

インド西部のチャンパネールは、4世紀頃からヒンドゥー教の王国として栄えた町です。近くのパーヴァガドゥの山には古い寺院があり、現在も聖地として多くの信者が訪れます。しかし、町中に残っている遺跡はイスラム教のモスクです。15世紀末、イスラムの王国が緑と水が豊かなチャンパネールを攻め落とし首都としたからです。
「シリーズ世界遺産100」では、ヒンドゥーの地に建つイスラム教のモスクを紹介します。このモスクはイスラム様式ではなく、インドの伝統的な工法が用いられた独自の建築様式によって建てられています。建設にあたったのは、イスラムの王の命を受けた地元の職人たちです。しかし、彼らはヒンドゥー教寺院しか造ったことがなく、イスラム建築の工法を知りませんでした。そこで、職人たちはインド伝統の技術を駆使してモスクを造ったのです。例えば、モスクのドームは柱で支えられる構造になっています。イスラム様式では柱を用いず石を積み上げて造るので、ここのモスクは異色といえます。また、礼拝所を飾る装飾には、幾何学模様のイスラム装飾ではなく、インド文化の象徴ともいえる蓮の花やヒンドゥー教の儀式で使われる卍の模様や朝日の印が使われています。2つの文化が融合し、「インド−イスラム様式」という新しい芸術が誕生したのです。それは、新しい支配者の下でも伝統を守った、名もなき職人たちの仕事でした。

