モディ首相の足元が... 揺らぐインドいま何が
2020年2月23日の出演者のみなさんです。
左から、永井伸一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストのトラウデン直美さん、国際部の花澤雄一郎デスクです。
Mr.シップ「ヨガに挑戦中だヨーソロー」。
「おいおい、伸さん足元がグラついてるぞ~?」。
ヨガの本場といえば、インド。
そのインドではいま、デモが起きたり、バスが燃えたり…モディ首相の足元がグラついて、と~ってもツラそうなんだって!
モディ首相の状況を、こちらのカレー屋さんのセットを使って説明していきます。
こちらはモディ首相が店長を務めるカレー屋さん。
「国民」というお客さんのため、おいしいカレーを作ろうとしています。
カレー鍋には「辛さ(からさ)メーター」をつけました。
メーターを見ればモディさんの「つらさ」もわかります。
どんなカレーが出来上がるのか、ニューデリーの小林潤支局長が解説しました。
インドカレー屋さんの特徴ですが、お客さんである人口が13億もいることです。
人口は10年以内に中国を抜き、世界でトップになると言われています。
経済の規模も2030年までに日本を抜いて世界3位になると見られています。
その大国を率いるモディ首相、今、とっても「辛い(つらい)」状況にあります。
なぜかというと、国民に受けると思ってやった政策に思わぬ反発がわき起こったからです。
スタジオのカレー鍋を使って説明します。
こちらのモディ首相特製スパイスには「宗教」と書かれています。
この特製スパイスを鍋の中に入れてみると…
辛さメーターが上がり「中辛」になりました。
どういうことかと言うと、モディ首相は、宗教をめぐるある政策から国内で大きな反発を招いているんです。
インドは、異なる宗教が入り交じっています。
その特徴は、この国旗にも表現されています。
上のサフラン色がヒンドゥー教、下の緑色がイスラム教、そして中央の白色が、キリスト教や仏教など、そのほかの宗教を示しているんです。
こういう背景もあって、インドの憲法は「すべての宗教は平等だ」と掲げています。
そして「政治はいかなる宗教にも中立でなければならない」と定められています。
しかし、モディ首相は、そうした考え方を覆しかねない政策を打ち出したんです。
[モディ首相が打ち出した「国籍法の改正」とは何なのかオレが説明しヨーソロー]
インドは、国民の8割がヒンドゥー教徒。
インドの周りは、イスラム教徒がたくさんいる国です。
アフガニスタン、パキスタン、バングラデシュでは、ヒンドゥー教徒やキリスト教徒など多くの人たちが迫害を受けたとして、インドに逃げて来たとされています。
中には、不法移民になってしまった人も…。
そこでモディ首相は、国籍法という法律を改正して、インド国籍を与えることにしました。
条件は、2014年までにインドに来た人で、すでに5年以上住んでいるヒンドゥー教徒、キリスト教徒、仏教徒など6つの宗教だけ。
イスラム教徒は対象外にしました。
モディ政権は「あくまで宗教的に弱い人たちに国籍を与えるのが目的だ!イスラム教徒の排除を意図したものではない」と言っているんです。
カレー鍋を「中辛」にしたモディ首相の特製スパイスは「国籍法の改正」でした。
モディ首相の堅い支持基盤がヒンドゥー教の教えに基づいた国づくりを目指す“ヒンドゥー至上主義”の人たちだからです。
国籍法改正も、この人たちには支持されてるんです。
しかし、国民からの反発が強く、抗議デモは各地で2か月以上たった今も続いています。
ニューデリー支局の太田雄造記者が取材しました。
イスラム教徒の学生などをたたく、インドの治安部隊。
逃げ惑う学生に、しつこく暴行を加えます。
衝突が起きた大学の図書館は、入り口の扉が壊され、そして中もめちゃくちゃになっています。
激しい衝突の跡は、2か月以上たった今も、残されたままです。
去年12月、イスラム教徒のインド人が多く通う大学で、抗議デモが行われました。
国籍法の改正によってイスラム教徒への差別が広がり、社会から排除されていくのではないかと学生達が不安を募らせたのです。
「宗教によって少数の人を差別している!」。
バスに火をつけるなど一部が暴徒化したため、治安部隊が大学に突入し、大規模な衝突となりました。
デモに参加した大学生で、イスラム教徒のナイラ・カーンさんは、治安部隊と学生の衝突に、大きなショックを受けました。
「30~40発の催涙弾が発射されたはずです。多くの学生が意識を失い、ぜんそくの発作を起こしていました」。
カーンさんは同じインド国民でありながら、イスラム教徒は差別や攻撃の対象になっていると感じています。
SNS上ではイスラム教徒への非難や中傷が増え、テロリストよばわりする書き込みもあります。
「インド人のイスラム教徒は差別され、よそ者扱いされていると感じます」。
デモは今も続いています。
「すべての宗教は平等だ」という理念が揺らいでいることに、危機感を抱いているからです。
抗議の声を上げているのは、イスラム教徒だけではありません。
カーンさんの親友のリヤ・ドゥベイさんは、ヒンドゥー教徒です。
親友の苦悩を目の当たりにして、デモに参加するようになりました。
「毎日抗議する彼女たちと同じように、国籍法改正には反対だと訴えたいです」。
カーンさんとドゥベイさんは、幼い頃からいつも一緒でした。
このままでは、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒が共存できる社会が失われるのではないかと、おそれています。
「政府は社会を分断しようとしています」。
「私は親友を支え、政府が行う間違った法改正に反対します」。
カレー鍋の火が強くなり、カレーの温度が上がりました。
すると辛さも“大辛”に。
「国籍法の改正」は、イスラム教徒だけではなくて、本来モディ首相を支持するはずの一部のヒンドゥー教徒の反発まで招いたわけです。
カレーはすでに「大辛」ですが、さらにカレーを辛くしてしまったスパイスがあります。
それがこちらの「経済」。
経済のスパイスをふると、出てきたのは「モディノミクス」。
「モディノミクス」とは、モディ政権の経済政策のことです。
具体的には、とにかく外国企業をたくさん呼び込んで経済を成長させようとしました。
そのためにまず、外国企業が入ってくるときの規制を緩めました。
さらに税金の制度が複雑で外国企業には分かりにくかったので、これを単純にするために「消費税」を導入しました。
しかし、危機感を持ったインド企業の反対で規制緩和は進んでいません。
さらに消費税の影響で物価が上がり、消費が落ち込んでしまいました。
インド経済には急ブレーキがかかったんです。
“モディノミクス・スパイスは結果的には辛かった”ということです。
メーターも“激辛”に上がりました!
インド国民にとって、このカレーはあまりにも辛すぎる状態になっています。
これ、実は日本にとっても、いい状況ではありません。
インドの大きな市場を狙って、自動車関連や小売り業などおよそ1500の日系企業が進出しています。
インド経済の行方は日系企業にも大きく影響します。
モディ首相の料理の腕が問われています。
このカレーをなんとか美味しく出来ないのでしょうか。
そこでモディ首相、カレーの辛さを薄めようと、ある「隠し味」を用意しています。
「初訪問」と書かれたヨーグルト!
インドは、あすから、アメリカのトランプ大統領を国賓として初めて迎えるんです。
現地では、トランプ大統領を歓迎するポスターなど、さまざまな準備が進められています。
街中には、トランプ大統領とモディ首相の絵も描かれました。
こちらもそのひとつ、道路脇に建設された「壁」。
スラム街を隠すために作られました。
トランプ大統領に国の貧困といったマイナスの部分を見せたくないのだと思います。
モディ首相としては、トランプ大統領といい関係を築いていることを国内外にアピールしたい考えです。
得意の外交で、国内の政治の混乱に向けられる人々の目をそらしたいという思惑もありそうですが、本当に辛さを和らげる「ヨーグルト」になるのか、注目です。
きょうのキーワードは「真の超大国になれるか?」。
インドは潜在力は高く、国内からは「超大国を目指す」という声もよく聞かれます。
大国としての自信を深める中で、インド国旗が示す理念のように、すべての人たちが受け入れられる社会を作っていけるかつまり「真の意味での超大国になれるか」今後のモディ首相の手腕が試されています。
【この日の時間割】
1.候補者選び第3戦 最新情報(アメリカ)
2.モディ首相の足元が… 揺らぐインドいま何が
3.中東の紛争リアルに再現 スパイドラマ人気の秘密(イスラエル)
これでわかった!世界のいま
NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送
出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ
2020年3月1日のゲストは、井頭愛海さんです。
投稿者:Mr.シップ | 投稿時間:17:18 | カテゴリ:せかいま美術館 | 固定リンク