1.イギリスEU離脱 2.イスラエル総選挙
2019年4月7日の出演者のみなさんです。
左から、国際部佐伯敏デスク、ゲストのサヘル・ローズさん、坂下千里子さん、Mr.シップ、永井伸一キャスターです。
この日の時間割です。
1時間目「イギリス EU離脱 最新情報」
2時間目「どうなる?イスラエル総選挙」
3時間目「自撮りに悩むウォンバットの島」
1時間目のイギリスのEU離脱ですが、まずはおさらいです。
国民投票でEU離脱を決めたイギリスですが、スムーズな離脱を目指すためにもどういう手順で離脱をするのかなど、あらかじめ決めておく必要があります。
そこでメイ首相は、そういった案をまとめた「離脱協定案」をイギリス議会に示し、承認してほしいと求めました。
ところが協定案は3回立て続けに否決されました。
今のままいくと、離脱の日は今月12日。
メイ首相はまさに崖っぷちなんです。
そこでメイ首相は「議会の承認を得られる案を一緒に考えましょう」と呼びかけました。
その呼びかけた相手というのが最大野党・労働党のリーダーです。
この野党は、メイ首相の協定案にずっと反対を続けてきました。
他の政策でも立場が異なり、議会では普段からお互いを激しく批判し合う関係です。
メイ首相と野党のリーダーは、話し合いを続けていますが、今のところ話はまとまっていません。
野党のリーダーが求めているものは「離脱後も貿易はこれまで通りEUのルールに合わせるべき」。
メイ首相は「EUのルールには縛られない。イギリスの考えで自由に貿易がしたい」。
これだけ隔たりが大きいので話し合いをまとめるのは簡単ではありません。
話し合いがまとまらなかった場合の次の手もメイ首相は示しています。
議会に対して様々な選択肢を示して「多くの賛成が集まった案を採用します」というものです。
しかし、メイ首相が野党に近づいたことで、身内の与党の中からは激しい反発が起きています。
野党が求めているようなEUとの関係をそれなりに残す案に舵を切れば、離脱強硬派と言われる議員たちはメイ首相のもとから離れていきます。
その動きが強まればメイ首相を支えてきた官僚や議長も去ってしまうかもしれません。
残された時間がほとんどない中で、メイ首相はEUのトップに離脱の日を6月30日にしてほしいと手紙を送りました。
EUは今月10日の水曜日に首脳会議を開いて対応を話し合うことにしています。
今週も非常に厳しい1週間となりそうです。
2時間目はこちら。
トランプ大統領と家族ぐるみの付き合いをしているイスラエルのネタニヤフ首相。
国際部中東担当・佐伯敏デスクが解説しました。
イスラエルではあさって、国会議員の選挙、総選挙が行われます。
ネタニヤフ首相がこの後も続けられるのか注目されているんです。
ネタニヤフ首相は13年も首相をやってきていて「強いリーダー」として知られています。
国を守るためには妥協しない、怖いもの知らずの振る舞いや、圧倒的な存在感から国民からは「キング」なんて呼ばれてもいるんです。
イスラエルでは強さ=「マッチョ」であることはリーダーには欠かせない条件なんです。
その理由を地図で見てみましょう。イスラエルの位置はここです。
およそ70年前に国ができてから、周りを敵に囲まれ、戦い続けてきたから強さが求められているんです。
その原因こそが、ニュースにもよく出てくる「パレスチナ問題」です。
[中東のニュースでよく聞く「パレスチナ問題」が何なのかオレが説明しヨーソロー。]
イスラエルは基本的にこの白い線で囲まれた部分です。
そして私たちがパレスチナと言っているのは濃い黄色の部分。
ここにはアラブ人が住んでいて、将来パレスチナという国を作ることを目指してきましたが、今も国はできていなくて、実質的にイスラエルに支配されているんです。
シップの解説の中でもあったように、仲よくしていこうということで話がついたはずだったのに、未だに争いが絶えず、むしろ憎しみあっています。
両方に理由がありますが、より力が強いイスラエル側の理由はというと、ネタニヤフ首相の姿勢です。
“パレスチナとは仲よくしたくない”という姿勢をずーっと貫いているんです。
しかし、ネタニヤフ首相は今回の選挙で厳しい戦いとなっています。
なぜかというと、強力なライバルが登場したんです。
今回の選挙でネタニヤフ首相と争っている、ガンツさんです。
実は元イスラエル軍のトップで、知識も経験も十分。
周りを敵に囲まれているイスラエルでは軍は絶対的な存在なんです。
だからトップは広く尊敬を集めています。
ただこの2人、同じマッチョでも大きな違いがあります。
ガンツさんは「パレスチナ側と争いを解決するために話をしよう」と訴えているんです。
軍のトップだったからこそ戦争を避けることの大切さも理解しているのではないでしょうか。
パレスチナと争いで解決してほしいという人たちは、ガンツさんに期待しているんです。
そもそも、イスラエル国内の人口の25%はパレスチナに住む人と同じアラブ人。
イスラエルではユダヤ人とアラブ人が“共存”しようという取り組みも行われているんです。
エルサレムにある小学校では、ヘブライ語とアラビア語の2人の先生が一緒に授業を行い、使う教科書も2冊です。
イスラエルではとても珍しい学校です。
この学校ができたのは20年あまり前。
「小さい頃からお互いを理解し合い、友情を育んでほしい」という思いから保護者の団体が作りました。
しかし4年前、小学校の壁には人種差別的な言葉が落書きされ、さらに校舎が放火されました。
アラブ人との共存は認められないというユダヤ人から激しい反発を受けたのです。
それでも「対立では現状は変えられない。共存すべきだ。」と考える保護者は増えています。
こういう動きもあって窮地に立たされたネタニヤフ首相ですが、そこに“大事な親友”のこの人がサポートに現れました。
アメリカのトランプ大統領です。
手に持っているのは「ゴラン高原」と書かれたお肉。
ゴラン高原とは、50年以上前にイスラエルがシリアと戦争して一方的に占領した領土です。
国際社会は「ルール違反だ」と認めてきませんでしたが、トランプ大統領はそれをイスラエルの領土だということにしてしまったんです。
イスラエルの人たちは大歓迎、思わぬ追い風にネタニヤフ首相もこの表情。
ゴラン高原は占領地といっても緑の豊かな場所で誰でもいくことができ、イスラエル人にとっては人気の「お出かけスポット」なんです。
そのゴラン高原をイスラエル側から見ると、こちら。
一段高くなっているため、敵に見下ろされてしまいます。
イスラエルが軍事的にも手放したくなかったのがよくわかると思います。
このトランプ大統領の決定に、国際社会はみんな反対しています。
でもネタニヤフ首相にとっては、選挙で有利に働く材料となりました。
最後に2時間目のキーワードがこちら。
「引き返すなら今が最後」。
パレスチナをこれからも力で押さえつけるのか、それとももう1度話し合いに賭けるのか。
もしネタニヤフ首相が今回の選挙で勝てば、この先、引き返すことは難しくなります。
選挙の結果は、イスラエルの人たちだけではなく、占領されているパレスチナの人たちの運命も左右してしまいます。
イスラエルとパレスチナはどこに向かうのか、総選挙は中東の未来を占うものになります。
これでわかった!世界のいま
NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送
出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ
2019年4月14日のゲストは、濱田龍臣さんです。
投稿者:永井伸一 | 投稿時間:13:00 | カテゴリ:せかいま美術館 | 固定リンク