

インド中央部のサーンチーは、紀元前3世紀から12世紀頃かけて栄えた、古代仏教の一大中心地でした。小高い丘の上には、ストゥーパと呼ばれる仏塔や僧院跡などが残っており、今は衰退してしまったインド仏教の原型をうかがい知ることができる貴重な遺跡となっています。
「シリーズ世界遺産100」では、サーンチーに残るストゥーパから、仏像誕生以前の古代仏教の姿を紹介します。紀元前3世紀の創建とされるストゥーパは、半球形で高さ16メートルほどもあります。仏陀の遺骨を納めたもので、世界各地にある仏塔の原型です。当時はまだ仏像が存在せず、ストゥーパが信仰の対象として礼拝されていました。信者たちは、ストゥーパを仏陀と思い、供え物をして拝んだのです。ストゥーパの周りにあるトラナという門には、仏陀の物語が彫られています。そこで仏陀の姿は、「菩提樹」や、「法輪」と呼ばれる車輪として描かれています。仏陀は悟りを開いた超人であって、人の姿として表してはいけなかったのです。仏像が誕生する1世紀末まで、仏陀の姿は、「聖樹」や「宝座」、「仏足跡」などで象徴的に表現されていたのです。

