2019年02月14日 (木)

アメリカと最悪の関係 イランはいま

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2019年2月10日の出演者のみなさんです。

左から、芳川隆一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストのパックンさん、国際部禰津デスクです。

 

イランの民衆が親米政権を倒した「イラン・イスラム革命」から40年。

いま、イランとアメリカの関係は最悪になっています。

イランの首都テヘランに駐在していたこともある国際部禰津デスクが解説しました。

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都内にある大使公邸で開かれた40年の記念式典には、日本の政財界の関係者が出席していました。

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今年は日本とイランの国交樹立90年の年でもあり、会場ではイラン伝統の料理も振舞われ、多くの人で賑わっていました。

 

 

アメリカとイランの両国の関係を、こちらの装置を使って説明していきます。

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両国が敵対していくと、「緊迫の風船」が膨らんでいきます。

どんな要因で膨らんでいくのか、見ていきましょう。

 

アメリカは、40年前のイスラム革命の直後、イランと国交を断絶し、激しく敵対してきました。

アメリカはイランを「テロ支援国家」と名指しし、イランの宗教指導者はアメリカを「大悪魔」と呼ぶなど、互いに非難してきました。

そして革命から40年となる今年、両国の仲がさらに悪くなっているんです。

 

その要因がこちら。

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アメリカのトランプ大統領です。

イランに厳しいトランプ大統領、その1つが「核合意」をめぐる対応です。

 

イランには、核兵器を開発していた疑惑がありました。

これに対しアメリカは、イランが核開発を大幅に制限する代わりに、イランへの制裁を解除する「核合意」を結びました。

しかし去年、トランプ大統領はこの合意から一方的に離脱したのです。

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トランプ大統領が「核合意離脱」の“空気入れ”を使うことで、両国関係がどんどん緊迫していきます。

さらに、イランへの経済制裁をかつてないほど強化しました。

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アメリカはさらにイランへの圧力を強める構えで、最終的にはイランの体制転覆までも視野に入れているのでは、という憶測まで出ているんです。

 

なぜトランプ大統領は、イランが嫌いなのか?

それには、3つの理由があります。

 

1つ目の理由が、1979年に首都テヘランで起きた「アメリカ大使館占拠事件」です。

40年前の革命で倒されたイランの国王をアメリカがかくまったことに学生たちが怒り、イランにあるアメリカ大使館を444日にわたって占拠したんです。

アメリカは人質にとられた大使館員の救出作戦を行いましたが、失敗しました。

当時のカーター大統領の権威は失墜し、次の選挙で再選できませんでした。

この事件は、アメリカ国民に深い傷跡を残しています。

アメリカの世論調査を見ても、ここ30年間、「イランが嫌い」という人は、常に8割近くに上っています。

この事件は、トランプ大統領も含めた多くのアメリカ人が持つ、イランへの不信感の原点なんです。

 

一方のイランは、この大使館こそ「大悪魔・アメリカ」の象徴だと主張してきました。

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現在、事件のあった大使館は、反米の思想を普及させる博物館としても利用されています。

施設では、革命前からアメリカが中東でスパイ活動を展開し、民衆を制圧していたとする主張が展開されています。

当時の博物館の館長は取材に対し、

「アメリカとイランの関係はオオカミとヤギのようなもの。共存はあり得ない。」

と、言い切っていました。

 

トランプ大統領がイランを嫌いな2つ目の理由が、「イラン派の拡大」です。

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革命で反米政権を起こしたイランは、周辺諸国に「アメリカの支配から脱却しよう!」と呼びかけていました。

そして40年経ったいま、イランの影響力は、イラク、シリア、レバノン、イエメンにまで広がっているとされています。

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イランにとっては影響力を広げることは、アメリカなどの敵国が攻めてこないように牽制し、自分を守る意味合いがあります。

 

一方、アメリカから見ると、これは反米主義の拡大で、脅威に感じています。

そのため、トランプ大統領は、サウジアラビアなどイランの周辺にある親米国家との連携を強化しているんです。

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そして3つ目の理由が、「イスラエル」です。

 

イスラエルはイランと激しく対立していて、軍事的な緊張が生まれています。

そんなイスラエルは、アメリカにとって中東の中でも特別な、最大の同盟国です。

だから、「同盟国イスラエルをイランから、守らなければならない」というわけです。

さらにトランプ大統領の重要な支持基盤はイスラエルを重視するキリスト教の最大勢力です。

イランに厳しい姿勢を示すことは、大統領選挙の対策の意味合いもあるんです。

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「大使館占拠事件」「イラン派の拡大」「イスラエル」

こうしたことを背景に、トランプ大統領はイランにこれまでにない厳しい制裁を加えています。

 

その影響でイランは経済が大きく落ち込み、耐え忍んでいる状態です。

今は持久戦に持ち込んで、トランプ政権が変わるのを待っているのかもしれません。

ただ、制裁の影響で経済がさらに悪化すれば、そうは言ってられなくなるかもしれません。

イランの今の大統領は、対話路線を打ち出した「穏健派」のロウハニ大統領ですが、今後「アメリカと戦うべき」という「強硬派」の声が大きくなるかもしれません。

その「強硬派」の代表格が「革命防衛隊」という組織です。

 

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イランの革命防衛隊については、せかいまを防衛しているオレが説明するヨーソロー

 

イラン国内で取材をしていると、革命防衛隊の傘下にある民兵に密告され、職務質問されることもありました。

体制維持を担う任務を持つ革命防衛隊は、イラン社会に根付いている存在なんです。

また、革命防衛隊は国際問題に発展する事件にも関わってきました。

2011年には経済制裁に激怒したイランの若者たちが、イギリス大使館を襲撃しました。

これをきっかけに、イランとイギリスが一時国交断絶状態に陥ったのですが、これも革命防衛隊の傘下にある民兵の犯行でした。

 

今後、トランプ大統領が極端に圧力を強めれば、その反動で革命防衛隊などの強硬派勢力が勢いづく可能性はあります。

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現状では、アメリカとイランの関係が改善する見通しは見えません。

両国は、ただでさえ国交も無いだけに、偶発的な事件や事故が起きれば、破裂しかねません。

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大事なのは、「不信感の連鎖を断ち切る」ことだと思います。

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説明してきたように、アメリカの「核合意の離脱」や「経済制裁」、イランの「大使館占拠事件」や「反米主義の拡大」などが積み重なって、互いの不信感は募るばかりです。

しかし、前のオバマ政権の時には、アメリカとイランの両外相との間で、直接話ができる関係が築かれ、問題を解決する場面も見られました。

さらにイランでは革命から40年が経ち、反米にとらわれない若者も増えています。

「不信感の連鎖を断ち切る」ために対話の機運をつくることが重要だと思います。

 

 

 

これでわかった!世界のいま

NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送

出演:芳川隆一 坂下千里子 Mr.シップ

2019年2月17日のゲストは、初登場!光浦靖子さんです。

投稿者:芳川隆一 | 投稿時間:14:00


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