2018年11月15日

2018年11月15日 (木)

第1次世界大戦から100年

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2018年11月11日の出演者のみなさんです。

左から、芳川隆一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストの児嶋一哉さん、国際部佐伯敏デスクです。

 

アメリカで行われた中間選挙では、自国の利益を優先するトランプ大統領の主張や、国の分断が際立つ形になりました。

こうした風潮が広がっているのは、アメリカだけではないようです。

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国際部ヨーロッパ担当・佐伯デスクが解説しました。

 

今のヨーロッパの雰囲気が、20世紀前半の戦争の時代に似ているという声が、世界のリーダーや専門家の間から出てきているんです。

 

この日、(番組放送後の)日本時間の午後7時から、第1次世界大戦終結100年の式典がフランスのパリで行われました。

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「大きな悲劇を繰り返さない」という願いが込められた式典です。

第1次世界大戦は4年間に及び、1800万人もの人が亡くなったと言われています。

世界の約70か国の代表が集まって犠牲者を追悼しました。

日本にとって8月15日の終戦の日が大切な日のように、ヨーロッパの人々にとって11月11日は「戦争をしない」という誓いを新たにする、特別な日なんです。

 

今回の式典ですが、「戦争の悲惨さを忘れない」というメッセージの裏に、実はもうひとつのテーマがあるんです。

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それが、「“協力”があぶない」ということなんです。

 

世界大戦のあとヨーロッパは、「問題が起きても、いろんな国で話し合って解決しよう」という考えで仲良くしてきました。

ところが最近、自分の国の都合のほうが大事「自分の国が第一」という考えが、もくもくと姿を現してきました。

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この状況が、20世紀前半の世界大戦の時代に似ている、ということなんです。

 

ヨーロッパをこちらの「ヨーロッパ村」に例えて説明しましょう。

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時は100年前、第1次世界大戦の直後。1つの家が1つの国を表します。

第1次世界大戦でボロボロになったヨーロッパは、「もう絶対に戦争はやめてお互いに助け合おう」と決意を新たにしていました。

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ところが、1929年ニューヨークのウォール街から始まった『世界恐慌』でヨーロッパも不景気になり、失業者が増加しました。

ヨーロッパの国々は、お互いに助け合う余裕を失って、自分の国がうまくいくことだけを考えるようになっていきます。

そして、「自国が第一」だと考えるリーダーがあちこちの国に出現し、あちらでも、こちらでも、利害がぶつかるようになっていたんです。

 

その結果、あんなに反省した第1次世界大戦から、たった20年しか経っていないのに、2回目の戦争「第2次世界大戦」になだれ込みました。

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2度の大戦で、多くの命が奪われたあと、ヨーロッパの国々は考えました。

そもそも、家と家が別々だから戦争になるんだ。

みんなで一緒に住んで仲間になれば、戦争は防げるのではないか、と。

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「ヨーロッパ村を作り直そう」ということで、新しい家の建設に乗り出しました。

 

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[2つの大戦を経験して、高い理想のEUができたんだヨーソロー]

 

高い理想を目指し、「ヨーロッパ村」が「EUマンション」になりました。

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率先して今のEUマンションに入ったのは、2度の大戦でいずれも敵味方に分かれて戦ったフランスとドイツです。

はじめは6か国だった入居者が今では28か国になりました。

フランスとドイツが中心となって共通のルールを決めて、問題にはみんなで立ち向かい、「他国と協力」する仕組みを作っていました。

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ところが、2010年前後、今度は「リーマンショック」という世界的な不景気や、「ユーロ信用不安」という経済の混乱に襲われました。

この結果、経済的に弱いEUの国々は借金だらけになりましたが、「他国と協力」を掲げているEUマンションは、借金で困り果てた国々をみんなで助けます。

その代わり、マンションの厳しいルール(規約)を課しました。

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例えば、ギリシャにはお金の使い方にかなり厳しく注文をつけました。

その結果、国民は厳しい生活を強いられることになりました。

だんだんと自分の判断で自由にお金を使えないことを窮屈に感じ、不満が噴き出しました。

 

EUマンションで起こる問題は、こうした経済問題だけではありません。

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シリアの内戦などで逃れてきた100万人を超える移民や難民が、次々とEUマンションにやってきたのです。

「人に優しく」を大事にするEUでは、難民や移民は受け入れるのがルールです。

しかしあまりに多くの人たちが押し寄せたので、EUは国ごとに受け入れ人数を割り当てようと言い始めます。

ところが、もう移民は受け入れたくないという国々が猛反発し揉めてしまいました。

例えば、イタリアです。

地中海沿いにあるイタリアは、中東やアフリカからのいわば“EUの玄関口”のひとつで、到着する難民が多すぎて困っていました。

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そんなイタリアで、難民受け入れに反対する新政権が誕生しました。

副首相は「イタリアを難民キャンプにはさせない」などと発言していて、トランプ大統領の政策と重なります。

このように「他国と協力」を掲げるEUマンションの中から「自分の国が第一」という主張が吹き出したのです。

同じようなことが、同じく玄関に近いハンガリーでも起こっています。

ハンガリーの首相も、トランプ大統領のような主張をしていて、移民や難民のことを「イスラム教徒の侵略だ!」とまで言っています。

他にも、チェコやポーランドも、EUに反旗を翻しているんです。

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そうなるとまたもやEUマンションから噴き出すのはこちら。

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「自分の国が第一」という雰囲気です。

こうした「自分の国が第一」という国々では、自分たちと異なる宗教の移民や難民が増えたことで、伝統的な「ヨーロッパらしさ」が壊されてしまうという不安にまでつながっています。

 

オーストリアなどでは、ヨーロッパらしさを取り戻そうという動きが出ています。

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お互いに助け合おうという考えで始まったEUでしたが、その内部から次々に吹き出す「自国が第一」という考えに今、揺るがされているのです。

 

このような煙がのぼるようす、前にもありましたね。

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こうなると、EUマンションの中心メンバー、フランスやドイツは心穏やかではないですね。

2つの大国は「他国と協力」という考えのもと、ルールを破る住民たちをたしなめて、なんとか住民の団結を保とうとしてきました。

ところが、ドイツやフランスでさえも足元は揺らいでいるんです。

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ドイツではメルケル首相の与党が地方選挙で続けて敗北し、難民の受け入れに反対する政党が勢力を伸ばしました。

フランスも最近の世論調査でEUに批判的な政党の支持率がマクロン大統領の政党を上回り、ショックが広がっています。

さらに今年に入って、EUの屋台骨を揺るがしたのが、離脱を表明したこの国イギリスです。

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EUの厳しいルールから離れて、自分たちのルールで国を動かしたいというわけです。

 

このようにEUマンションがなんだかグラグラしてきた中、第1次世界大戦の終結100年式典を迎えたわけです。

 

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「自分の国が大事」というリーダーたちを選んだのは有権者。

世界がつながって便利に豊かになってもその影にある格差やひずみが解決されないことが「他国と協力」という考え方を行き詰まらせ、「協力」が危機に瀕しているんです。

でも、今の世界が直面する「地球温暖化」などの問題は、世界が協力しないと絶対に立ち向かえません。

「協力して解決」することをやめないためには理想を振りかざすだけではなくて、どうやったら協力が続けられるのか、もっときちんと向き合って考えていかなければいけません。

 

 

 

これでわかった!世界のいま

NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送

出演:芳川隆一 坂下千里子 Mr.シップ

2018年11月18日のゲストは、初登場!芋洗坂係長さんです。

投稿者:芳川隆一 | 投稿時間:18:10 | カテゴリ:せかいま美術館 | 固定リンク


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