

ベトナム中部、聖なる山マハーパルバタのふもとに、70を超える煉瓦(れんが)造りの塔が静かにたたずんでいます。ミーソンは、東南アジアで早い時期に建国されたチャンパ王国の、ヒンドゥー教文化を今に伝える貴重な遺跡です。千数百年の歴史を持つミーソン聖域は、ベトナム戦争の時に崩壊の危機にひんしました。戦後、ベトナム人研究者からなる調査団は、地雷原の中にあったミーソン聖域の修復と保存に命懸けで取り組みました。
「シリーズ世界遺産100」では、調査団の一員だった美術史家チャン・キィ・フォンさんとともに、秘境ミーソン聖域を訪ねます。インドネシアから北上してきたチャムと呼ばれる民族が開いたチャンパ王国。7世紀から13世紀、ベトナム中部を支配したチャンパの歴代の王たちは、ヒンドゥー教の聖域とされていたミーソンに、多くの伽藍(がらん)を築きました。最大の特徴は煉瓦で築かれた塔です。塔に施された巧みな彫刻や建築技法は、発達した文化をもつ王国がこの地に存在したことを証明しています。ベトナムの地で花開いたヒンドゥー教文化の足跡を後世に伝える貴重な遺跡は、ベトナム戦争で大きな被害を受けました。ミーソン聖域のシンボルだった28メートルの壮麗な塔が、B52の爆撃で破壊されたのです。今、ミーソンはその傷跡とともに、南国の灼熱の太陽と強い雨に耐えながらたたずんでいます。

