


「世界遺産への招待状」、第20回はトルコ。東洋と西洋がまじり合う、独特な国の個性あふれる世界遺産をめぐります。
まずは、アジアとヨーロッパをつなぐかけ橋、イスタンブールへ。4世紀から1600年もの間、ビザンツ、オスマン両帝国の都として栄えた街。そこに残された奇跡の大建造物「アヤ・ソフィア」から、東西文化が融合した独特な街並みが誕生した歴史をひもときます。
次にトルコ東部の山岳地帯に築かれた、紀元前の遺跡「ネムルト山」へ。標高2150mの山頂に突如現れる巨大なピラミッドのような遺跡の全貌に迫ります。東西にならんだ謎めいた石像から、この地に生きる人々の中に、異なる文化を受け入れ、融合させていく「寛容さ」がなぜ生まれたのかを探っていきます。
さらに、トルコの伝統舞踊で、ユネスコの無形文化遺産になっている「セマー」という不思議な舞いにも出会います。その神秘的な舞いには、この国の人々が大切にしてきたある精神性が隠されていました。
最後は、あの人気の世界遺産、カッパドキアへ。大自然の営みが作り出した岩の大地でたくましく生きる家族の暮らしを追います。乾燥した岩だらけの厳しい土地で命をつないでいくために、大切に飼ってきたというたくさんのハト。実は、カッパドキアは、ハトなしでは語れないほど、人の暮らしとの深い結びつきがあったんです。一体、どんな関係が?それを伝えたのは誰?と探っていくうちに、意外な歴史と、文化の融合が見えてきます。
様々な文化がまじり合う地で生まれた、魅力あふれる世界遺産の数々を訪ねる旅。東洋と西洋の狭間で生き抜いてきた人々の営みにふれながら、この国に寛容さが芽生えたことの意味を考えていきます。
トルコ料理はフランス料理、中華料理と並んで世界三大料理と言われています。いつ、誰がそんなことを言い出したのか定かではありませんが、今や多くの人が知るところとなりました。
温暖な気候に恵まれて四季があり、広大な大地には険しい山々もあり、しかも三方を海に囲まれたトルコは、海の幸、山の幸、野菜や果物、豆類、穀物類、乳製品と食材がとても豊富。ビザンツ帝国、オスマン帝国の首都として1600年近くも豪華けんらんな宮廷文化を花開かせたイスタンブールでは、世界各地から届けられた珍しい食材を使って、当代一流のシェフたちが腕を競いさまざまな宮廷料理を編み出しました。一方、地方では遊牧民たちの知恵にあふれた素朴な調理・保存方法が伝えられてきました。それらが長い歴史の中で融合し淘汰されて今日のトルコ料理となったのですから、トルコの人たちが三大料理どころか「トルコ料理は世界一」と自慢してはばからないのもうなずけます。
ロケでは、限られた時間や制約の中でできる限り美しい映像を求めて、夜明けと言わず深夜と言わず自然と向き合い、取材協力者には、その素顔に迫り通りいっぺんでない思いのこもった言葉を引き出せるよう、誠意を尽くして接します。日本から遠く離れて文化・習慣・言葉の異なる環境の中でそんな日々を3週間以上も続けるクルーに、せめて奥深いトルコ料理のあれこれを味わってほしい。おいしいものを食べると心から幸せになれる私がコーディネート業務のかたわら密かに心を砕いていることです。実際、私たちクルーの楽しみは一日の取材を終えて、その日のロケの感想や印象、明日からどうするかなどをさまざま語りながら取る夕食かもしれません。
今回の取材でもトルコ料理を満喫しましたが、今も心に残るのは、カッパドキアで、畑で摘んだばかりのカボチャの花に材料を詰めて下ごしらえをしていたハティジェさんが家で炊いてくれた「カボチャの花のドルマ」。そして、山小屋合宿さながらとなったネムルト山の宿泊所で、撮影を終えて山を下りて来た私たちに「どうだった山頂は? 風強かったかい?」と温め直して出してくれた料理人のジュマリさんの煮込み料理でした。どんな高価な食材にも、どんな凝った料理法にもかなわない極上の味を料理に添えてくれたのは、ごつい機材を携えて日本からやってきた私たちを暖かく受け入れてくれた彼らの寛大な心とあふれる笑顔だったのです。
(注)写真:前列一番右がコーディネーターの細川直子さん、後列左から2人目が料理人のジュマリさん
