2019年02月28日 (木)

米朝首脳会談 アメリカ・北朝鮮のねらい

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2019年2月24日の出演者のみなさんです。

左から、芳川隆一キャスター、国際部池畑修平デスク、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストの虻川美穂子さん、国際部辻浩平デスクです。

 

1回目の米朝首脳会談はシンガポールで行われましたが、2回目の舞台は、ベトナムのハノイです。

現地では着々と準備が進められ、町なかではいたるところにアメリカと北朝鮮の旗が飾られています。

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米朝首脳会談の目的、そしてねらいを、国際部アメリカ担当・辻浩平デスクが解説しました。

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辻)

トランプ大統領のねらいは、非核化への「具体的な第一歩」です。

前回は初の首脳会談だったので会うだけでも意味がありました。

具体的な中身はありませんでしたが、今回は2回目の会談なので、「具体的な第一歩」があるのではないかと見られています。

 

今回の開催地にベトナムを選んだことにも、メッセージが隠されていると思います。

 

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2回目の米朝首脳会談がどうしてベトナムなのか、オレが説明しヨーソロー

 

アメリカは、ベトナムが非核化後の北朝鮮のモデルになると思っているんです。

そして北朝鮮にとってベトナムは、身近な国で会談をやりやすいとも思っています。

 

そもそも北朝鮮はベトナムのようになりたいと思っているのでしょうか?

 

ここからは、国際部朝鮮半島担当・池畑修平デスクも一緒に解説しました。

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池畑)

北朝鮮が密かに「ベトナムがお手本だと考えている」可能性はあります。

キム委員長は、実は以前とは姿勢がだいぶ変わってきていて、「大事なのは軍事力よりも経済力だ」と、はっきり言うようになっているんです。

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今回のベトナム訪問では、「工場などを視察するのではないか」とも見られています。

経済力をつける、つまりはもっとお金を稼げるようになるために、トランプ大統領とまた会うことに前のめりになっていました。

でも、会うからには、手ぶらというわけにはいかない。

つまり、1回目とは違って、非核化で何か具体的な約束をしなければならないということは十分に分かっていると思います。

 

では、実際のところ、非核化は進むのでしょうか。

こちらのセットでこれまでの道のりを振り返ってみましょう。

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荒野にいるのは、北朝鮮の「トラ」ロボットとアメリカの「ワシ」ロボット。

対決モードです。

去年6月の1回目の会談のあと、非核化をどう進めるのか、話し合いは全然うまくいってなかったんです。

 

辻)

それは、立場の違いからです。

アメリカが北朝鮮に求めたのは、最初に非核化をすべて終わらせることです。

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池畑)

一方、北朝鮮は「一気に非核化は無理!」。

少しずつ「資金」や「今の体制をひっくり返さないという保証」といった見返りをもらいながらでないと、非核化はできないと言っていました。

 

辻) 

でも、アメリカからしたら、非核化することでしか北朝鮮を信頼できません。

それは、北朝鮮は何度も見返りだけを受け取って非核化の約束を守らなかった過去があるからです。

だから、同じ失敗をしないためにも、途中で「見返り」は与えられないという立場です。

 

それが、今年に入ると事態は一変。 

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荒野にいる「トラ」ロボットと「ワシ」ロボットに魔法をかけると…

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舞台が、荒野から楽しい遊園地に変わりました。

そして、北朝鮮の「トラ」とアメリカの「ワシ」は、ゆるキャラに変身!

 

今年に入って、アメリカも北朝鮮も態度がやわらかくなったんです。

一体どんな魔法を使ったのでしょうか?

 

池畑)

北朝鮮がかけた魔法は、こちら!

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交渉の担当者を、元軍人から外交官に変えました。

実はこの元軍人についてはアメリカ側が、「頭が固くて話にならないから担当を変えろ」と迫っていたんです。

新しい担当者は国連の軍縮会議に関わっていた人物なんです。

軍縮、つまり兵器を減らしていくやり方をよく知っている、というわけで、もしかしたら「北朝鮮が本格的に非核化に進むための選手交代かも」という見方も出ているのです。

 

辻)

一方アメリカがかけた魔法はこちら!

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「早めに見返り」を与える。

これまでは、「非核化をしてから、見返りを与える」としていましたが、「非核化と同時並行で見返りを与える」というふうに交渉のやり方を大きく変えたんです。

つまり、「見返り」を与えることで、互いの「信頼」を築いて、話を進めようとなっていきました。

 

アメリカは北朝鮮に「経済と核開発を交換すれば、ベトナムのように発展できるよ」と持ちかけているんですね。

 

1回目の首脳会談後は全然うまくいっていなかったのに、アメリカが急に態度を変えたのはなぜでしょうか?

 

辻)

それはトランプ大統領がアメリカで置かれている状況も関係しています。

アメリカ国内で、ロシア疑惑などで追い込まれているので、交渉のやり方を変えてでも、外交で成果を出してアピールしたいというわけなんです。

北朝鮮は見返りをもらえるだけもらって、密かに核ミサイルの開発を進めてしまうのでは?という懸念もありますが、これで止まっていた交渉が前に進み始めたのは確かで、今回の首脳会談でどういう結果になるか注目が集まっているんです。

 

そこで今回のベトナムでの会談に必要なのが、こちらのトロッコです。

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今回の話し合いは、相手から欲しいものがもらえるかどうか、いわばプレゼント交換がうまくいくかどうかなんです。

このトロッコが行き来することで、アメリカと北朝鮮のプレゼント交換を行います。

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辻)

アメリカは、まず用意したのはこのプレゼント。

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「人道支援の一部再開」です。

いま、アメリカは国民の北朝鮮への渡航などを禁止しています。

人道支援の再開というのは、例えば、食糧支援などを行う関係者が北朝鮮に行けるようにするプレゼントです。

これを北朝鮮にプレゼントすると…。

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池畑)

北朝鮮としては、このプレゼントがもらえるなら、「核施設の査察」をお返しするかもしれません。

核施設を国際社会に公開して調べてもらってもいいと思っています。

 

このように、ゆるキャラのプレゼント交換のように、和やかな雰囲気は出しつつ、どのプレゼントを相手にあげようかという腹の探り合いをすることになるのだと思います。

 

そして、小さいプレゼントよりも大きいプレゼントが欲しいのは、アメリカも北朝鮮も同じです。

 

辻)

アメリカが用意した中ぐらいのプレゼントには…

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「朝鮮戦争の終戦宣言」が入っています。

アメリカも参加して戦った1950年代の朝鮮戦争は厳密にはまだ終わっていません。

戦争を終わらせると宣言することで、互いにもう敵だと思っていないと確認できるため、北朝鮮もこのプレゼントを欲しいはずです。

 

池畑)

北朝鮮は「朝鮮戦争の終戦宣言」のプレゼントをゲットするために、こちらのプレゼントを用意しています。

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「核施設を壊して、これ以上、核を作りません」という、「核施設廃棄」です。

そして、北朝鮮が用意している一番大きなプレゼントは、「核・長距離ミサイルの廃棄」です。

これは、これまでにつくったミサイルや核を手放すということです。

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辻)

これに対してアメリカが準備しているのは、「経済協力」です。

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北朝鮮がベトナムのように経済成長をするために必要なものですよね。

このプレゼントに含まれるのが、北朝鮮と韓国が共同で運営していた「ケソン工業団地」の再開です。

再開されれば北朝鮮はお金を得られることになり、かなり嬉しいプレゼントになります。

 

池畑)

どのプレゼントまで交換するのか、実際にトランプ大統領とキム委員長が話し合ってみないとわからないんです。

ただ、北朝鮮はきっと同じ大きさのプレゼント交換ではなくて、あわよくば1つのプレゼントで2つ以上とか、もっと大きなプレゼントをもらおうと戦略を立てているはずです。

 

辻)

一方でアメリカは、仮に小さなプレゼントの交換しか行われず非核化が大きく前進しなくても、トランプ大統領は会談は「成功だった」と言うと思います。

トランプ大統領は、北朝鮮問題についてノーベル賞に推薦されたと自慢気に語っていました。

そのことからも伺えるように、成果そのものはもちろんですが、会談は成功だったとアピールすることも大事な目的のひとつなんです。

トランプ大統領のこうした動きに対して、日本政府は、核ミサイル開発や拉致問題の解決に向けてアメリカの緊密な連携を強調しています。

その一方でアメリカが安易な形で妥協や譲歩しないか、警戒しているという意見もあります。

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池畑)

韓国はというと、北朝鮮にやさしい立場です。

自分たちもいろいろプレゼントをあげたいと考えているので、早く制裁が緩和されればいいなと考えています。

これまでずっと「日米韓の連携」と言われてきましたが、日本と韓国の関係もよくありません。

3か国の連携は、ちょっと危うくなってきています。

 

 最後に、非核化を前に進めるためのキーワードです。

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池畑)

「目指せベトナム」

今回の首脳会談、はたして北朝鮮がベトナムのように大きく発展するきっかけになるのか。

北朝鮮にとっても、そういう発展のチャンスは、トランプ大統領という異色の政治家がアメリカ大統領のトップにいる間に勝負です。

キム委員長の思い切った決断を期待したいところです。

 

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辻)

「型破りな交渉術、成果を出せるか」

北朝鮮の核問題はおよそ25年にわたって解決されてきませんでした。

しかしトランプ大統領という型破りな指導者が登場し、これまでの交渉経過を無視する形でいきなりトップどうしの会談に踏み込むなど、まったく新しいやり方で交渉を始めています。

驚きのトランプ流がどういう展開を見せるか目が離せません。

 

 

[放送後記]

放送後、2日間にわたって行われた米朝首脳会談では、非核化の進め方をめぐって合意に至りませんでした。

 

 

これでわかった!世界のいま

NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送

出演:芳川隆一 坂下千里子 Mr.シップ

2019年3月3日のゲストは、児嶋一哉さんです。

投稿者:芳川隆一 | 投稿時間:16:55


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