


「世界遺産への招待状」、第31回はスペイン・カナリア諸島。常夏の楽園カナリア諸島はコロンブスが新大陸を目指した時に立ち寄るなどヨーロッパと新大陸を結ぶ重要な補給基地でした。当時、造られた街が文化遺産「サンクリストバル・デ・ラ・ラグーナ」で新大陸での都市造りのモデルになりました。古きスペインの面影が残る街は、愛にあふれた街でもあります。その象徴が、音楽で恋の応援をしている楽団。今回は愛の告白をする青年に頼まれ、彼女の家に出向きますが、うまくいくのでしょうか、お楽しみに。
さらに、カナリア諸島にはスペインの文化だけでなくグアンチェ族という先住民の文化も数多く残っています。その一つが無形文化遺産「ラ・ゴメラ島の指笛言語」です。今でもヤギ飼いの間で使われている「指笛」は、4つの母音と4つの子音を組み合わせることで伝達し、言葉のように普通の会話が出来ます。また険しい谷を隔てて3kmも離れた人とも会話が出来、重要な通信手段として使われてきました。しかし、電話が発達した今、「指笛」は廃れつつあります。今回はヤギ飼いの家族に密着しながら、「指笛」を子孫に残そうとする活動を紹介します。男女の仲を結ぶ楽団、そしてヤギ飼いをつなぐ指笛、人と人の心を結ぶ島の穏やかで豊かな暮らしを描きます。
スペインで、知り合いに「今度カナリア諸島に行く。」と言えば、全員が「いいよな、暖かくて。」と羨ましがられる常春の島々。夏はもちろんのこと、ヨーロッパの寒い冬から逃れるための避寒客で冬も大賑わい。日は照っているが肌寒い日にセーターなどを着て歩いていると、太陽を求めて北欧から来ている人たちはノースリーブなんてことも珍しくありません。年間の観光客が1000万人でまさにヨーロッパのハワイと言って良いでしょう。
そのカナリア諸島の中でもゴメラ島はまさに怪獣(ゴジラとガメラ)がいるような怪しい島。深い谷、切り立った山肌、異様な大岩、島の中央部にある密林。そんな厳しい自然環境の中でゴメラ島の人々は独特の文化を養ってきました。その一つが無形文化遺産にもなった「指笛」です。いくら携帯電話が発達しても電波が届かないところでは何の役にもたちませんし、大声で叫んでも聞こえる範囲は数百メートルほど。そこで指笛の登場です。指笛なら電波が届かない所でも電源がなくてもすぐに使えて、しかも届く距離も2キロから3キロメートルと長いので大変便利。取材中にもよく指笛が聞こえてきました。「いまから車の修理に行くよ。」「分かった。終わったらすぐに帰っておいで。」などと、実際に大人から子供まで使っており、生活に密着しています。
大変だったのが指笛での会話の通訳でした。私もスペイン語は分かりますが、指笛の会話を理解するのは至難の業。指笛を吹いてもらったり聞こえるたびに「何て言ったの?」「今のはどういうこと?」といちいち聞かなければなりません。指笛は吹くのも難しいが、会話を理解するはさらに難しいと実感しました。それで興味を持って指笛を練習し始めた私に、外国人が指笛を練習するのは珍しいとみえて、「指の使い方はこうだよ。」「舌を丸めて、力まずに!」と島の人たちは熱心に教えてくれました。
この指笛の伝達方法(子音4つ、母音4つ)なら日本語も話すことができるそうで、近い将来この指笛を使ったネットワークが世界中に広がるかもしれません。
