びかけたということです。

習主席の本気度のあらわれだとも言えます。

その証拠に中国の国営テレビ局では、1950年代の朝鮮戦争を扱った映画を、6日間連続で放送するキャンペーンも展開しました。

映画はアメリカに対抗して戦った「抗米(こうべい)」をテーマにしたもので、絶対にアメリカの圧力には屈しないというアピールとも受け取れます。

 

さらに最近“奥の手”とされる、あるカードを切ることをほのめかしているんです。

それがこちらのカード、

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「レアアースの輸出規制?」です。

レアアースというのは、地中にごくわずかに含まれる希少資源です。

スマホの液晶画面など、ハイテク産業に欠かすことのできない資源です。

そのほとんどは中国で生産されていて、ダントツのトップなんです。

そして…

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アメリカも、このレアアースの80%近くを中国に依存しています。

実は習主席、“長征”の出発地点を訪問したその足で、レアアースの生産基地も視察しているんですが、そこに“ある人物”が同行していたんです。

それが、この人。

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中国の劉鶴(りゅうかく)副首相です。

トランプ大統領とも複数回、会談している貿易交渉の中国側の代表です。

貿易交渉の責任者でもある劉鶴副首相が何度もテレビ画面に映り込んでいたんですが、ということは「レアアースが貿易交渉のカードになり得るんだぞ」とアピールしているとも受け取れます。

つまり「輸出をとめるかも」という構えをちらつかせるだけでも、アメリカに対する十分なけん制、脅しになる可能性があるんですね。

 

3週間後には大阪で世界のトップが集まるG20サミットが開かれます。

トランプ大統領と習近平国家主席が同じ会議に出席することになります。

しかし今のところは、首脳会談がやれるかどうか見通しも立っていないんです。

トランプ大統領は会談に意欲を示していますが、習主席は迷っていると思います。

というのも、会談を断ってしまうと今後トランプ大統領とは会えなくなってしまうかもしれません。

一方で、会談をしたところで、何の成果も得られない可能性もあるからです。

 

こうした中、気になる動きがありました。

習主席がおととい行ったスピーチです。

この中で習主席は、トランプ大統領を「友人」と呼びました。

そして「友人も米中が完全に決裂することは望んでいないだろう」と話したんです。

大阪での首脳会談を意識した発言ではないかと思いますが、今のところは、話が急に進むとは考えにくい状況です。

 

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「米中の“はざま”で、日本はどう生きる?」

これを真剣に考えなければならなくなったと思います。

貿易戦争で困るのは、企業、消費者で、関税をかけ合うような争いは、いつまでも続けられないはずです。

ただ、米中があらゆる分野で覇権を争う対立がずっと続くことは、覚悟しなければなりません。

争うアメリカと中国、それぞれとのつきあい方を、難しいですけれども、日本は決めていかなければならない時代に入ったんだと思います。

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これでわかった!世界のいま

NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送

出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ

2019年6月16日のゲストは、藤本隆宏さんです。

 

投稿者:永井伸一 | 投稿時間:15:14


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